20240320_まっすぐすぎる問いかけ

休日か。
娘は私より先に目覚め、布団に横たわりながら大声で「プリチャン」というアニメの主題歌を歌っている。声がでかい。
しばらくすると娘は先にリビングに出て、しばらく何らかの遊びを一人でしてからまた寝室に戻り、私の上に乗っかったり嫌がられたりしていた。

休日だと思うと急にフレンチトーストが食べたくなり、しかしバターがないんだった。仕方なしにいつものチーズトーストを作ろうとも思ったが自分の口が納得しなさそうなので、まいばすけっとまでバターを買いに行くことに。
近くに住む実家の母から「文旦を剥きました、私は仕事なのでお父さんが届けます」とのLINEが入っていた。

起きたままで顔も洗っていなかったが、そんな素肌を紫外線に晒すのは良くなかろうと急に美容意識が目覚め、洗っていない起きざらしの顔に昨日買ったスプレー式の日焼け止めを噴きつけてまいばすけっとへ。

バターを買い、エコバッグをぶらぶらさせて店を出る。文旦を届けに来た父と鉢合わせるかと思ったが鉢合わせなかった。
フレンチトーストはうまくできた。文旦もおいしい。剥いてもらうとありがたさが増す。

夫は午前中のみ外出して仕事を片付ける日。
娘が昨日頼んだ靴が到着するのを待ちたいとのことで、室内で遊びながら待つ。彼女は楽しみに待つことができる人なので、だとすれば店で買い物とするよりネットショッピングの方が楽しめるたちなのかもしれない。いや、それは私が彼女が生まれてから彼女の衣服や靴などのほとんどをネットで購入しているからか。
かくして靴が届き、やいやい試着したり少し大きめだったので中敷を敷いたりした。

ニチレイのギョーザと焼きそばで昼食、食後に真新しい靴を履いた娘と公園に出向く。遊具で真新しい靴の足先を擦らないように散々注意したらなかなかうまくやっており感心する。

アスレチック的な遊具が置かれている箇所に移動するや、少し年嵩が上の男子1名と女子1名のペアに「一緒に遊ぼう」と声をかける娘。しかし男子はそっけなく、小さな声で「誰これ」などと呟いている。呟いていると言っても私の耳にも届いたくらいだから娘にも届いていただろう、しかし娘はまた「一緒に遊ぼう」と声をかける。何度か追いかけて声をかけても一向に返事されないので、流石に私もカチンと来る。

「いつもあなたが声をかけるお友達はほとんどが遊んでくれるけど、今日のお兄ちゃんたちはお兄ちゃんたちだけで遊びたいみたいよぉ〜〜」とか何とか、間に入って娘をとりなすていでその子らにうっすら嫌味でも言おうかと思い、遠くから見守っていた私の重心が少し前に動くのとほぼ同時に娘の声が聞こえた。

「なんで一緒に遊べないの?」

まっすぐだ。
まっすぐすぎる問いかけだ。
しかしその問いかけがまっすぐすぎるが故に相手は責められていると感じかねない。実際、男子はしばらく答えに困窮しているように見えた。
私がその問いかけを中断することもできたが、2人の子らから答えを聞きたいと思った。その答えが「小さい子とは遊びたくないから」「今日は2人だけで遊びたいから」「知らない子とは遊びたくないから」などの排他的な答えでも全く構わない、彼らの言葉を聞きたい。
そしてそれは娘も同じなのではあるまいか。


少しして女の子の方が「・・私たち危ないことばっかりして遊ぶだろうから、入らない方がいいかなと思って」
と答えた。すごく考えたのちに出てきた言葉という感じがした。
答えてくれてありがとう。

ちょうど雨が降ってきた。潮時。帰ることにした。

自転車で急ぎ帰る道すがら、または帰宅して手を洗いながら、遊んでくれなかった2人組のことを「感じ悪かったね」と評そうかと思ったがやめた。
感じ悪いと思っているのは私だけで、娘も同じように感じているかはわからない。それに遊んでくれない子には自分たちで何とか言葉にしたようにそれぞれの理由があるのだろう。
さらに遊んでくれない子らに「どうして?」と問いかけ、その答えから次の関係性を築いて結局一緒に遊べるようになる、というのは娘の常套かつ高度なコミュニケーションテクニックである。
遊んでくれないからといって「感じ悪い」と評してしまうと、娘はまた別の場所で遊んでくれない子らに出会った時に、まっすぐに「どうして?」と聞くことを糸口に関係性を築くこともなくなり、ただ「感じ悪い」と言って私の元に戻ってくるだろう。
それは避けたかったのだった。

夕方夫が戻り、今日夜は私が外出。久しぶりに小劇場の作品を観劇する。
毎週のように小劇場に通っていた頃は客席に知り合いがいるのが当たり前だったし、折込チラシにも知っている人の名前ばかりだった。それが久しぶりに行くと、客席も折込チラシにも知っている人がいない。そんなことが急に不安になり開演までの時間をじっと耐えた。
作品も、メンタルヘルスに関わる作品だと聞いていたので暗くてつらいシーンばかりだったらどうしようと思いながら見始めたが、そうでなくて安心した。自分のことを言われているようなシーンがいくつかあってハッとする。

ぼーっとしながら帰宅。出かける前に早めの夕食を取っていたせいでお腹がすいた。自分で作った回鍋肉の残りを全部食べて、寝た。




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