見出し画像

雑味の妙とシンプルの力強さ。Xデザイン学校大阪分校第6回:ストーリーテリング

今回のストーリーテリング、浅野先生からは「ここが山場。みなさん、ここで苦しむよ」って何度も念押しされてました(笑)ただ、個人的には(巧いか下手かは、まったくの別問題としてw)ストーリーテリングって嫌いじゃないです。むしろ、どっちかというと好きかも。巧いか下手かは別ですよ(笑)

たぶん、長編小説よりも芥川龍之介とか、あるいは川端康成の『掌の小説』とかが好きだったってことも関係してるのかもしれません。

だからって、今回の内容が楽だったかっていうと、もちろんそんなことはありませんでした。個人的には、それ以前のところで苦しんだ感が濃厚です。

ユーザー側の本質的欲求とビジネス側の提供価値のせめぎあいとしてのバリューシナリオ

じつは、Bチームはデプスインタビュー段階でのしくじっていた(エピソードを酌み出す際の深さと広がりが、かなり欠けていた;これ、私自身のすごい反省点です)こともあって、今回の授業の前段階のペルソナ / シナリオ構築、もっというとユーザーの本質的欲求 / 要求価値を見出すところで苦しんでいました。

さらに、ビジネスインタビューも十分ではなかったこともあって、ゲームチェンジする際の「負のアセット」を見出すこともできていませんでした。

今回の一連の授業のなかで浅野先生が何度もおっしゃられている点、つまり「ビジネスの視点とユーザーの視点をつなぐのがサービスデザイン」というところを考えようとするとき、ビジネスとユーザーのそれぞれを深く考え抜かないと、ゲームチェンジたりうる提案なんて生み出せないってのが、どんどんと目の前に迫ってきて、その難しさに懊悩しています。

ただ、この苦しみって、私自身に関して言えば、経営学で打ち出される概念を生身で感得する、とてつもなく重要なチャンスになってるって、今回の授業に取り組みながら、ふと感じました。同時に、経営学あるいは経営をめぐる言説のなかで提唱されている概念のなかには、単なる観念の遊戯でしかないものもあるのかもしれないっていう認識も、体感的にありました。これは、私にとってすごく重要な認識の転換点であるような気がします。

その難しさが一挙にあらわになったのが、バリューシナリオの構築でした。前回の宿題をチームメンバーで考えているときにも、やはり「今回のお題企業さんが提供できる点って何なんでしょうね」ていう問いは何度も出てきました。ただ、結果的には十分に深めることができてませんでした。

だから、ビジネスの提供価値を描き出すときも、どうもふわっとしてしまう。ビジネス情報についても、これまでやってきた / やっている点についてはそれほど難しくなく書き出せるものの、これからどうしていくのかという点を書くときに、地に足がついてないというのか、切れ味と力強さがない。

そして、デプスインタビューで得られた内容から、上位下位関係分析を通じて抽出したユーザーの本質的要求価値も、腰が定まっていない感じになってしまいました。

なので、バリューシナリオがどんどんお題企業さんの〈アセット〉から遠ざかっていってしまったのです。

こんなこと書くと、自分の恥をさらすだけでしかないのですが、いちおう大学で経営学を教えているわけです。私。で、講義とかでもユーザーの欲望と、それを充たそうとする企業の提案とのせめぎあいで価値創造が成就するって言うてるわけです。だから、観念としてはわかっているんです。

でも、いざこれをやってみると、まー難しい。表層的な“事実”だけ採り上げて説明する分には、それほど難しくありません。でも、その背景にはさまざまな要因が絡み合っています。そこにはどんな要因があって、それらはどういうふうに絡み合っているのかを捉えていかないと、ユーザーとビジネスとが向き合い、せめぎあう場(空間としてだけでなく、そこで展開される時間的側面としてのシナリオを含みます)を描き出すことなんて、できないんですよね。で、それこそが〈コンセプト〉であるわけです。

今の経営学教育で、そういう視座(手法も含みますが、大事なのは構えというか視座だと思います)が身につくようなカリキュラムって、ほとんどないのかも。すごく大事なことなのに。

今回の講義のなかで、「コンセプトって、耳障りのいいフレーズなんかだけで表現できるものじゃないんだよ」という主旨のお話がありました(「」内は私が解釈して書いてます)。抽象的でありつつも、具象的な景色(シーン / シナリオ)が想起されるものでなかったら、コンセプトとしては何の役にも立たないという点、まことにと深く納得しつつ、いざ実際に描き出すとなると、ほんとに大変でした。

でも、このトレーニングを繰り返しやると、コンセプトを描き出す能力が磨かれていきそうな気もします。折々、考え続けてみようと思います。

物語としてのアクティビティシナリオ

冒頭にも書きましたが、アクティビティシナリオのような掌編的文章を書くのは嫌いではありません。

なので、楽しかったです。

ただ、もちろん反省点も多々あって、前段階でユーザーの本質的要求価値がクリアに描き出せてなかったので、アクティビティシナリオ自体も薄味になってしまってるな、と。

アクティビティシナリオって、ユーザーが体験する時空間(だから、シナリオというかプロセスとして現れる)。しかも、それはあくまでもユーザーの営みとして描かれないとダメなわけです。だからこそ、アクティビティシナリオはユーザーの物語として立ち現れるはずなんですよね。

今回の授業では、ナラティブという言葉もよく出てきました。幸いに、というべきか、私自身もそのあたりには関心があったので、おっしゃられてることも肚落ちしやすかったです。

とはいえ。

もっともっといろんなシーンに出会っていかないと、多様なアクティビティシナリオを描き出すことはできないなってのも感じました。エスノグラフィック・リサーチは、こういうところで底力的に効き目を発揮するのかも、と。

すでに今回のふりかえりを書いてらっしゃる石原あぐりさんが、そのnote記事のなかで、おそらく福岡で(かな?)浅野先生が引用されたという手塚治虫の言葉を紹介してくださってました。

⬆︎これ、私の勘違いで、浅野先生がFacebookでシェアしてくださってた投稿が元でした。

まさにですよね。

ある先達から「能だけ観てても、能評は書けないよ」って教示をいただいたこととも重ね合わせて、そのくだりを読んでいました。

アクティビティシナリオとして描き出される物語世界を生み出すための蓄積も、一朝一夕にできることではありません。私に足りないことの一つです。

旅をしなくちゃな。

サービスとしての具現化:インタラクションシナリオ

浅野先生は「アクティビティシナリオが描けたら、インタラクションシナリオは簡単」っておっしゃられたんですが、実装経験がゼロな私にとっては、案外ここも難しいところでした。

むしろ、チームでそれぞれ書いたアクティビティシナリオとインタラクションシナリオを見せ合い、読みあって、いろいろコメントもらいながら、「あ、そこもインタラクションが生じてた」って気づかせてもらうことが多々でした。

たしかに、実装をイメージする段階なので、アクティビティシナリオが描ければインタラクションシナリオを描くのは、さほど困難なことではないのだろうと思います。ただ、大学で「教える」立場、しかもビジネスの実践経験がない私にとっては、ここを意識することも(うまくなる、というより意識する)大事だなって感じていました。

シンプルさと雑味。

今回の授業の途中、マスターコースで佐藤先生がZOZOTOWNのビジネスモデルをIR資料をベースに説明してくださっているのを伺わせてもらいました。

優れたビジネスモデル(個人的には、価値創造過程っていうたり、価値循環っていうたり、価値の流れっていうたりしてます)って、やはりシンプル、というか無駄な要素が削ぎ落され、研かれていますよね。無駄な要素が削ぎ落されているというのは、単に効率化しているということとイコールではありません。能う限り最適な流れで、ユーザーに価値をもたらす提案を届けられるかどうか。そして、その流れに協働してくれるステイクホルダーに対しても相応の(=ステイクホルダーが協働に参画しようとし続ける)価値提案ができているかどうか。そこを考え抜くことの大事さを、あらためて認識しました。

同時に、ユーザーも含むステイクホルダーそれぞれは、それぞれの生活を営んでいるわけです。そこには、さまざまな要素が含まれています。そして、それらが絡み合い、織りなされて、その人の生活が生み出されていく。そこには、〈雑味〉があるはずなわけです。

アクティビティシナリオを描く際に、浅野先生が〈雑味〉の重要性を繰り返しおっしゃられてました。この〈雑味〉がシンプルなビジネスモデルによって構築される価値の流れによって、物語として立ち現れくるというあたりに、一つのポイントがあるのかな、と。さらにいうと、サービスデザインによって構築された価値の流れによって、ユーザーの〈雑味〉が「意味づけ」られて、物語としてひとつの統一態になるということなのかな、と。

ここらへん、私の解釈が入ってるので、あくまでも個人的見解です。が、すごくおもしろく、興味深いところだと感じています。

さらなる余滴。

いつもどおり、懇親会でもいろんな話をさせてもらって楽しかったのですが、珍しく今回は二次会も(笑)

だいぶ飲んだので、帰宅した後はべろんべろんでした(笑)

ただ、そういう席でいろんな発見や楽しみもあって、いろいろ忙しくても、やっぱり行かないわけにはいきませんwww

今回も、学びはすごく濃厚でした。

浅野先生、佐藤先生、Bチームのみなさん、大阪分校のみなさん、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?