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最近の論文。

ここに書いたことがあるかどうか記憶にありませんが、私の研究のメイン領域は経営学史です。端的に言えば、経営学の歴史について考える学問領域です。

ただ、単に「過去にこんな学説があったんだよ」てなことだけをいうのが仕事ではありません(それも仕事には含まれますが)。最近の学説を、経営学の研究史に位置づけることであったり、過去の学説を再検討して、現代的な意義の酌み直しをしたり、そこから進んで経営現象を考えるための概念枠組を構築したりといった仕事が、経営学史には含まれます。

私自身は、これまでドイツ語圏の経営学史、とりわけ企業をステイクホルダーとの関係性において捉えようとする学説に焦点を当てて、その現代的な意義を明らかにするという作業をしてきました。とりわけ最近は、ニックリッシュ(Nicklisch, H.)が提唱した〈価値循環〉という概念を(ニックリッシュ学説に内在する問題点に留意しながら)現代に活かすための考察を続けています。

ちなみに、サービスデザインに深入りできるのは、ニックリッシュの価値循環フレームワークとの親和性がきわめて高いからです。単に流行してるからではありません(笑)

経営学史という領域は、経営学原理や経営学方法論と深くかかわりあっています。そのため、きわめて抽象的な議論になりがちです。そのこと自体は悪いことではありませんし、魅力的でもあります。私自身、若い頃は方法論を軸に研究をまとめてみたいと思ってたこともあります。

けれども、ある時点から、関心は持ちつつも距離を置くようになりました。明確な理由はありませんでしたが、感覚的に「今は無理」ってのと、「方法論に淫するのはまずい」ってのがあったのは確かです。

1冊目を公刊するときは、特定の学説に絞って論を構成したので、学史の方法論を云々できるところには至ってませんでした。

そのあと、ドイツ語圏の経営学では名を知られ、多くの研究者を輩出したコジオール(Kosiol, E.)や、世界的にみても早い段階でステイクホルダーとの関係性から企業の維持や発展を論じようとしたシュミット(Schmidt, R.-B.)、さらにはその淵源に位置づけられるニックリッシュの学説などについて論じてきました。それでも、まだ学史の方法論について論文を書く気にはなってませんでした。

ところが、2016年度あたりから、より本格的には2017年度から、ゼミで企業をはじめとする実践の方々とプロジェクトを一緒にさせていただくようになりました。それ以来、私自身の研究内容を実践のみなさんにお話しする機会が増えてきました。なかには、経営学史という領域に関心を持ってくださる方もいらっしゃって、社会人の学びの場でニックリッシュ学説について報告してくださるという、すこぶる奇特な機会に接することもできました。

そういうなかで、実践の方々が感じ、考えてらっしゃることと、経営学史の蓄積とを衝き合わせることの重要性を覚えるに到りました。

今回、以下のような論文を書いたのは、こんな経緯があってのことなのです。

山縣正幸[2019]「方法としての経営学史:経営学史と協同的実践」『商学論究』第66巻第3号,123-156頁。

たまたま、今日こんな記事に接しました。


同じようなことを考えてらっしゃる方がいて、力強く感じてます。

これから、これまでの経営学史研究をベースにしつつも、少し新しい領域にも踏み出そうと考えてます。できることなら、今回の論文で示してみた方法論を活かせるように、進めてみようと思います。

#経営学史


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