店舗は「物を売る場所」から「世界観を体感する場所」へ

店舗はもう不要なのか?

Amazonを開いて商品をポチッと押せば翌日には商品が手元に届く事が当たり前の時代。わざわざ店舗に行かなくてもスマホ一つあればどこでもいつでも何でも買えるという利便性が、従来の店舗がもっていた意味や価値をどんどん希薄させていることを誰もが実感していると思います。


「Webで物が買える時代に店舗は不要になるのか?」

という問いに対してどう答えるかは店舗を持つすべての小売業者が抱えている共通の悩みです。

私ならその問いにどう答えるかと言うと、ある面ではYesと答える

単にモノを買うという機能だけを見るとどうやら店舗は限りなく不要になっていくと答えざるえない。

実際に店舗で実物を手に取ってみてから買うという人はまだまだ多いのは事実だが、その機能だけで店舗が価値ある場所として存在続けることができるかと言うと、やはりそれは長い時間軸で観た際にはささやかな時間の稼ぎであり、本質的な課題解決策とは到底思えない。

客観的にそう思っている事は実はMinimalで店舗経営をしている私にとっては大問題である

そもそもMinimalを始める2014年の時もその問題意識はあった。でも私が敢えて店舗を出したことには理由がある。それは店舗の存在価値が変化していくと考えたからです。私が考えた店舗価値の変化を私の経験談から紐解いていきます。

シアトルのスターバックスの忘れられない衝撃!

今年19年2月28日に中目黒にSTARBUCKS RESERVE ROASTERY TOKYOがオープンして大きな話題になりました。レセプションにお呼ばれしましたがその存在感は確実に中目黒の街の人の導線を変えるなと確信しました。

「STARBUCKS RESERVE ROASTERY」は焙煎工場を併設したスターバックスの「コーヒーイノベーションを表現した」というコンセプト店舗で、中目黒で世界5店舗の出店です。1号店はアメリカ・シアトルです。

実は2014年にオープン直後のシアトル店に行きました。決してアクセスのよいといえる場所でなかったと思いますが、1ブロック丸々スタバでその圧巻のスケールと人の賑わいに度肝を抜かれたことを鮮明に覚えています。

初見のスケール感の衝撃もすごかったのですが、店舗の在り方を考えさせられたのはその後に何度も足を運んだ経験を通してです。

アメリカのBean to Bar Chocolateイベントに参加していたため15年、16年、17年と毎年シアトルを訪れ、その度にスタバに行きました。

何より驚いたのはいつ行っても賑わっている事。なんなら毎年人が増えているとすら感じました。

実は最初に訪れた時はオープン特需で、アクセスも良くないし、その内飽きられるのではと思ったのですが、全然そんな事はありませんでした。

2回目に訪れた際にこれはただの流行ではないと感じて、そこから毎年スタバに行ってそこにいる人たちを観察するようになりました。やはり圧倒的に多いのは観光客と思える人々。彼らはコーヒーを注文して、店内をきょろきょろしながら散策し、写真をとってSNSにアップして、時にカウンターや焙煎機の前でスタバのスタッフとおしゃべりを楽しんでいました。

そして、何より滞在時間が長い。

通常のモノを売っている小売店舗からすると一見非効率に見える滞在時間の長さを見て取ることができました。

最初はこの店舗は広告宣伝費だから売上が上がらなくてもいいので回転率など気にしていないのか程度に思っていたのですが、私が感じた違和感の正体がまさに店舗の価値の変化でした。

店舗は「物を売る場所」から「世界観を体感する場所」へ

シアトルのスタバに来る人は、
スタバにラテを飲み来ていた(物を買いに来ていた)のではなくて、
スタバのブランドの世界観を体験しに来ていたのです。

言うならばアミューズメントパークに遊びに来ている感覚です。

その時に気づきました。
このスタバは「物を売るのではなく、体験を売っている」のです。

とても広くて天井が高い空間に、巨大な焙煎機が複数あって、大量の豆がその場でローストされて心地よい焙煎香が漂うなかで近い距離で親し気なスタッフと会話する。

訪れた人は、それだけで興奮して、旅の思い出としては十分です。

そして、その感動的な体験を皆自慢げに友達に話したり、SNSでシェアするのです。

その話聞いたり、見たりした人がまたスタバを訪れるというサイクルが生まれます。

私自身もまさに同じことをしていました。初めて訪れた感動を自慢げにSNSでシェアしたり、友達に話したり。

そうシアトルのスタバの店舗は決して「物を売る場所」ではなく、スタバのブランドの「世界観を体感するエンターテイメントな場所」になっているのです。

実はここにもとても大事なポイントがあります。
それは、ここで拡散される情報の質です。

このスタバを訪れた人は何といって情報を拡散するでしょうか。「スタバのラテが美味しかった」という物の情報を拡散するでしょうか。答えはNoです。きっと、空間の豪華さや、そこでできる体験のすばらしさを語り、スタバはとてもおしゃれで素敵なブランドだ!と伝えるでしょう。

そう体験に店舗の価値を変えた時に、最も大きな効果は伝わる情報の質がブランドの価値を高める情報へと昇華されて拡散されるという事です。
しかも、ブランド側が情報を操作する事なく、お客さんが勝手にです。

店舗が「世界観を体験する場所」となった時にこそ、物がよく売れるという逆説

では、店舗の価値を「世界観を体験する場所」とした際に物が売れないかと言うとそうではありません。

逆に物を買う事のハードルが下がり、物がよく売れるのです。

どういうことかと言うと、「世界観を体験する場所」である店舗は旅の目的地となりえるのです。

体験そのものに価値を置くので、そこでの消費に対してバーが低くなります。

スタバの場合はまずカウンターでコーヒーやラテを一杯買います。そうすると、近くのバーカウンターのバリスタが気さくに話しかけてきます。「これからティスティングセッションやるけど、参加しないかい?」と。せっかく来たのだから体験しようとそのティスティングセッションに参加します。そうするとバリスタがこだわりの豆をハンドドリップで飲ませてくれて感動します。そして帰りにその豆を記念に買って帰ります。更に店内をよく見てみると、入り口付近に物販の棚が置かれているスペースがあります。そこにはRESERVE ROASTERYのロゴがあしらわれたここでしか売っていないグッズがたくさんあります。バリスタがしているカッコいいエプロンや、コーヒーを飲めるロゴ入りのマグカップやタンブラーなどがところ狭しと陳列されています。初めて入った時になんで入口の横にいきなり物販スペースがあるのかと訝しんだのですが、自分がお客として体験すると、帰りにここで記念グッズを買ってしまう笑。とても良くできた導線です。

そう体験の質が高く、体験そのものが目的化した時には実はその思い出の記念として付加価値が高まり、物が結果として売れるのです。

普通スタバに行くとせいぜいにコーヒー一杯と言う人が、
シアトルに来るとコーヒーを買い、豆を買い、グッズを買って帰るのです。

これなら滞在時間が長くても実はペイできる。この構造はまさにディズニーランドです。夢の国で皆さんミッキーの耳を買い、飲食をして、たくさんのお土産を買って帰ります。オリエンタルランドの決算情報をみると、実は飲食・物販収入が売上の4割強を占めているのです。


「世界観を体験する場所」としてのMinimal店舗

店舗は単に「物を売る場所」として価値はWebでの購買に代替されてしまいます。

ブランドの「世界観を売る場所」になっていくかという事が21世紀の店舗ではとても重要なファクターになります。

もっと、言うとWebでの体験と店舗での体験を組み合わせて以下にシームレスでストレスのない購買体験や情報のインプットをブランドとして高めていくかがポイントになると思います。この辺は私自身の研究課題なのでまたどこかのタイミングで深掘って書きたいと思います。

では、「世界観を体験する場所」としてMinimal店舗では何をしているかという事に触れたいと思います。

体験を価値と置く際に大事な事は、何の体験をさせることがブランドの世界観を伝えるために最も重要かをきちんと定義しておくことです。

これが曖昧なままなんとなく体験が大事であると設計すると結果としてお客さんの期待とずれ、満足度も上がらず物が売れないという結果に終わってしまいます。

Minimalの店舗では、お客さんに体験して頂きたい事を
「カカオ豆の違いだけでこんなにも香りや味わいが違う」事だと置いています。

そのために必要な要素として2点導線を設計しています。

1つ目は「食べ比べ」です。
最低でも2種類のチョコレートを食べ比べるとカカオ豆だけでの香りや味わいの違いに皆さん驚いて頂けます。

そのため、Minimalの店舗では“試食を食べ放題”にしているのです。

もっと明確に言うと試食をどれだけ提供できたかを店舗のKPIにしているのです。

普通に考えると、モノづくりに手間をかけている私達のような業態は職人が手作りしているため製造原価が高く試食を食べ放題にするのは経営論的にはNGです。

しかし、店舗は「世界観を体験する場所」と定義すると、Webでは体験できず店舗だけでブランドの世界観や良さを体験してもらう事にこんなに有効な手立てはないのです。

結果として試食して頂いたお客さんの9割以上が購入頂けます。


2つ目は「スタッフの接客」です。

当たり前ですが、Webと店舗の大きな違いは人がそこにいて接客する事です。この利を活かさないわけにはいきません。

色々やっているのですが、最も大事にしている事は「スタッフ自身の言葉で接客する」という事です。

店舗に出勤するとその日のスタッフ全員でその日のチョコレートを試食します。そして、チェック項目でティスティングして自分の言葉でその味わいや特徴を話せるように訓練します。

スタッフは食べ比べて体験したMinimalのチョコレートが「カカオ豆の違いだけでこんなにも香りや味わいが違う」という事をきちんと咀嚼して頂くためのナビゲーターです。

お客さんのききたい事や質問に合わせてその背景にあるブランドの世界観やビジョンを語るのはもちろん、
そのスタッフ自身がお客さんが食べたものと同じチョコレートを食べてどう感じたか、どんな時にそのチョコレートを食べて美味しいと思ったのかのパーソナルな経験を話の中に盛り込んでいきます。

もちろんそこには嘘は有りません。

説得力が増す事もそうだと思いますが、お客さんとスタッフがよりパーソナルな心理的な距離に近づいていきます。

何よりその言葉はそのスタッフ固有のものであるため、その瞬間の店舗でしか味わえないオンリーワンの経験になるのです。


偉そうに書きましたが、私たちの接客レベルはまだまだです。
しかし偽りない個人の経験から来る言葉はブランドが世界観に伝えるのにとても重要であると思っています。

このように店舗をブランドの「世界観を体験する場所」と定義しなおすと、ブランドとして最も伝えたい価値を中心にして、店舗内での陳列やサービスなどの導線が全く今までと違うものに置き換わっていくのです。

そして、そう捉え直すと、Webで何でも買える時代に、店舗はそこでしか提供できない価値を提供できる場所に代わっていきます。

事例はスタバやディズニーランドなど巨大なものを上げましたが、Minimalのような小さな店舗でも可能であると思っています。
まだまだ未熟ではありますが、ぜひMinimalの店舗にお越し頂き、私達のブランドの世界観を体験して頂ければ、こんなに嬉しい事は有りません。ぜひお待ちしております!

追記:試食し放題ですので、皆さんお手柔らかに笑

※Minimalの店舗

Minimal店舗でぜひ食べ比べと接客を体験しにお越しください!

4月から発売したガトーショコラのスプリング限定は本当におススメ!
50本限定なのでお早めに!

Minimalのチョコレートはこちらから!

https://mini-mal.tokyo/collections

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