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お店を最後まで味わい尽くす方法

「さて、そろそろ僕たちも帰ろうか」

他のお客さんが出口に向かおうとする、それとまったく同じタイミングで立ち上がるお客さん。そのお客さんのお会計が終わると、他のテーブルでも「お会計お願いします!」と帰るお客さんの無限ループがはじまり、それが終わると、満席だったお店の中が、急に静かになる。そんな状況がよくあります。

飲食店では、ピークタイムというお客さんが特によく利用する時間があります。お昼は、12時〜14時。夜だと、19時〜21時を一般的に言います。だから、ほぼ同じタイミングで入店することになり、帰るのも一緒になる。当たり前と言えば、当たり前の話。しかし、もしあなたがこの無限ループのタイミングで帰っているのだとしたら、ちょっと損しているかもしれないよというお話です。

お店の人として、大切にしていることの中のひとつに、「お見送り」があります。どんなに忙しくても、お客さんを「気に入ってもらえたら、また来てください。」としっかりと見送り、一言二言会話をする。食事を終わられたお客さんに気持ちよく帰ってもらう心配りを大切にしています。

どんなにいいサービスをして、美味しい料理を食べてもらって満足しもらえたとしても、最後の最後に、誰も注意を払ってくれず、挨拶の一つもなく放り出されるような店になってしまったら、いい思い出がすっ飛んでしまう。だから、最後の「お見送り」まで気を抜かずにやっています。でも、タイミングが悪いときは、しっかりとお見送りするのがなかなか難しいというのも正直なところです。

なので、席を立つタイミングは、まずお店の状態を観察してから決めるといい思います。お店の人が忙しくしていないか、なにかの作業で手をとられていないか、状況を把握します。キッチンの様子が伺えるなら、特に注目してみましょう。

調理の作業に追われているような様子もなく、シェフの指示出す声が飛び交っているようでもない。それどころかシェフが客席の様子はどうかな? と、顔を出して、覗き込んでいる。ここです!このタイミングがベストです。

みんなで一斉にいちにのさんで立ち上がります。一斉にというのがポイントで、これが「それでは失礼させて頂きます」の合図なのです。そうすると、お店の人はすみやかに飛んできて、そのまま自然に出口まで。当然、ドアを開けて「ありがとうございます」と、お辞儀と共に送り出してくれることになるでしょう。

うまくいけば、シェフもお見送りに来てくれて、会話ができるかもしれません。じぶんの作ったものを「美味しかったです!」と感想を直接お客さまから言われて、喜ばないシェフはいません。そして、そんな会話を交わしたお客さまのことは、お店の人は意外と覚えているのです。次にそのお店に行った時、シェフとの距離を縮めるきっかけになるかもしれません。

このコラムは「企画でメシを食っていく」4期生の合同コラム企画「コラム街」の1つとして書かれています。他の執筆者のコラムは、こちらから!


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