このあいだ9万円を盗まれた。

2,3日の間、不穏な予兆はあった。

なんでもいいんだけど、例えば切符をポケットに入れておいて、これ絶対なくすよなー、別の場所に移動させないと絶対になくすぞッ!! っていう確信があるんだけど、面倒くさいとかタイミングがないとかで放置してたら本当になくしたみたいな経験が誰にでもあると思う。今回がまさしくそれで、私にはなにかを紛失するっていう確信があったんだけど、それがなにか分からない。分からないんだけど、財布を家に忘れて外出したり、酒を購入するために金だけ払って酒をレジに置き忘れるなど、微妙なミスが続き気持がどんどん盛り上がってくる。

普段から私は異常なまでに不注意で、細いことはすぐに忘れる。カギと火の区別とかすら曖昧なので、危なくて仕方ない。なんかの病気なんだろうと思ってるんだけど、こういうのって病院で治すの難しそうだし、とりあえずリズムを整えることで常人のような活動を維持している。

リズムとはなにか、8割くらいの行動をルーチンにしてしまうことである。ルーチンなんだから自動的に身体が動作する。リズムが維持されている時の俺はルーチン機械(マシーン)である。マシーンであるから、ミスも少ない。だからリズムがあればokである。

しかしリズムがなくなるとヤバい。リズムがないから財布やら酒を忘れたりする。こういう時にはなにもしないで酒飲んで寝るのが一番なんだけど、悪いことにその日は給料日であった。

給料日が来ると家賃を払い生活費をおろしておくというルーチンミッションが発生する。わりと大金を持ち歩くことになるため、リズムが崩れた状態でそんなことは絶対にしたくないのだが、大金を持ち歩くというのもリズムに組込まれているのだから、大金を持ち歩くのを止めてしまうと、リズムがますます崩れてしまう。リズムを取り戻すためには、リスクを取らざるを得ない。

というわけでその日の私は、慎重に金を持ち歩いていたんだ。色々あって無事に家賃を払い、あとは自宅に帰るのみである。すっかり安心をした私は、とある店でコーヒーを飲んでいた。全てが普通で、最早金がなくなる要素などない。やれやれ無事にイベントが終って良かった良かったといった雰囲気で、コーヒーを一気飲みして店を立ち去ったんだけど、油断は大敵である。私は金が入った鞄を忘れてしまった。

気付くまでの時間はわずかに5分、速攻で鞄を取りに行くと鞄の中の金だけない。店頭のゴミ箱を見ると金を入れていた封筒だけが捨てられていた。つまり私は金を盗まれてしまったということになる。金を落すのかなーって思ってたら盗まれちゃったんで、すごくビックリしちゃったよ。

私の推理だが近所にパチンコ屋があったんで、パチンコ好きすぎるけど金ない人が俺の金を持っていったんだと思う。俺の金でパチンコした人は勝ったのだろうか？ って思ったけど、まだ5分くらいしか経過してない。恐らく彼は、今まさに勝負をしているのだろう。男一匹が俺の金を盗んでパチンコするっていう決断をしたからには、絶対に勝って欲しいし、すごく応援をしたかったんだけど、誰が盗んだんだか分からないからそれも叶わない願いである。

ところで金を失なった時、子供であれば騒ぐだけであるが大人は違う。9万くらい紛失してもあんまり困らない。貯金が皆無になるだけである。だから少々の金をなくしたところで動じない。失った金を取り戻すため、資産運用について考える。

私の場合だとまず考えたのは、自転車の車輪に金を括り付けてグルグル回したら残像で金が増えたように見えるといったことで、1万円の資産を投資することによって、タイヤのデカさによるけどだいたい10万円くらいに見せることができる。しかし金が増えた状態を維持するために、常に車輪を回し続けなくてはならないというデメリットがある。しかも残像を預金しようとすると銀行に自転車を持ち込む必要がでてくる上に、残像を具現化し掴める行員を探し出す必要がある。

残像を具現化し、取り出す能力というものはすごい。普通の人では無理である。しかもその能力を悪用すれば、かなりヤバいことになる。世界は彼の手中にあるといっても過言ではない。

しかし彼はそれをしなかった。能力を隠しながら平凡な銀行員として生活を続けている。これは並大抵のことではない。実に立派な人である。きっとストレスがたまることだろうな。休み時間にはパチンコでストレス解消なんてこともあるだろう。とにかくものすごいストレスだからね、倫理観とかも消滅している人間の屑に決ってる。屑野郎だから俺の金を盗むとか鼻歌交じりで実行可能であり、銀行員が犯人の可能性が高い。

しかし私は犯人探しをしたいわけではない。パチンカーか銀行員か誰が犯人かよく分からないけど、金が戻ってきて欲しい。まあ犯人は残像を具現化させる銀行員なんだけど、とにかく私が失なった9万はかなり高額である。俺は年収1000万だから9万とか安いわみたいな人もいるかもしれない。しかし冷静になって考えてみて欲しい。君が明日から働くのを止めて、毎日9万を盗まれ続けたらどうなるかな？ そんなことあるわけがないって思うかもしれないけど、私の金を盗んだ奴はすごい。5分くらいで見事に金を盗む。一応は警察に行って防犯カメラとか見てもらったけど、犯人の影も形もない。まさにイントルーダー(銀行員)であり、沼の中に潜み一週間飲まず食わずで生き延びることが可能、ジャックナイフ一本で水牛を殺し10分で解体し、その上に残像を具現化させる能力も持っている。とにかくすごい奴なんだ。

イントルーダーに狙われたらお前の金とか終りである。毎日確実に9万盗まれる。金を盗まれるのに税金とかかからないからな、手取りで年収-3285万円になってしまう。9万円の重みを理解してもらえたかな？

いやいや俺は毎年1億稼ぐから-3285万円とか問題ないって人もいるかもしれないな。しかしお前はイントルーダーのことが全く分っていない。イントルーダーが残像を具現化するのがどういう原理なのかというと、奴はコンマ1秒前の金を掴んでいる。つまり時間を自在にコントロールすることができるのである。だからイントルーダーならば100年前から毎日お前の金を9万盗むことも容易であり -328500万円となる。これはかなり痛いよな。

なにいってやがる、-328500万円とか塵芥だッ!! 俺はロスチャイルドと結婚したロックエラーなんだッ!!! 金とか無限にあるッ!! だから9万は安いッ!!! みたいな人もいるかもしれない。それじゃ聞くけど、イントルーダーが紀元前2000年あたりまで戻って9万円を盗み続けたらどうする？ 紀元前2000年だから金とかあんまりない。貨幣の総額が9万くらいのショボい世界である。それなのにイントルーダーは9万円を盗み続ける。その結果、なにが起きるのかというと、貨幣経済が発生しないっていう危機的な状況に人類は陥ってしまう。貨幣経済ないとヤバい。全部が物々交換であり、すごい効率が悪いんで、人類は今でもゴミカスみたいな生活していた可能性が高い。水洗便所とか、みたらし団子とか発明されてなかったと思う。

とにかく9万円というものはすごく重い。9万円を軽んじてはならない。私が9万円盗まれたから良かったけど、その時に鞄に9万なかったら、腹を立てたイントルーダーが紀元前2000年あたりまで戻って9万円を盗み続けてた可能性がある。そうなると水洗便所とか、みたらし団子とかなくなっててヤバかったと思う。私が9万盗まれたからこそ、今もみんながみたらし団子を食べたり、水洗便所を使えたりしていると言い換えることもできるだろう。

だから良いことしたなーって思ってるんだけど、しかし本当にこんなことで良いのか？ 私みたいな良い人の9万円が、奪われてしまうという時代……我々が望んでいたのはこんな悲しい世界だったのだろうか？ もっとハートウォーミングなことがあっても良いのではないのだろうか？ 例えば俺の知らねぇ他人が9万円を返してくれるとか、そういう良い感じの出来事があっても良いんじゃないのかなって思ったんで、今回の日記では5000円を払うと、私からのお礼が表示されるようにしておいた。

あらかじめお礼の言葉を書いておくと『金くれて 初夏にサンキュー 法隆寺』である。私はあんまり他人に感謝とかしたくないんで、誰がくれたとかは確認しない。そのかわり5000円を払うと、『金くれて 初夏にサンキュー 法隆寺』って表示されて私がバーチャルでお礼をしているような様子になると思う。もっと金を払いたいって人はサポートボタン?みたいなのあるから、そっから金を送ってくれよな! よく仕組み知らんけど私に金が届くと思われるというわけで、今日も日記を読んでくれてサンキュー!