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ローンデポ・パークのムーンライト

ニューヨーク、フィラデルフィア、そしてマイアミ。米国に求めるものは、いつも東海岸にあった。現地時間9月17日の日曜日。

ビスケーン湾の朝日に救われ、朝食も食べたことで少し気分が晴れた。シャワーを浴びて10時半にUberを頼む。10ドル。この旅で一番安い。歩けば50分だが、マイアミの暑さでは無理。車内ではザ・キッド・ラロイの『STAY』が流れていた。

501 Marlins Wayまで走ると10分ほどで到着。白の外観にパームツリー、そして青空。この球場はデーゲームに向いている。

球場はリトル・ハバナにあり、反対側にはマイアミ・リバーが流れる。京セラドームの環境に近い。

デレク・ジーターによって撤去されたホームラン・フィーチャーもある。この位置で正解かもしれない。すぐにチケット売り場が見つかったので購入。

レフトの外野席を希望したが、ホームラン狙いの年間シート購入者で埋まっているのか?三塁側の端っこ、セクション26の7列目、24ドルなので3,600円くらい。

球場の周りを一周しようとしたら「日本人の方ですか?」と背後から声。振り返ると「もしかしてYAMATOさん?」

60歳前後の女性。マイアミらしく肌が焼けている。もしかしてYouTubeの方ですか?と訊くと「そうです!似顔絵と顔がそっくりだから、もしかしてと思って!」

何週間か前、MLBのチームを紹介するYouTubeにコメントしたとき、その女性が返信でマーリンズについて教えてくれた。ブレーブス戦を観る予定だと書いたが、それを覚えていてくれたとは。しかも見知らぬ人に声をかける度胸がすごい。

名前はYさん。マイアミ在住35年。キューバ人の旦那さんと結婚し、子どもも成人して今は独り暮らし。仕事は引退し、マーリンズの年間シートを購入。今年はすべてのホームゲームを観戦している。perfect attendance、皆勤賞。

イチローがマーリンズに来たことがきっかけで野球にハマり、今年のWBCもプールDの試合と準決勝、決勝戦を全試合観戦した。当時の様子を詳細に教えてくれたのが何よりの収穫。地獄に仏とはこのこと。生まれ故郷も奈良に近く、日本では西新宿で働いていたから話も弾む。

開場までの間、Yさんにレクチャーを受け選手の出待ちをする。ルイス・アラエスが普通にサインしている。凄い光景だ。

選手が入りきったら暑さを凌ぐためにチームストアに入る。透明のクリアバッグを買った。マーリンズの会員であるYさんのおかげで15%オフになり、Yさんのポイントも貯まる。

12時に開場するとYさんに球場を案内してもらう。ローンデポ・パークはフィールドを見渡せながら場内を一周できる。とても観やすい。

なんという美しさ。ドームなのに閉塞感がなく、凝縮された空間。開放感すらある。

Yさんは数メートル歩くたびに声をかけられる。観客もスタッフも皆、顔見知り。アメリカという国は愛のある者を無条件で歓迎する。年間シートを買ってマーリンズを応援する仲間。81試合で外野席は900ドル。1試合あたり11ドル(1500円)ほど。安い。巨人だとこうはいかない。

ローンデポパーク名物のバブルヘッド・ミュージアム。

あまり興味ない。

野球ゲームができるブース。球場に来てまでやらんでええやろ、とツッコみたくなるが、球場でやるゲームは格別なのかもしれない。

光が差し込む巨大なガラスが最高。球場だが、水族館に来たような感覚になる。ボールパークであり、アクアリウム。

ローンデポ・パークは収容人数が37,000人とMLBの球場ではかなり少ない。その理由のひとつがレフト側の外野席の少なさ。だからこそ息苦しさがない。素晴らしい球場だ。

この椅子なんか、なんとテキトーな。

かつてジャンカルロ・スタントンが叩き出した最長飛距離484フィート(約147・5メートル)のモニュメントがあった。デレク・ジーターがオーナーになったとき撤去したらしい。

レフトスタンドにはマーリンズ・ミュージアム。

ワールドシリーズの優勝トロフィー。

イチローのユニホームが目立つ。

こんなに愛されていたとは。マーリンズ時代のイチローも注目して見ておけばよかった。

ミュージアムの先はグッズショップに通じている。さすがアメリカ、商売繁盛。ヘイヘイおおきに毎度あり。

再びのレフトスタンド。ブルペンが丸見え。ファンには嬉しい素晴らしい環境。ここで大谷翔平が準備をしていた。

球場にはさまざまなフードコート。

やはりメキシコ料理の店も。

これもメキシコ系か?

お目当てのキューバサンドイッチ。

スーベニアカップのペプシコーラとキューバン・サンドイッチ。見た目は悪いが味は美味い。キューバ珈琲も買えばよかった。

ライトスタンドの外野席から見ても美しい。

この日はワンちゃんとの観戦がOK。なんという緩さ。さすがアメリカ。

ライトスタンドではボールをねだる人が最前列に来ている。この積極性がアメリカの良さ。

ライトもブルペン。こっちのほうが広いか?

ライトは2階席がある。来年Yさんは、この年間シートを購入しているらしい。

村上宗隆が決勝戦でロケット弾を打ち込んだ席。Yさんの知り合いで素手でキャッチしたらしい。帰ったら映像で確認してみよう。

そろそろ自分の席でゆっくりしたくなってきた。

と思ったところにブレーブスの選手の練習が始まる。残念ながらアクーニャJr.は欠場。ローンデポ・パークの人工芝は足に負担がかかるらしい。

アメリカ人はガタイがでかい。

マスコットのビリーもまあまあイカツイ。

ここでYさんと別れ、自分の席で観戦。試合前には地元マイアミのスターPitbull の『Don't Stop The Party』。

今日の先発チャーリー・モートン。同い年でメジャーの一線級で戦う。頑張ってほしい。

マーリンズの選手もグラウンドに登場。選手の名前がわからない。

先発ピッチャー。実力はどっこいどっこいか。

マーリンズの先発はヘスス・ルサルド。ペルー出身の25歳。両親はベネズエラ人なので、WBCにも出場。低めへの球がキレ、強力ブレーブス打線を0点に抑える。

今日は日曜日なので、子どもたちにフリーチケットが配られる。野球熱が盛んではないマイアミにおいて、ベースボールの文化を伝承していく大事な取り組み。

アメリカは始球式なんぞ誰も注目していない。素晴らしい。

国歌斉唱は地元のスクール生っぽい。緊張からか音程を外していた。

地元の少年野球チーム。未来のメジャーリーガーがいるかもしれない。

ブレーブスのパワーヒッター、オースティン・ライリー。迫力はあるが、低めに弱そう。

先発のチャーリー・モートン。勇ましい。

世界最高の安打製造機ルイス・アラエス。この日も大活躍。

まさか、ここまで凄いバッティングセンスとは。イチロー以上かもしれない。惚れた。

最高のスーパースターであるジャズ・チザム。JAZZの名前がカッコ良すぎる。しかも2日連続のグランドスラム。これほどセクシーにかっこよくベースをまわる選手はいない。

この日ホームランを打ったジェイク・バーガー。あとで登場。

天井は無機質な倉庫なのに嫌な感じがしない。開いているときも訪れたい。試合は16-1で勝利。大差で負けているチームばかりじゃなく、大差で勝っているマーリンズもキャッチャーが登板。このデタラメさが最高。

試合後、猛暑の中でもサインをしてあげるジェイク・バーガー。

最後に出てきたホルヘ・ソレア。特大のホームランをかました。なんとサインしてくれた。Yさんに促されて。この日は夜にマイアミ・ビーチに行くつもりだったが、泥のように眠り、起きたら23時を過ぎていた。

2日目。サウスビーチで日の出を見てホテルに戻る。マイアミの最終日は18時40分の開始の6時間前にローンデポ・パークに向かう。

ホテルの窓から球場が見える。猛暑じゃなければ歩くのだが。

今日はメッツ戦。リンドーアが見られる。

15時にチケット発売開始。一塁側ダグアウトの3列目を買う。105ドル。安い。ヤンキースやドジャースの人気球団とこの値段では無理。こんないい席は無理だ。

Yさんと合流して話していると昨日サインをくれたホルヘ・ソレアが。Yさんが呼んで写真を撮ってもらう。まったく壁がなく気さく。大ファンになった。

ルイス・アラエスは笑顔でサインをくれた。歴史に名を残すプレーヤーが簡単にサインをくれる。ファンサービスが日本とは桁違い。

極め付けはジャズ。Yさんがバハマ・カラーのユニホームを着ていたからだろう。2人だけしかいないからか、自分から歩み寄ってきて写真を撮ってくれた。これで完全にマーリンズのファンになった。すぐにグッズショップに行きTシャツを買った。

17時会場。まだ日差しは強い。いよいよ最後のローンデポ・パーク。

近い。この距離でメジャーリーグが見れるとは。マイアミは最高すぎる。

この日はアメリカがNational cheese burger day。チーズバーガーが5ドルになる。それでも十分に高いが。

今日もPitbull の『Don't Stop The Party』。これがないとマイアミの野球は始まらない。

始球式の最中、リンドーアはファンにサイン。Yさんもゲットしていた。さすがだ。

マスコットのビリーも目の前を通る。

この日のキープレーヤーのジェフ・マクニール。白熊アロンソはゴツい。この規格外の体格を見るだけも金を払う価値がある。日本のプロ野球との違いだ。球場に来たくなる。

迫力あるバッティング練習。しかし彼らが大谷翔平にビビるのだから一体どうなっているんだ。

客席はまばら。こういう野球観戦も味がある。

美しいマリンブルーのシート。マイアミにふさわしい。

試合前の打撃練習でみんなボールをもらう。プエルトリコのユニホームのファンが乱舞していた。リンドーアの影響か。

先発はエドワード・カブレラ。低めに球を集め試合を作った。将来のエース候補。名前を覚えておこう。

アラエスは200本安打達成。世界一のヒットマン。サインをもらえて光栄だ。

翌試合は怪我で欠場したのでラッキーだった。早く戻ってきて欲しい。ワイルドカードに出るにはアラエスの力が必要だ。

ジャズはこの日、快音なし。打席に立つだけで華やぐ。

暗くなると場内の雰囲気が変わる。屋根が空いたら全然違う空気かもしれない。後ろの席に座っているアメリカ人が話しかけてくれる。試合中でも遠慮なくガンガン話す。英語が不自由なので会話を曖昧にしてしまったが、こんなチャンスは少ない。しかもホテルがあるブリッケルに住んでいる。隣のアメリカ人は奥さんが日本人で娘さんもいる。もっと積極的に会話すればよかった。

フランシスコ・リンドーア。ヒット1本だったが、すべての仕草がカッコいい。

オレンジのスパイクがオシャレ。

塁に出ると鍋つかみ。

この日の一番の見せ場はホルヘの特大ファウル。試合前の気さくな雰囲気とは違い威圧感がある。これがメジャーリーガーか。このオフにFAになるようだが、マーリンズに残って欲しいところ。どの球団に行っても応援するが、移籍するならヤンキースにしてほしい。

唯一無二の球場。サウスビーチの朝日も、ダウンタウンの夜景も美しいが、ローンデポ・パークが一番輝いていた。夜は雷雨で月は見えなかったが、それでもムーンライトは見えた。

This is my Field of Dreams

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