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この男、度会につき

3月の球春から11月の晩秋までの9ヶ月間。長いプロ野球シーズンで4月は最も面白くない月でもある。「死月」と言ってもいい。ギアは1速、気候も寒い。レギュラーを選別するための見極め期間であり、シーズン後には2軍にいる新人やベテランも試合に出る。良いスタートを切っても本番は夏以降。その代わり、色とりどりの野球が楽しめる。

今年のベイスターズのスローガンは「横浜進化」。今永昇太が海を渡り、ソトが東京湾を渡ってロッテに移籍した今年の進化はなにか。

今永のあと、ハマのエースを背負うのが背番号11、東克樹。立命館大学(衣笠キャンパス)出身。巨人戦以外はすべて応援するサウスポー。金刃憲人も桜井俊貴もなし得なかった最多勝投手。前から観たかったが、チケットを取った日(4月12日)が登板という幸運。

しかし、4月の寒空の影響か本人の調整の問題か、球が走らない。コントロールも微妙。

去年観た2試合で今永はボコボコに打たれたが、ハマのサウスポー・エースは同じ運命にあるのか。それでも不調ながらも6回を3安打95球1失点。見事に試合を作り勝利投手。

ピンチに動じず飄々、泰然自若。ピッチャーは背中を見れば、このあと打たれるか大体わかる。エースの貫禄なのか、ヤクルト打線の低空飛行のおかげか。まだ今年の展望は見えない。今永昇太を超えて、いざプレミア12へ。

侍ジャパンの不安材料は村上宗隆。まだ春。慌てない焦らない。とはいえ、ここまでホームランも打点もなし。一昨年なら軽々とスタンドインのボールも完全に降り遅れ。四球は多く出塁率は高い。球は見えている。あとは体調の問題なのか、気候が暖かくなれば復活するか。一抹の不安を残しつつ今後に注目。

正反対に光を放ちまくっていたのがドラフト1位ルーキー度会隆輝。横浜高校から横浜に本社を置くENEOS、そしてベイスターズへ。トップバッターはチームの顔であり、ファンと対戦相手への名刺。バッターボックスに入った一瞬でファンの心を捉える。

物怖じしない社会人(アマチュア)っぽい匂いは侍ジャパン向き。いきなりの二塁打で魅せてくれる。

打撃センスを感じられずにいられない2打席目のセンター返し。巧くて強い。あどけなくて、完成していないのに、すでにエグい。巨人の怪物ドラサン・佐々木俊輔と新人王を争ってほしい。そしてふたりともプレミア12に殴り込んでほしい。右中間コンビを結成してほしい。

一打勝ち越しの場面で迎えた4回の第3打席。

西岡剛とイチローを足して2で割ったような雰囲気、しなやかなボールの待ち方の風格。

内角球の裁き方は完全にイチロー。94年にイチローが210安打を打った年がフラッシュバックした。

再びのセンター返し。1番バッター以外の打順が考えられない雰囲気、真面目にして陽キャ。この男、イチローにつき。いや、まだエンジンがかかってすぐの4月にベイスターズの顔になりつつある。この男、度会につき。


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