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まっちゃんは雪が似合うね

福島の安達太良山に登ったとき、背中ごしに言ってくれた

ぼくが東北の母と呼んでいるひと。誰よりも雪と友だちになれる女性だからうれしかった

春の色といえば「黒」と答える。それが北国のひとたち。冬につもった雪がとけて、黒いアスファルトを見たとき春の訪れを感じるから。すごい世界に住んでるなあ。ちょっと羨ましい

ぼくが生まれ育った奈良の北部は年にいちど積もるかどうか。雪が降りてきた日は給食に出てくるコーヒー牛乳のようなご褒美 

雪は時に誰かの命を奪う。だけど不思議と2回も救われている

大学の卒業旅行は男3人で師走の白川郷へ。無知だからスタッドレスタイヤもつけずに走っていたら、凍結した道でスリップ。トリプルアクセルしながら、ああこれで終わったと思った瞬間、雪の壁がクッションになった

32歳、エヴェレストに行ったとき、高山病で死ぬ寸前だったぼくの眼の前に、雪原の荒野が現れた。その瞬間、映画『レヴェナント』の生命力が降りてきて、すぐに身体中に酸素が行き渡って高山病が一瞬で溶けた

40歳、いまだに雪山を追いかけている。登山道の雪で冷やしたコカ・コーラの味をみんなに知ってもらいたい

雨は激しい音で自分をアピールするけど、雪は恥ずかしがって無音で歌う。地上の気温が冷えたとき、ぼくたちの心を温める。すぐに溶けてなくなるのに、生き急いで降ってくる。まるで下山するクライマーのように


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