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野球雲の向こうへ

4月になってもWBCの熱から冷めず、マーチ・マッドネス(狂乱の3月)の延長タイブレーク。この日も朝からドミニカ−プエルトリコ戦を観ていた。日本以外もウォッチすることで侍ジャパンの野球がさらに理解できる。

4月2日(土)、開幕2戦目。春風と野球雲の東京ドーム。WBCの開幕戦を一緒に観た友人から巨人vs.中日戦に誘われた。あの熱狂から1ヶ月も経っていないが、これまで4月に巨人戦を観たことがない。断る理由がなかった。

球春は正月の三が日と同じく、開幕戦の3試合を指すのだろう。ルーキーもベテランも新外国人も成績・評価が白紙のよーいドン。来年のことを考え始める夏や終戦モードの秋と違い、観客席から純白な眼差しが注がれる。球春はファンを野球少年に戻す。

始球式は江川卓さん。さすが、マウンドに登らず手前から投げた。 ピッチャーにとってマウンドは抑えればお山の大将、打たれたらゴルゴタの丘。有名人が始球式で何気なく登っているが、戦場であり聖地。少年野球の始球式でもマウンドに登りたくない。

注目はアメリカから凱旋した主将とアメリカから加入した新外国人。ベースボールは米国から入ってきて歴史がはじまったように、WBCで幕を開けた令和5年の野球は大きく転換する。14時、プレイボール。

初回先頭打者・岡林 勇希のファウルボールが勢いよく飛んできた。これは危険だなと思ったが、左前の席の女性に直撃。大きな怪我はないが体が苦しそうだ。せっかく観戦に来たのに開始数分で帰宅。 残酷だが野球はボールが観客席に飛び込むことを良しとする稀有なスポーツ。プロレスでいう場外乱闘。それが野球のダイナミズム。

WBCのせいでオープン戦はちゃんと見ていなかったが、YouTubeで巨人の動向は追っていた。そこで目に留まったのがルーキーの門脇 誠とフォスター・グリフィン。

190センチの長身から投げ下ろす角度のあるフォーシームとカットボール。驚いた。目が覚めた。これほどの投手がメジャーではなくプロ野球にいることに。コントロールにバラツキはあるが、ハマればマイルズ・マイコラス級。沢村賞もあり得る。なぜ巨人にいる?

草食動物のように力感のない投球フォーム。これは打ちにくい。勝手にハードルを上げまくったが、7回3安打1四球。ストライク先行で打者を手玉に取り、ランナーを出したら打たせてゲッツー。何から何まで期待通りの活躍。今シーズンが楽しみだ。

岡本や大城の侍戦士に快音は聞かれず、打点はすべてこの男。1回のタイムリーを見て、この日ホームランを打つと思っていた。それほど中田翔には雰囲気がある。

野球のホームランは、守備の選手を棒立ちにさせる。対戦相手の仕事を奪い、失業させる。ホームランは打者と観客だけのキャッチボールであり、野球は観客席にボールが飛び込むことを善とする。中田の"個人軍"だったが、スタートとしては悪くない。

最後に野球ファンとして苦言も呈しておく。なぜ坂本勇人を代えて門脇を使わない?なんのためにオープン戦でアピールしているのか?今の坂本はどう見ても打てる空気がない。ベンチにいれば余計にわかるはずだ。オープン戦で結果を残し、チームに勢いをもたらす門脇(宝物)を腐らせてはいけない。鉄は熱いうちに乱れ打ちせよ。それでダメなら戻せばいい。坂本勇人をデビューから見応援しているからこそ、こんな起用を観たくなかった。

オリックスは開幕戦に1軍の公式戦の経験がない山下舜平大を開幕投手に起用した。球界の盟主は、いつまで昭和・平成の野球をやっているのか。DH制の導入と同時に巨人も選手、首脳陣の新陳代謝を待ち侘びている。

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