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逃げたし、恥ずいし、役に立てし。


本書はあくまでも個人的な備忘録であり、いつのまにか非公開になっている可能性があることをお許しください。


今、何かから逃げてしまっている同志へ。


「今、思えば」

ボクは依存していたのだと思う、ギャンブルという麻薬のような刺激に。


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韓国のカジノにいたボクは最後のチップ(カジノ内の通貨)を失い、ようやく冷静になれていた。

「終わった」

眩い光と鳴り響く爆音から少しでも離れるべく、ボクは誰もいないホテルロビーのソファに倒れ込む。

空っぽになった財布と心はどちらも軽かった。

どうして、こうなってしまったのだろう。

錯綜する感情を整理すべく、ボクは今日に至るまでを振り返ってみた。


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一言で言えば、現実から逃げていたのだと思う。


ボクは昨年の十一月末に務めていた会社を辞めて、晴れて独立した。

いざ起業家として走り出してみると、それはそれは新しい体験の連続で。

誰にも管理されない、全ては自分自身の裁量で物事を決めることができる喜び。

反対に、考え始めたらキリがないくらい、やるべきことが溢れかえっている不安。

いろいろな初めてを、一ヶ月で体験しまくった。


起業家という新たな生き方に適応しようとする中で、当然ながら『うまくいかない日』というのが訪れる。

いわゆる『bad day』だ。

思い通りにことが運ばない、そんなときに現実から目を背けさせてくれたのがギャンブルだった。



ギャンブルは、結果がすぐに出る。


勝ちか、負けか。

ルールは単純明快で分かりやすく、すぐに没頭できた。

起業という忍耐と持久力が求められるスポーツに疲れていたボクはまんまと、ギャンブルの甘美な魅力に取り憑かれた。


ギャンブルのもう一つの特徴は、成功体験の印象が強く残ること。

賭けに勝ったときに脳内を駆け巡るドーパミンという快楽物質を求めて、ボクはひたすら過去の成功を再現しようとしていた。

当然、勝利は敗北の数を遥かに下回る。

でも、それは関係ないのだ。

一度の勝利で得られる快感は、幾度の敗北を忘れさせてくれるから。



いつしか気がつけば、ギャンブルのことを考える時間が増えていた。


仕事に向き合おうと思っても「ギャンブルがしたい」という欲求が邪魔をして、作業に集中できない。

一人になるとそれは顕著で、個人で自由に使える時間はギャンブルのことばかり考えてしまっていた。

「次はいつ、カジノへ行こうか」

「勝つために確率論の勉強をしよう」

そんな自分が嫌で、自己嫌悪に陥ることもあったけど、その感情すらもギャンブルで忘れようとする悪循環に入っていった。

底無しの沼。

ぼくが足を踏み入れてしまったギャンブルという世界は、一度ハマってしまうと抜け出せないような場所だった。

福本伸行作『賭博黙示録カイジ』がコミカルな漫画のようで、笑えないノンフィクションに思えてきたのだ。ざわざわ


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そして、ぼくは韓国にいた。


ソファに横たわりながら、今この瞬間の率直な感情をスマホに書き殴る。

もはや「負けた分を取り返さないと」と思えなくなるほど完膚なきまでボロボロになれたおかげで、ボクの心には柵がなかった。

ある意味では、負けきったのかもしれない。

淡い夢から覚めるくらいに、負けきったのだ。


ただの備忘録のつもりで筆を走らせたものの、一応まとめてみようと思う。


今回の一連の出来事から学びを抽出するなら「夢中になること」と「依存すること」は紙一重だということ。


どちらも、己の時間や情熱を注いでいるという点では一見、同じように見えるかもしれない。

しかしながら、この二つを分ける明確な違いは「逃げた結果として、たどり着いたかどうか」ではないだろうか。

具体的には、自分自身が楽をしようとした先にあるものが依存であり、夢中は苦楽を受け入れた上で実現する状態だと思う。

依存の状態はまるで迷子から抜け出すために、目的地ではない場所を無理やりゴールと呼ぶようなこと。

本来、夢中は逃げた先にはないはず。

果敢に挑んだ先にあるものが夢中であり、依存で生きる時間なんてもったいない。


徹夜明けのボヤボヤした脳みそが、ボクにそう語っていた。やで。


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「今、思えば」

ここ最近のボクは現実逃避のために、ギャンブルがあった。


いつか、この経験も「糧になった」と胸を張って言える日が来るように。

今は仕事に、夢中になろうと思う。


依存、ダメ。


絶対。(しちゃうけどね)(人間だもの)



おしまい。


いつも温かく応援してくださっている皆様へ

ポーカーをはじめとするスポーツの鍛錬は継続しようと思うものの、あくまでも依存的に向き合うのではなく、きちんと夢中な状態で臨めるよう決意を新たにしましたとさ。

七転び八起きの若輩者ではありますが、引き続き、今後とも何卒よろしくお願いいたします。




サポートいただき、誠にありがとうございます! こころ着火マンとして、これからも人々の心に火を灯せるよう邁進します。 『いつ死んでも後悔のない生き方を』 「普通」という呪縛が支配する母国・日本で奮闘する、七転び八起きの帰国子女の物語。 今後とも何卒よろしくお願いします!!