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出会いの予感をつくる試みー羊の旅プロジェクトー


友人が「はんこ屋は仮の姿です!本当は羊の人です!」と、超わかりやすく説明してくれた今日このごろ。私の事を私よりも力説してくれる人がいるって、なんと幸せな事か。この場を借りてお礼を言ってみる。ありがとね。


2021年、2022年と行ってきた羊の旅プロジェクトについて書いてみる。


ざっくり説明すると、様々な人に羊のオブジェを作ってもらい、それらを群れにして富山の各地を旅するという事をしてきた。

2年間で約140頭の羊のオブジェが誕生し、それらを引き連れてあっちこっちを旅してきた。旅の終わりに羊は作った人の手元に戻り、とある参加者の言葉をかりれば、「感受性豊かになって帰ってくる」という、普通のモノづくりのワークショップでは味わえないような物語性のあるプロジェクトとして定着(?)しつつもあった。なんせこんな訳分からないプロジェクトをケーブルテレビさんが取材してくださったり、また来年も参加します!と声をかけて下さったり、SNSで繋がった県外の方が2年連続参加して下さったり、振り返れば信じられないような奇跡の積み重ねだったように思う。関わって下さった方々、本当にありがとうございました。


コンセプトとして、コロナ禍でどのように人と出会っていけばよいのかという閉塞感があった。自分の羊をアバターとしながら県内を見て回ることで、日常の中で新たな発見があるのではないかと思っていた。何よりも私が誰かと出会いたかったのだと思う。結婚と出産を期に徹底的に孤独になり、当たり障りの無い会話が何よりも苦手な私にママ友など作れる訳がなく、羊のワークショップが「こんな変人ですが、大丈夫そ?」という前置きとなっていた。類は友を呼び、生活範囲内では決して出会えなかったであろう友人に恵まれ、毎日楽しく暮している。どこにいけば気の合う人がいるのかわからず絶望していた“羊以前の”自分に伝えられる事があるとするならば、「やりたいことをやっていれば、会いたい人に会えるんだよ。」という事。そして、羊のように穏やかに柔らかく笑い、自信の無さ故の敵意を向けなければ、大抵の人は理解をすることはないにしろ受け入れてはくれるという事だ。世界は優しい。自分が優しくいれば。

 

私はアートが好きで、特に現代アートが好きだ。

現代アートどころかアートの定義すら曖昧な日本の田舎の、博物館はあるけど美術館はない町で育児をしながら生活していた。家族や友人にアートに興味のある人はおらず、アートを見た時に感じる感動や疑問を共有できる相手はゼロだった。知らず知らずのうちに傷ついていたし、それでも見に行こうというパッションが湧かなかった。自分が自分の事を本当に理解出来たと思える瞬間は芸術に触れた時だけなのに、そんな事よりも時間とお金をかけねばいけないと思う事は山程あった。自分の事を蔑ろにして、その不安がどこから来るのか理由を突き止めようともせず、周りに辛く当たった事もある。私は弱いので、他人に優しくするにはまず自分を満たさなければならない。そんな事も知らない、ただのクソガキだった。


今年に入ってすぐ、心の底から尊敬する現代美術作家に会う機会があった。この羊の旅プロジェクトを現代美術として成り立たせるにはどうしたら良いのかわからなかった。彼に助言を求めるなんて事は恐れ多すぎて出来なかったけど、彼の作品を見た事が今年の私の全てだった。他人にわかってもらおうとせずに、自分の探求に集中すること、アートだと思ってやる事でしかたどり着けない場所があること。その場所はエベレストのてっぺんだった。遠くからでも見上げる事ができて、存在は誰もが知っているけど、運と実力がある人しかたどり着けない。私は彼の作品を見るためだけに、てっぺんにヘリで乗り付けた。今度は自分で登りたいけど、その場所があると知ることができて本当に良かった。


世の中には様々な現代アーティストがいる。

亡くなった恋人の体重と同じ量のキャンディの山を作品としたアーティスト。町に溢れる銃を集め、それらをショベルにして植樹する行為を、自らの芸術だというアーティスト。恋人からの別れの手紙を様々な人に解釈してもらい、その記録写真を撮ることで傷を癒やすアーティストもいる。

私は物語性があり、ドキュメンタリーであり、美しい作品が好きだ。そういった現代アートは、美術館や芸術祭という「アートを見せる場」の中でしかアートだと認識されづらいという難しさがあるが、そういうものを美術館や芸術祭の外で生きてる私が作っていくためには、誰にも理解されずとも、「アートとしてやっています。」とニコニコ笑いながらやっていくしかない。時間をかけて、コツコツと。


前置きが長くなりましたが、羊の旅プロジェクトは2030年に完結します。

2030年に旅先となるのは、羊のオブジェを作って下さったみなさんです。みなさんの元へ、羊の群れが訪れます。

2030年までの間に、新たに羊のオブジェをつくるワークショップを行っていく他に、毎年初雪の日に羊の旅プロジェクトへの参加表明をしていただきます。その名も「初雪の日にあいましょうプロジェクト(略して初雪PJ)」です。そして、初雪の日とは、“立山初冠雪が報じられてから1週間以内”とします。


今年の牡羊座の満月の日(9月下旬の満月の日)に、過去2年間に羊を作って下さった方々に手紙を出しました。その中で、「初雪PJ」について詳しく説明しました。気軽に参加してくださいね。毎年牡羊座の満月の日に、その年の初雪PJについての手紙を送る予定です。参加の有無関わらず、秋のこの時期に手紙が届く事が、2030年までの恒例行事となればいいなと思っています。


羊飼いは羊たちを導きながら草原を旅します。羊以外誰も居ない地平の上で、きっと星を方位磁針として、月の満ち欠けをカレンダーとして毎晩眺めていたのでしょう。今年の手紙を出した満月は、中秋の名月と満月が重なる日でした。次に重なるのは2030年だそうです。2030年の中秋の名月の日を目安に、羊たちは集い、旅をスタートさせます。


さて、立山に初雪が降った事は報じられましたね。初雪と初冠雪は違うのです。

麓から見て、「雪がついたな」と目視できる日が初冠雪として報じられます。羊飼いたちも、きっと山々の頂の雪を見て冬の訪れを知ったはず。だから、初雪PJの“初雪”は、“立山初冠雪の日”とします。


流れていく季節、あっという間に過ぎ去っていく時間を肌で感じながら、10年間という一つの区切りの中で、羊はどこからきたのでしょうか、羊とは何者なのでしょうか、羊はどこへいくのでしょうか。


冬のはじまりに羊を動かし、それぞれが何をしているのかを感じながら暮らし、2030年に群れとなり自分のところへ来るかもしれない。漠然とした出会いの予感は、何が起こるかわからない殺伐とした社会の中で、唯一の生きる希望です。
2030年まで生き延びましょう。

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今年から、羊の旅ワークショップは、2日にわけて行います(初参加で遠方ではない方のみ)

一日目→羊の設計図を書くワークショップ

みなさまに描いてもらった羊の設計図を元に、染色や材料集めをします。

準備ができ次第、


二日目→羊をつくるワークショップ
とします。

1日目と2日目の間は、数ヶ月空くと考えて下さい。遠方の方は、それぞれの設計図に合わせたキットを郵送します。羊を作った事がある方で、また作りたいなと思う方は、羊の設計図を描いて私まで送って下さい。どのような手段でも構いません。


のんびりやっていく予定です。ここまで読んで下さり、ありがとうございました。







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