「仏国土」としての「国体」(一) ―人格的共存共栄を如何にして実現するか 里見日本文化学研究所所長 亜細亜大学非常勤講師   金子 宗德

序に代へて ―― 里見岸雄博士の「生命」観
 昭和四十九年四月十八日に里見岸雄博士(以下、敬称略)が大寂せられてから、本年は五十回忌の節目に当たる。
 里見の学業は多岐に亘るが、その根幹に位置するものが日蓮学と日本国体学であることはいふまでもない。それらは学的営為として独立してをり、前者を仏教思想史の一つとして、後者を国体思想史の一つとして扱ふことが可能である。近代日本思想史の研究者として後者に関心を懐いた筆者は、その学問的展開を辿ると共に現代的可能性を探ることに努め、その成果を弊誌に執筆した諸論考、また、外部機関の研究者とともに公刊した共著の形で発表してきた。
 それらの中で、筆者は里見の日本国体学において、「生命」といふ概念が重要な位置を占めてゐることに触れてきた。

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