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お茶の水橋の都電遺構が日本大学船橋キャンパスに保存されました

思い返せば2019年11月、お茶の水橋の耐震補強工事により、アスファルトの下に眠っていた都電レールが剥がされ始めたことを知り、現地を訪れたのが始まりでした。

奇跡的にほぼ原型のまま残されていた戦前の都電の遺構が壊されていくに忍びなく、思い切って現地事務所と千代田区役所に連絡を取り、その価値を訴えました。他方、Facebook上のグループ「廃線跡・未成線研究会」に集う有志に声をかけて「お茶の水橋都電レール保存会」を結成、保存活動を行うことになりました。

2020年1月に出土した第2区画の遺構は特に美しく、SNSはもとより新聞紙上でも大きな話題になりました。

2020年1月23日 お茶の水橋にて

その後、コロナ禍が世界を襲い、現地訪問すらままならず、保存活動は難航しました。その中で、ご縁あって、現地近くに所在する日本大学理工学部が、出土した都電遺構の一部を引き取ってくださることになりました。

そして、同大学船橋キャンパスのCSTミュージアム(科学技術資料センター)にて、レールのみならず敷石ごと、復元・展示されるに至ったのです。

2023年5月のある日、保存会の仲間と、初めて見学に伺いました。

夕日に光る敷石とレール
レールはまっすぐに
いい感じに擦り切れた敷石

古レールの保存例は各所にありますが、敷石を含む路面軌道そのものが、2メートル以上にわたり精確に復元・保存された例は極めて珍しいものと思われます。今から90年以上前、1931年に二代目お茶の水橋が竣工した昭和初期、世の中がまだ手作りだった時代の雰囲気を感じることができます。

屋外保存の全景
資料番号14

また、「舶来もの」の路面軌道用の溝付きレールも貴重な史料であるとして、調湿機付きの屋内ケース内で大切に保存してくださることになりました。

屋内展示
路面電車用の溝付きレール


路面電車用の背の高いレール

お茶の水橋都電レール保存会として、お茶の水橋から出土した戦前の都電遺構の産業遺産としての価値を認めてくださった日本大学理工学部の関係各位のご英断とご尽力に、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

美しい資料館の真正面に保存されています

思い切って保存活動を始めて3年あまり。活動の中から、「レールは人をつなぐ」という名言が生まれました。その名言どおり、人のつながりの中で、失われかけた産業遺産がこのような美しい形で保存されることになりました。敷石の上に座って撫でていると、笠間市で稲田石を切り出した人、これをお茶の水まで運んだ人、はるか欧州から届いたレールと敷石を、掛け替え成った真新しい二代目お茶の水橋に敷いた人、それぞれの息づかいが聞こえてくるようです。保存活動を始めてよかったと、こみ上げるものを押さえることができませんでした。

敷石とレールの息づかい

お茶の水橋都電レール保存会 公式サイト 
https://ochatoden.home.blog/

お茶の水橋都電レール保存会 公式ツイッター https://twitter.com/ochatoden

Facebookグループ「お茶の水橋都電レール保存会」(メンバー限定)
https://www.facebook.com/groups/nishikichosen

(2023-5-23 記)



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