Xperia 1 IIはソニー復活の布石になりうるか(後編)

オーディオ性能

オーディオは本体両側面にステレオスピーカーを配置しスピーカーでの視聴でもステレオが実現された。また3.5mmステレオミニプラグが復活し、有線のオーディオ機器の接続も可能となった。これはXperiaシリーズではXZ1以来であり、発表直後はネット上でiPhoneユーザーなどからの羨望の声もあったという。従来と同じくDolby AtmosやDSEEをさらに強化させたDSEE Ultimateを搭載し高いオーディオ性能を実現している。Xperia Proについて同時に発表されたXperia ProはXperia 1 IIのプロフェッショナル仕様となる。Xperia 1 Professional Edition (J9150)の後継モデルとなり、業務用途に特化したモデルとなった。基本性能はXperia 1 IIと同じだが、外装は樹脂でできている。これは内蔵アンテナの精度を高めるための仕様となっている。最大の違いは通信方式であり、こちらはミリ波5Gに対応している。これは通常の5Gである5G sub6と違い28GHz以上の高帯域での通信である。電波の直進性が非常に高いため、最初は使える用途や範囲が限られてくるが、これによってさらなる低遅延、大容量での通信に対応している。また、αやXDCAM、CineAltaとHDMI接続することによって画面の映像出力を行なったり、5G通信で映像を転送する機能も搭載されており、まさに映像や放送の現場に特化された機種となる。

考察


私はXperiaシリーズをXperia Z3、Xperia XZsと使用してきたが、Xperia Zシリーズはソニーのあらゆる技術が結集された非常に完成度の高いモデルとなっていた。しかし、Xperia XZになり、その技術は徐々にバラバラになってきたように思えた。それはXperiaシリーズの進化の停滞と明らかに一致しており、それにはある種の諦めさえも感じられたのである。
従来、ソニーエリクソンから始まったソニーの携帯電話事業のブランドは、それぞれの特化した機能に合わせたネーミングがなされていた。液晶やテレビ機能に特化したBRAVIAケータイや音楽機能に特化したWalkman Phone、カメラ機能に特化したCyber-Shotケータイなどさまざまな形の携帯電話が発表されたが、Xperia Zシリーズはそれらの要素をすべて融合したモデルとして一躍人気となった。
しかしXperia Xシリーズとなってから、ミュージックアプリのWalkmanブランドが外れ、Xperiaシリーズは迷走の一途をたどっていた。中国や米国市場からも撤退し、XperiaファンからはXperiaブランドがいつ終了するのかの秒読み段階に入っているのではないかという声さえもあった。
しかしXperia 1によってその懸念は払しょくされた。ソニーの得意分野である映像機能に振り切り、さらにシネマカメラであるCineAltaブランドを冠した”Cinema Pro” アプリを搭載することでニッチではありつつも実用できる端末に仕上げることができたのはソニーモバイル復活の証といっていいのではないだろうか。2020年、5G通信元年の時代となる今年に発表されたXperiaは、世界のスマホ市場をさらに活性化する端末になるであろう。

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