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【インタビュー】アラン・ホールズワース 2008年

アラン・ホールズワースにインタビューしたのは2008年11月28日の1回のみでした(その後の来日時もビルボードライヴの楽屋で挨拶はしました)。ちょっと変わり者っぽい人ではありましたが、にこやかにいろいろ話してくれて、楽しかったです。このインタビュー記事の初出はプレイヤー誌。

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2008年11月に行われたテリー・ボジオの来日公演はソロやコラボレーションなど多彩な趣向をこらしたものだったが、やはりハイライトといえるのは、テリー(ドラムス)、パット・マステロット(ドラムス)、トニー・レヴィン(ベース/スティック)そしてアラン・ホールズワース(ギター)による夢のスーパー・セッションだった。キング・クリムゾンvsUKというあり得ない組み合わせが実現したことも感無量だが、全編インプロヴィゼーションによる4人の超絶プレイの応酬は凄絶のひとこと。当初は後半ゲスト扱いでステージに上がるはずだったアランは急遽、最初から出演することが発表され、もはやステージ上どこを見ていいか判らないバトルが始まった。
一夜明けて、アランはご機嫌だ。1982年のアルバム『I.O.U.』について振り返ってくれた彼は、編集者さん(♀)に「きれいな髪だね」と声をかけたり、「金がないんだよ!」とグチをこぼした後、「ゴメン、トイレ行っていい?」とインタビューを締めくくる。ギター現人神的なイメージとは異なるお茶目ぶりを見せてくれた。


●素晴らしいライヴでした!

彼らとは一緒にプレイしたことがなかったし、正直どんなショーになるか見当もつかなかったんだ。でも、彼らの演奏はレコードやCDで聴いたことがあったし、特にテリーのことは長年尊敬していたから、共演することが出来て光栄だよ。1970年代にUKというバンドにいたけど、私がビル・ブルーフォードと一緒に脱退したのと入れ違いにテリーが加入したんだ。ニアミスだったのさ。

●当初あなたはライヴの後半、スペシャル・ゲストとして参加する筈だったのが、急遽全編ステージに立つことになったそうですが、どんな話し合いがあったのですか?

サウンドチェックの時、みんな楽しそうで、私だけのけ者になるのは悔しかったからね。最初からやりたいって主張したんだよ。別にギャラが増えるわけじゃないけど、そんなことより大事なことがあると思ったんだ。ライヴは全編インプロヴィゼーションだった。次の瞬間、何が起きるか判らなくて、スリルの連続だったよ。最後の方の曲でトニーが事前に考えていたパターンがあったかも知れないけど、他は全部即興だ。

●テリーとパットの二人による複雑なリズムに即興で付いていき、しかも自分のカラーを出すのは、かなり大変な作業ですよね?

いや、彼らの凄いところは、ただ難しいリズムを叩くだけでなく、一緒にプレイする相手にリラックスさせてくれるところなんだ。むしろ簡単に思えたほどだよ。ジャムで瞬間的に対応する能力を身につけるには、とにかく場慣れすることが大事だ。そしてもうひとつ、相手のプレイをよく聴いて、集中すること。リズミカルなプレイをしてきたら、その上に乗ればいいし、メロディアスなプレイだったら、一緒にハーモニーを成すことも出来る。そうして呼応しながら、自分のカラーを塗る場所を探すんだ。...正直、判らないよ(苦笑)!インプロヴィゼーションはインプロヴィゼーションさ。本能的なものだし、どうすれば出来るようになるかなんて、答えようがない。かつて私は、すべてがキッチリ固められたバンドでプレイしていた。その方が安全だし、大失敗もないけど、大成功もないんだ。このメンバーでプレイすることは、大きな喜びだね。

●テリーと面識はありましたか?

うん、どれぐらい前かは覚えていないけど、何度もバックステージで顔を合わせているし、テリーの音楽は聴いていたよ。今回の日本でのショーまで、同じステージに立ったことはなかったけどね。

●テリーはオーストリア出身のギタリスト、アレックス・マカチェクと共演していますが、彼はあなたからかなり影響を受けていますよね?

まあね。でも気にしてないよ(笑)。いや、確かにちょっとは影響があるだろうけど、それだけではない。彼は素晴らしいギタリストだし、とてもいい奴だよ。こないだアレックスはこんなことを言ってくれたんだ。「あなたがギターを弾くのを見るのは、整体に行くようなものですよ。背筋がピンと伸びますから」ってね。

●トニーやパットとは交流がありましたか?

いや、まったくなかった。もちろん彼らがプレイしたレコードは聴いていたし、個人的にも面識はあったけど、ステージで共演したことはなかったんだ。トニーのプレイは本当に素晴らしいよ。彼と一緒にやるときは、モニターのミックスで彼の音を大きくしてもらおうと考えてるぐらいさ。

●2002年の『フラット・タイア』以来スタジオ・アルバムが途絶えていますが、ここ数年の噂では『スネイクス・アンド・ラダーズ』というタイトルの新作を制作しているそうですが...?

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