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#2021年Vtuber楽曲10選

聞いてこれは好きだと思った楽曲が迚も沢山あった一年であったが、その中からしいて十曲を選ぶとなると大変悩ましい。断腸の思いを経ながら選んだ10曲を見ると、歌唱力の高さと声質の好みの合致に穿たれたか、楽曲のサウンドの面白さに惹かれて選んだという傾向を自ら感じる。

VTuber音楽のファンの自覚がありながら、通常そのクラスターの成員ならばこの尺度を以て選出していくだろうというものを余り念頭に置けていないであろうことはどうかご容赦願いたい。

番号は紹介順であり順位は特にない。


1. 花鋏キョウ - All Night

リリースされたアルバムに収録された新曲のうち一つ。曲は再びポリスピカデリーの手による。Verseに対して低めのボルテージで進行するMain Chorusのメロディが特徴的。最後のMain Chorusで加わる高音のコーラスに目を瞠った。蒼に躊躇うとの連関を想起させる詞の節がありファンにとって感慨深い。


2. 富士葵 - ヨスガノカケラ

前作と比較しよりシリアスなトーンで統一された2nd Album『シンビジウム』の第七曲目。'17年末より知れ渡ってきた彼女の歌唱力が最も首尾よく引き出された楽曲だと考える。ラストのMain Chorusの高潮で図らずも涙腺が綻ぶ。また間奏の目まぐるしい転調もこちらの耳を惹く。



3. ヰ世界情緒 - 何億光年の孤独

ゲーム『Monark』に寄せた歌唱コンピレーション『AWAKE』収録の一曲。以前にもVTuberへの楽曲提供履歴があるrionosの手による。もう片方の収録曲共々夥しい数の転調を経る。シューゲイズ色のある静謐な雰囲気が行き渡り、少女、成人双方を思わせる複数面的な彼女ならでは歌唱様式の魅力が十全に引き出される。


4. 町田ちま - 六月のプレリュード

一昨年9月下旬より歌を主軸にするYouTube Liveを私がよく視聴するようになったにじさんじ所属ストリーマーによる初オリジナルソング。作詞曲を『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第二期EDのフリージアの作家が担当。随所に彼女の仲間の名が鏤められている歌詞に胸と目頭が熱かった。


5. レグナ - Change

VTuber音楽の世界の中でPost Rock / Math Rockのサブセクションの一角を長らく張る氏による2nd Albumからの一曲。近年はインストゥルメンタル楽曲やゲストヴォーカリストを迎えた楽曲に加えた自身の歌唱による楽曲も多く聞かれるようになってきた。アンニュイさを感じさせる歌声がオルタナティヴなバンドサウンドとうまくマッチしている。


6. 常闇トワ - Palette

cover動画を投稿した-ERRORの作家、nikiの手による彼女初のオリジナルソング。ホロライブというグループにこのような声質や趣向の歌唱を為す者がいるのかと驚嘆を齎す歌声が冴え渡る。またかかげによるアニメーションによるMVを是非確かめられたい。


7. HACHI - Rainy Proof

V音楽ファンの間でその歌唱力で名を馳せるHACHIの手による二曲目のオリジナルソング。力強いバラードであった第一作から転じてこちらは落ち着いた雰囲気を纏うR&B周辺のテイストである。


8. LUCAS - 光

MVのプレミア公開をリアルタイムで見た。3DCGに倍速再生の実写を交えた大いに考察の余地のある映像、絶妙なバランスの儚げな歌唱に衝撃を受けたのだった。


9. 山露そちゃ, 小宵 - Humpty Dumpty

Club Turtle二作目EP収録の楽曲。前作はバーチャルねこのトラックによるLo-Fiな趣向の音像で統一されていたのに対して、より全般的にオーバーグラウンドなヒップホップをそろえる中でこの曲だけダウナーなオルタナティヴ・ロックのサウンドと異彩を放つ。Hookでの小宵の突き刺す歌唱がお気に入りだ。


10. 理芽 - NEUROMANCE

V.W.P.メンバーの中でも一際アダルト・オリエンティッド、インディペンデント色の強い作風のアルバムをリリースした理芽の表題的楽曲。現代ヒップホップ的な高密度ハイハットのリズム音とMathRock風味のある上物との対比のバックインストが印象的。また後半にある吐息を絡めた唐突な低音が鳴る展開はこちらの度肝を抜く。