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『アンナ・カレーニナ』のうんちく ~幸せな家庭はみな似ている?

私事でごめんあそばせですが、このたび作曲・編曲・作詞・歌唱ぜんぶ夜御牧れるの低予算オリジナル曲「剣の光はすべて星」をアップしました。

で、そちらにトルストイ『アンナ・カレーニナ』の「すべての幸せな家庭は似ている」という一文を引いたのです(2分10秒過ぎ)。

上の曲を仕上げた後に、そういえば『アンナ・カレーニナ』もトリック小説の系譜だなと思い出しついでに書き連ねたのがこちらになります。

幸せな家庭は似ている、わけねーだろ

先に言っておきますが、『アンナ・カレーニナ』はトリック小説です。トリック小説の大家であるナボコフ大先生が『文学講義』で取り上げています。

ナボコフ先生とトリック小説についてはこちらの記事が分かりやすい。

世界の小説の中にはときどき冒頭に、「すべての芸術はまったく無用である」(『ドリアン・グレイの画像』)だとか「すべての幸せな家庭は似ている」(『アンナ・カレーニナ』)だとかいった、意味深長なエッセイめいた文章が長々書かれていることがあります。

その手の序文を「さすが大作家は言うことが違うなあ!」と字面通り受け取ってしまうのは読みが浅いです。

そういう極論は、「(この作品では)○○という表現に××という(裏の)意味を込めている」という作者のヒントに過ぎない場合があります。あからさまに書くわけにはいかないが、かといって目立たせないとヒントにならないからそういう極論になるわけです。作者が中二病だからではない、はず。

なので、世の中一般の話としては「すべての幸せな家庭は似ている」なんて作者のトルストイですら考えていないと思われます。まあ、最初の拙作の主人公は頭を使うのが嫌いというイメージなので良いのですが(そもそもファンタジー世界にトルストイがいるのかっていう)。

ちなみに『アンナ・カレーニナ』ってどういう話かというと、表題の人妻がドロドロの不倫劇のすえ命を落とす、というざまぁな小説です、字面を読む限りでは。この手の小説は字面通り読んでも真相にたどり着けないので、本当に作者がそういう話として書いたかはじっくり謎解きしてみないと分かりません。さいわいなことに、ナボコフ先生の『文学講義』に当該作品読解の手引きが(決して分かりやすくはないものの)あります。

なお

拙作「剣の光はすべて星」には裏の意味はまったくありません。作曲覚えたてのヤミマキさんにそこまで仕込む余裕はありません。


バ美肉VTuber夜御牧れるはナボコフ先生の『ロリータ』の謎解きを試みる方を応援しています。