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展示方法をリサーチしよう

多摩美術大学統合デザイン学科のやまかずと言います。

昨日GA GalleryでやってたPLOT展という展示に行ってきました。

(引用:PLOT展webサイト

そこで観察し、見つけた発見を紹介したいと思います。


対象にするのはここで展示されていた三澤遥さんの「waterscape」です。

2017JAGDA新人賞取られてたのと、キャリアがnendo、日本デザインセンター、事務所立ち上げの流れでだったのでとても印象に残っており、前から知っていました。

(引用:日本デザインセンターwebサイト/product

自分が見た中で、かなり展示物のクオリティが高く、工夫が所々にされていると感じ、リサーチの対象としてみました。

館内は撮影禁止だったので、帰って来て記憶を頼りに書いたイラストで紹介します。イラストなので分かりにくいかもしれないです。すみません。

三澤遥さんの展示場はこんな感じでした。

この1つ1つの要素をなぜこうなのかって考えるのでなく、ステータスで考えます。「素材」というステータスに決めたらもうそれだけを意識するようにして観察します。(自分はよくやるので「ステータス観察」って呼んでます。)

では順番に観察したものを紹介していきます。


全体把握

まず全体を見て主観的でいいので自分が展示をみて表象してきたもの・イメージ・感情を言語化していきます。これは後々効いてくるのでやります。

落ち着く・楽しい・ユーモアに富む
綺麗・クリア・努力・手作業感・自然感

では次、ステータス観察をしていきます。


素材製

まず、分解します。展示で使われていた素材は

コルク・透明のアクリル板・普通っぽい紙・石膏粘土・金属・スチレン

この中でも主に多いのは下の板に使われていたコルク材です。

これ全部コルクです(下図オレンジ部分)。下から覗くと木の板の周りに薄いコルク材を貼り付けてありました。

では、分解した後、次に自分で作るならどうするか考えます。頭の中で新しく、自分なりに作ってみるんです。

すると自分だと

スチレンボードで箱を作って展示するか、

木の板を買って来て下の板にするか、

もしくは木の板を買って来て上からビニールシートかぶせたりするか、、

ぐらいです。これくらい自分の案が出ますけど、コルクなんて考えつきません。

じゃあ「なぜコルクなのか?」先ほど「全体把握」で考えたもののどれかに当てはまっていないか考えます。

落ち着く・楽しい・ユーモアに富む
綺麗・クリア・努力・手作業感・自然感

すると、自然感に繋がってるんじゃないかと自分は推測しました。マテリアルとしては金魚の餌っぽいイメージを感じるし、全体から表象するイメージを決めて、それに向かって全て統一するという考え方があればこれは自分も製作の際に実装出来るぞと思いました。「全体把握」で出したイメージと繋げれば理由になりやすいです。また、最終的にメソッド化・構造化しておくと、今後自分も扱えるようになります。つまり、「素材性」の項目では次のようなメソッドが得られたということです。

全体から表象するイメージを決めて、それに向かって全て統一する


あと透明のアクリル板が次に多かったんです。アクリルは下の中でも、クリア、綺麗な感じを作っている一つの要素だと思えました。白のアクリルだと絶対綺麗っていうものは表象されなかったと思います。

落ち着く・楽しい・ユーモアに富む
綺麗クリア・努力・手作業感・自然感

つまり、透明なものを使えば、クリア・綺麗なものが表象されるんじゃないか。っていう推測が出来ました。これもメソッド化しておきます。

透明なものを扱うと、全体的にクリアな印象に繋がる。


存在感(それは2Dか?3Dか?厚みはどうだ?大小はどうだ?)

次に考えるのは、それは立体なのか?平面なのか?ってことです。

これは分解できないので、分解はしません。1つ1つについて考えていきます。しかし全てについて分解してると多すぎるので、面白い発見ができた部分だけを紹介します。

自分がピックアップしたのは、コルク板の上に並んだ説明が書かれた紙・壁に貼り付けられたプロセスが書かれた紙(上図オレンジ部)です。この紙、見た感じ普通のコピー用紙なんですよね。自分の場合だと、5mmスチレンの貼りパネルに貼り付けて、ドドドドドーンッッッと大量に並べるでしょう。そこをなぜ平面にしているのかっていうのがポイントです。

「融けるデザイン」(著:渡邊恵太)で「道具・メディアの透明性」っていう話を知っている方だったらすぐ分かると思うんですけど、何か伝えたいことがあったらそれ以外は出来るだけ意味を持たせない、意識させないことが重要です。何かそれっぽいのをここでは感じたんです。

また、それに似てますが、説明がパネルでなく、紙だということで、他の立体物がすごく目立ってました。つまり、2Dと3Dのコントラストが強く、明快だったんです。これが同じような立体同士ならどっちを見ればいいか理解は出来るけど最初に一瞬混乱すると思いました。つまり、ここでは

出来るだけコントラストをつけることでコミュニケーションが明快になる

ということが分かりました。


配置

次は配置です。これは分解をせず、まず全体を見て自分だったらどこに置くか考えてみます。すると、三澤さんの展示方法は特に勉強になりました。

美大生の展示を見に行くと、「制作した立体物」「その説明」が完全に分けられてるんですよ!でも三澤型は違う。その両方を乱雑に配置してるんです。モチーフが多いから当たり前だと思われるかもしれませんが、実際やっても均等に揃える方が多いと思います。(これまで展示を見てきた経験上)

これなんでかなー?と思いながら展示の説明と物を交互に見てたんですけど、これ読みやすい!と思いました。自分だけかもしれないですけど、一般型(上図)の展示形式だと、説明だらだらで本当に眠くなるんです。でもこの乱雑配置型、三澤型は飽きないし、スーッと全部読めちゃうんです。これを知った時は、「すごい発見だ!高度な技術だ!」って思いました。

メソッド化するとこうなります。

説明,物を計画的に乱雑に配置すれば眠くならず、逆に気持ちよく読める


全体的に色を分解すると、茶色・白がメインカラー。あと、写真の色を入れると、緑、赤、薄い水色なんですよ。資料の文字入れると、赤、黒かな。

茶色がメインのほぼほぼを占めていて、だいたいこんな感じだったと思います。

茶色、白がある中で、本当に赤、緑、薄水色って目立ってたんです。しかも気持ちよく。気持ちよく伝わった理由は、

落ち着く・楽しい・ユーモアに富む
綺麗・クリア・努力・手作業感・自然感

自然感が結構出ていたからではないかと思います。茶色は土のイメージを感じさせてくれました。

これは最初の方にでたこれに合ってますね。

全体から表象するイメージを決めて、それに向かって全て統一する


光の設定


(引用:日本デザインセンターwebサイト/product

グラフィックにこんな感じの写真が使われていました。映像も流されてたんですけど、全て光の向きが統一されてるんですよ。自分だったらどうするか考えると、上から照らしたり、全体的に明るくしてしまうかもしれないです。でもなぜこの向きなのか。これはかなり推測なんですけど、アクリル自体が横から照らすと、表情が光ってるところと、光ってないところでコントラストがつくから明快さが出るのではないかと思いました。

あと、分解してみると、「背景のグラデーション」を捉えることができます。

グラデーションって人間は「美しい」と感じるものだと思ってて、美しい間接照明・夕焼け・陰翳礼讃にも光のグラデーションが存在してます。

メソッド化すると、

コントラスト、明暗のグラデーションの存在で、明快さ・美しさが表象できる


グラフィックについて

ここでは、イラスト、グラフィック的な要素を抜き出し、それについて考えます。

今回それをやっていて、三澤さんのグラフィックすごく面白いなと思ったところがあったんです。

写真だけ載せたらいいのになぜかグラフィックには余計なトンボ(普通カットして捨てるところ)が残してあるんですよ…。でもそれが綺麗に残されてて、明らかにプロの仕業なんですよ。わざと手抜きにしてる感じがしたんです。

あと、スチレンボード、もしくは紙でもいいんですけど、それを固定するのに針1本だけ使っている。自分がやるとすると裏側にひっつき虫、接着剤とか使っちゃいます。

これなんでだろう…。って考えてた時に、これは手作業感じゃないかと思いました。

落ち着く・楽しい・ユーモアに富む
綺麗・クリア・努力・手作業感・自然感

手作業感を生んでいたのは、これ以外でも、プロセスが書かれた紙はほぼ手書きイラストが多かったし、手書き感いいよねってなることが美大にいて他の人と話してて結構あったのでそういうものなのかと推測しました。これは三澤さんにすごく伺いたいところです…。

メソッドにすると、

手書き感、手作業感は、評価される対象になるから入れた方がいい(?)


あと注意書きもこだわられてて、すごくシンプルでした。こだわってるな〜。

あと、気になったのが、キャプションがオレンジ色の紙で包まれてたんです。

イメージはこんな感じです。みた時にすごい特別感があったんです。他の展示企画で見かけるのはトレーシングペーパーやアクリルを使ったキャプションを見かけたりします。こういう特殊な素材を使ったキャプションってなんでこんな工夫をしてるんでしょうか?どういう考えがあるのか教えてもらえるとありがたいんですけど、推測では、特殊なことがあると人間は飽きないからなのではないかと思ってます。それか「この展示のものだよ」って示すサイン的な意味合いがあるのでしょうか?

これについては本当に識者の方に教えて欲しいです!


メディアの種類は?

ここでいうメディアとは提出形式のことです。実物なのか?模型なのか?写真なのか?動画なのか?インタラクションなのか?ってことです。

三澤さんのは「動画・物体・写真・説明」の要素がありました。PLOT展には、他に写真だけの展示物もあったんですけど、三澤さんの方がすごく具体的に理解出来ると自分は思ったんです。

メソッドにすると、

メディアを多くすることで、より立体的に伝わる


これ僕が最近すごく考えてることなんですけど、量ってすごく重要だなと思ってるんです。

「群衆感っていうのに人は圧倒される」っていう話を予備校の先生に聞いたからモチーフを多く書くようにしたっていう話を友人から聞いたのと、いろんな展示、作品を見ていて、すごい!ってなった時、展示物の量も多いなと思ったんです。

三澤さんの場合、置かれてるオブジェクトの種類の量も多いし、小さな可愛い説明も多い。メディアも多い。全体的に量が多いんです。ただ、同じものは置いてないです。

量が多いだけで評価する例って結構これまでみたことがあって、この量が多いっていうのは一体何で評価しているんでしょうか?これについてはもしかすると人は他人の努力量までを評価している?っていう推測を自分はしてます。

もしかすると、人は他人の努力量までを評価している


五感刺激性

いかに五感を刺激しているか考えます。

グラフィック・写真・動画・手書きイラストなど様々なもので視覚を刺激し、動画の音楽が聴覚を刺激します。今回は少ないのでスルーします。

(時々、匂いとかインタラクションを取り入れてるものがあったりするんで、このステータス観察も行います。)


そもそもの存在定義を考える

そもそもなぜそれがあるのかっていうのも考える上で大切だと思っています。

展示物をものとして認識して、分解すると様々なものが置かれていることが分かりますが、自分ならこれを置かないけどなんでおいてあるんだ…ってなることがあります。

今回の場合だと、コルク板の上にレンゲ・餌・網が置かれてたのがなぜだ?ってなりました。別にいらないじゃんって自分は思ったんです。

しかし、これも最初の発見で説明出来ると思いました。

全体から表象するイメージを決めて、それに向かって全て統一する

ここで表象するイメージは、企画自体のイメージである金魚、水槽あたりのイメージを強化してくれます。これが無いと、白いオブジェと写真だけになってしまい、金魚、水槽のイメージがコルク板の上には湧かないように思います。



以上です!3時間滞在して観察してたんですけど、これだけの色々な推測・学び・確信を手に入れることが出来ました。

全体から表象するイメージを決めて、それに向かって全て統一する
透明なものを扱うと、全体的にクリアな印象に繋がる
出来るだけコントラストをつけることでコミュニケーションが明快になる
説明,物を計画的に乱雑に配置すれば眠くならず、逆に気持ちよく読める
コントラスト、明暗のグラデーションの存在で、明快さ・美しさが表象できる
手書き感、手作業感は、評価される対象になるから入れた方がいい(?)
メディアを多くすることで、より立体的に伝わる

どれかの推測の答えが載ってる書籍あれば是非教えて欲しいです!自分はまだまだ学びが足りなすぎるので…。

あと、このステータス観察っていうの、これまでは自分の中だけでやって担ですけど、今日公開してみました。他の人でもやってるよって人は教えて欲しいですし、もっと最適な方法があるという方は是非教えて欲しいです。


まとめ

実際作品見ても、「ふーん、面白いね。次行こう」っていう人が多いと思います。(昔自分がそうだったのと、他の見てる人を見てて思った推測です。)そんな中、僕は学校で教授から、「作り手として生きるならちゃんと見た作品は奥深く考えること」と教わったんです。また、「観察の練習」(著:菅俊一)を読んだんですが、こんな話がありました。

R・マリー・シェーファー著『サウンド・エデュケーション』の書籍で出てきた課題で、「今聞こえる音を全て書き出してみなさい」という課題があり、それで菅さんは自分が意識した途端、実際自分の身の回りにはこれまで認識してなかった様々な音があった。

(書籍の一部の自分の要約です。)

つまり、意識すれば人間はその対象に迫れる訳です。

対象を意識することで、展示物見て「ふーん」じゃなく、なぜこれはこうなんだってことが分かってきます。

また、UIトレースっていうのが流行ってるらしいですけど、あれって「既存のものを自分で作って見るとなぜこうなんだと知覚出来る。」って状態ですよね。これはここでも使えています。自分でやるから価値がやっと分かるんです。つまり、

● 対象を意識した観察

● 自分でやるならどうかって視点

の2つが観察においては重要なのではないかと思いました。


あと、結構前に1つだけ観察したものを投稿したものもあるので興味ある方は是非。

面白いを収集する(1回目)




注意:全部の内容は、観察していて自分なりに思ったという段階で、まだ主観的な部分が多いです。しかし、否定することはないと思ってます。それは観察においては普通だと思ってるからです。その後それを応用・検証してみて使えればそれは正しいって事です。


最後まで読んでいただきありがとうございました!


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やまかず

クリエイターです。 デザインとイノベーションのコツ。 http://yamakaz.work

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