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【OMOIDE】キーワードと共に振り返る東京ヴェルディ2023(後編)【IN MY HEAD】

あの感動的なPO決勝から早くも3週間が過ぎました。
昇格決定後のふわふわした感覚もだんだんクリアになっていき、師走の慌ただしさやストーブリーグのハラハラ感から頭の中の思い出が遠ざかろうとしていく頃かもしれません。
そんな未来を見据えていかなければならない時期ですが、2023年の個人的ヴェルディ振り返り下半期編(後編)です。
今年の汚れ、今年のうちに。

※一部勝手にツイートを埋め込ませていただいています。掲載NGの方がいましたら、お手数ですがコメント等いただけますと幸いです。
※前編はこちらからどうぞ。


驚異の特別指定選手

6月2日、東洋大学から新井悠太選手の加入内定が発表されます。

この年の加入内定選手は、5月23日に発表された山田裕翔選手(国士舘大学)に続いて二人目。佐藤凌我選手&持井響太選手(いずれも明治大学)以降連綿と続く非ユース出身大卒選手の獲得が活況な様子に「今年も江尻篤彦強化部長はしっかりお仕事していますなあ」とホクホクしていましたが、新井選手の場合はこれまでとは少し毛色が違いました。彼の加入は2025年からであり、当時はまだ大学3年生だったのです。
有望選手に対して早い段階で加入内定を出しての青田買いはサッカー界で度々起こりますが、ヴェルディでは珍しいことでした。しかもこの時点で新井選手は知名度が高い選手だったわけではありません。しかし江尻強化部長と眞中幹夫強化副部長は大絶賛。"1年待ったら他クラブとの競合が避けられなくなる逸材"と判断し、この段階で加入内定を出したのです。

「強化部がそこまで評価するならきっと素晴らしい選手なのだろう」
「ただ実績はそこまでないし、フィジカル優位なわけでもなさそう」
「現時点では未知数」
「でも笑顔はかわいらしい」
「とりあえず白米をたくさん食べさせてあげたい」

https://www.verdy.co.jp/news/11969

等々と考えていたのですが、約1ヶ月後、強化部の目利きは間違いなかったことを知らしめられます。
7月5日のヴェルディ(当時2位)対V・ファーレン長崎(当時5位)の上位対決。劣勢の中でJリーグデビューとなった新井選手は、相手GKが一歩も動けないほど強烈なミドルシュートを突き刺すのです。

その4日後に行われたFC町田ゼルビアとの天王山でも途中出場から流れを変えるプレーで2点差を追いつく原動力となります。

もともとはボランチをやっていたそうですが、大学でサイドにコンバートされてから一気に才能が開花。キレキレのドリブルや強烈なシュートは瞬く間にJリーグでも話題になり、清水エスパルスの乾貴士選手と権田修一選手といったワールドカップ戦士からも注目を集めたかと思えば、10月にはU-22日本代表にも選出。

圧倒的な成長曲線に大いにビビり、「ヨーロッパに見つかってしまう」「でも大学卒業はしたいそうだから来年までは大丈夫」「卒業と同時に引き抜かれたらどうしよう…」と、早くもヴェルディサポーターに恍惚と不安を与えてくれています。

2024シーズンも大学との二足のわらじを履くことになりそうですが、それでもひとたびボールを持てば対戦相手には強烈なインパクトを与えてくれるでしょう。
できれば2025年一杯くらいまでは一緒に戦ってから直接ヨーロッパに送り込みたいところですが、果たしてどうなることでしょうか。

衝撃の移籍

新井悠太選手がホームで衝撃のデビューを飾った翌日、それ以上の衝撃がヴェルディサポーターに、いやJリーグ全体に走りました。ヴェルディの主軸であったバスケス・バイロン選手がFC町田ゼルビアに電撃移籍したのです。

移籍先の恩師への愛を綴り我々に(し、知らね~)という思いを抱かせつつ、
"すべて自分が下した決断だけど皆のことも好きだよ。まあ僕もちょっと嫌われるようなことしたかもしれないので批判は甘んじて受け入れるけど、それはそれとしてこれからも応援してね♡(意訳)"
と、わずか700文字ほどでなかなかに書き手の情緒を心配させる移籍コメントを繰り出します。これ、今読んでも本当に痺れる。
リリースが出た後にご本人のTwitterアカウントに投稿された動画でもなかなかに意外性のあるTシャツを着ていて「いや、別にいいんだけど、なんつーか、TPO考えたり、見る人の気持ちをちょっとだけ想像したりとか、あるやん?」と思わせてくれました。

リンクは貼りませんが、該当動画でご本人が着ていてTシャツはこれでした

「衝撃」とは書いたものの、その数日前に移籍事情に詳しい某氏の有料noteでそういう話が出ていたようで(僕は買っていませんでしたが)、SNSで流れてきたそれっぽい情報をチラホラと目にしつつも(いやあ、さすがにそれはないだろ……ないよな…?)となっていたのですが、まさか本当に3日後に戦うチームに移籍することになるとは…。

当然ながらヴェルディ界隈は大荒れ。普段はどんな移籍にも感情をグッと堪えている印象がある人も怒りを露わにしていたり、別の選手のSNSで意味深な投稿がなされたりしたことは印象的でした。
僕としては、当日ちょうど会議に入ろうとしていたタイミングでこの報せを見たため、その後まったく集中できなくなってしまったことをよく覚えています。

移籍リリースがなされたのは7月6日13時半。同日18時14分の時点で既にSNSのアイコンも町田仕様になっていました。観測史上最速。

多くのヴェルディサポーターの心に傷を与えた移籍劇ですが、この時のショックによってクラブやサポーターが一丸となった部分はあったでしょう。それに強化部としてはしっかりと移籍金をゲットした上で、約2週間後にはセレッソ大阪から中原輝選手を獲得します。この中原選手がヴェルディをJ1昇格に導く大活躍を果たしたことを考えると、バスケス選手もまたヴェルディ昇格の陰の立役者とも言えるかもしれません。

と、僕の中の理性を司る部分はそう言いますが、その隣で感情を司る部分の僕は「てめーコノヤロー、ナメ腐ったことしてくれやがってコノヤロー」と吐き捨て続けています。

ナメ腐ることにも相応の覚悟は必要なはず

言いたいことはまだまだたくさんありますが、時間は有限ですので、これ以上彼について言及するのは止めておこうと思います。
ただひとつ、来年町田と対戦する際にヴェルディゴール裏はどういう反応をするのかは気になります。ブーイングなのか、無視なのか、拍手なのか。それとも皆で一斉に「もう〜とでも言うのか。ちょっとした楽しみです。

ところで、豚の頭って意外と安いんですね。

国立天王山

第25節のFC町田ゼルビア戦は、1位と2位の天王山、J2初となる新国立競技場での開催とあってただでさえ注目度が高かったですが、そこにバスケス・バイロン選手の電撃移籍が加わって、試合前から大いに盛り上がりました。ヴェルディサポーターだから言うわけではありませんが、直前の選手引き抜きや、それ以前に色々なクラブとあれこれしていたことも関係して、ヴェルディ=ベビーフェイス、町田=ヒールという構図で見られる向きもあったような気もします。
"当日も異様な雰囲気がスタジアムを包んでいた"と書きたいところですが、集客試合だったこともあって一見さんと思しき人も多く、僕が座っていたメインスタンド側は和やかな雰囲気が流れていたように思えました。

ただ、試合の方はとても熱いものでした(火柱の演出の影響で「暑かった」ではなく本当に「熱かった」)(真夏にあの演出は死の恐怖を感じる)。
前半に2点リードを許した段階では絶望的な気分に陥りましたが、後半に新井悠太選手を投入すると流れは一変。そして、この試合の5日前に鹿島アントラーズから育成型期限付き移籍で加入した染野唯月選手の2ゴールで同点に追いつきます。

特に1点目は、宮原の弧を描くクロス、打点の高い染野のヘディング、どっかにすっ飛んでいくポープ、すべてが美しかった。

起死回生の同点で試合を終えたヴェルディでしたが、試合後の選手たちからは負けなかった安堵感よりも、勝てなかった悔しさの方が強く感じられました。
ただ、バスケス選手の移籍によって傷つけられたサポーターの自尊心を一定程度回復させたことに加え、この日をきっかけにヴェルディを応援すると決めた人も多くいたようで、国立で見せた選手たちの意地がシーズン終盤の熱気へと繋がっていたのでしょう。そう考えると、勝ち点1以上に大きなものを手にしたと言っても過言ではありません。

同点後にエリキの高速カウンターを宮原が防いだシーンは非常に印象に残っています
とはいえ、やっぱり勝ちたかったよね

試合後に志向するサッカーの違いについて両サポーターのみならず多くの人々が喧々諤々としていたけど、元ヴェルディ番記者である芥川和久さんのツイートはキレキレで笑った。

12年ぶりの東京ダービー

2023年の天皇杯3回戦は、クラブとしては12年ぶり、僕個人としては初めての東京ダービーとなりました。
対戦が決まった直後からSNS上ではFC東京のサポーターからの(あんまりおもしろくない)煽りが激増して辟易していましたが、卵事件、花火事件、ヴェルディの名称から頑なに「東京」を抜く公式アカウントの対応などによって相手方が勝手に品位を落としていく様子を見ながら、これが(墓穴を掘るというやつか…)と唖然としていました。

一方ヴェルディ公式は、毅然とした対応を取りながら、このツイート一発で株を爆上げします。

対応がオシャレすぎて逆になんか怖かった。

場外戦ではゴタゴタしかなかったダービーでしたが、試合の方はフェアで激しいものでした。先制を許したものの、控え組中心だったヴェルディも一歩も引かずに戦います。J2ではほとんどミドルシュートを決められることのないマテウス・ヴィドット選手の牙城を破る塚川孝輝選手の強烈なミドルシュートに慄きながらも、ユース所属で二種登録の白井亮丞選手の同点ヘディングシュートには大いに興奮しましたし、PK戦で相手サポーターを煽りまくる若手選手たちの姿はとても頼もしく映りました。それに、今シーズン出場機会が限られていた小池純輝選手のPK戦でのガッツポーズには熱いものがこみ上げてきたものです。

エーコのガッツポーズをもっと見たかった

試合中の両チームの応援の違いについては、「ヴェルディサポはバフ、FC東京サポはデバフ」という表現がとても面白かったですね。

2024年は少なくとも2回のダービーが行われるわけですが、そこでもきっと楽しくないことがたくさん起こるのでしょう。せめて警察沙汰にならないことだけは祈りたいと思います。

それにしても、
7月6日:バスケス・バイロン選手移籍
7月9日:FC町田ゼルビアとの国立天王山
7月12日:FC東京とのダービーマッチ
と、この1週間は本当に濃すぎる時間でした。たぶんヴェルディサポーターはこの時期に3歳くらい老けたんじゃないでしょうか。

ヴェルディの外弁慶化

2023年のヴェルディを振り返る上で忘れてはならないのが、リーグ戦でひたすらホームで勝てない時期が続いたことと、やたらとアウェイで勝ちまくっていたことです。

ホームでは4月12日の第9節ブラウブリッツ秋田戦での勝利を最後に、9月9日の第34節レノファ山口FC戦まで実に5ヶ月間、11試合に渡って未勝利(5分6敗6得点13失点)となります。得点が取れない試合が続いたことも多く、第13節〜第18節途中までの3試合半、約409分間(約4.5試合分/映画『デビルマン』に換算すると約3.7本分)に渡って無得点ということもありました。

伝説の長時間虚無映画『サタンタンゴ』の上映時間には届かなくて一安心でした。

ホームでまったく勝てない理由については選手たちも首をひねるばかりで、城福浩監督もゲン担ぎで「パンツの色を変えてみようかな」と発言されていました。

この時の試合も結局勝てなかったけど。

ホームで弱々になってしまう反面、アウェイでは非常に強いチームでした。
4月16日第10節のジェフユナイテッド千葉戦で敗れたのを最後に7連勝を含む11勝4分で最終節まで無敗街道を邁進。シーズンを通して見ても13勝4分3敗と大きく勝ち越しを果たします。
成績はいいはずなのにホームでは全然勝てていないし、特に夏場は内容的にも厳しいサッカーをしていたので、この時期は(なんで僕たち昇格争いに関われているん…?)という疑問を抱えながら重い足取りで毎試合味の素スタジアムを後にしていたものです。

結局昇格は叶いましたし、シーズン終盤のホームゲームは見ている者の人生を狂わせるには十分なものばかりだったので、外弁慶化は笑い話で済ませられます。ただ2024年は、目標達成のためにも、増えていくであろうご新規層をつなぎとめるためにも、ホームでの苦行はもうちょっとだけお手柔らかにお願いできればなと思います。

#ヴェルディ徒歩部

ホームで勝てない時期が続いていた頃、一部のヴェルディサポーターの間で奇異な行動が発生します。試合後に徒歩で帰宅することで禊を祓い、次のホームゲームでの勝利を願うというものです。

いつしか「#ヴェルディ徒歩部」というハッシュタグも生まれ、だんだんと禊祓いだけでなく、勝利した試合後に歓喜ウォークをする方も。

そもそもはヴェルディvs水戸ホーリーホックの試合に合わせて、水戸のホームスタジアム・ケーズデンキスタジアム水戸〜味の素スタジアム間を踏破して梯子観戦するというクレイジーな企画を見事完遂したヴェルディサポーターの方に乗っかった形ですが、少しずつ少しずつ歩く輪が広がり、観測する限り部員数は10人弱くらいに達しているような気がします。

個人的にももともと歩くのが好きで、味スタから歩いて帰宅することもあったのですが、色んな方の徒歩具合を見るのは楽しいので、少しずつ部員が増えていくと嬉しい限りです。

昇格を決めた後のウイニングウォークは楽しかったなー。

なお、今後ヴェルディ徒歩部に入部したいと考える方がいましたら、是非ともJリーグウォーキングアプリにも登録してみてください。アプリ内のヴェルディはJFL降格危機レベルにあるので。

DLしたら定期的にアプリを立ち上げよう

▼iOS版

▼Android版

強力なサポーターの登場

6月、意外なところから唐突に強力なヴェルディサポーターが増えます。SNSでも人気を博すティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使が、ご自身のTwitterアカウントで幼い頃ヴェルディファンだったことを明かしたのです。

このツイートに多くのヴェルディサポーターが色めき立ち、「大使を味スタにお呼びしよう」の大号令が起こります。そしてヴェルディ公式もしっかりと反応。実際に7月5日のV・ファーレン長崎戦で観戦しにいらっしゃってくれました。

さらには12月2日のPO決勝戦もお越しになり、J1昇格を後押ししてくれました。

レジャバ大使のような方がヴェルディを特別な存在と言ってくれたことも嬉しいのですが、長年SNSに強くなかったヴェルディ公式がこうしたチャンスにしっかりと反応し、形に繋げたことも嬉しく思えました。

2024年は注目度が上がるだけに、「実はヴェルディが好きだった」と口にしてくれる著名人も増えるかもしれません。その際には、無理のない範囲でヴェルディ公式に頑張ってもらいたいものです。

ピッチサイド見学の人々にサインボール絶対渡す部

ヴェルディでは選手たちが試合前にウォーミングアップに入る際、サインボールを観客に投げ込みます。通常は
ゴール裏に挨拶→ゴール裏にサインボールを投げ込む→ピッチに入りメイン&バックに挨拶
という流れになりますが、今年から何人かの選手たちがピッチサイドで見学する人々にサインボールを渡すという動きが見られました(もしかするともっと以前からやっていたかもしれませんが)。

僕が見ていた中では、染野唯月選手を筆頭に、杉本竜士選手、綱島悠斗選手、森田晃樹選手、林尚輝選手、山田剛綺選手などがウォーミングアップ見学するサポーター、特に子どもたちに対してサインボールを渡していました。

この行動はとても些細ですが、個人的に強く印象に残っています。ピッチサイドのような特別な雰囲気を味わえる場所で選手たちからサインボールをもらえるという無二の体験を提供できることは、地道ではあるものの重要なサービスになるのはずたからです。クラブとしてはコストも掛からないことですので、是非今後も継続的に行ってもらいたいものです。

別の角度から同じシーンを見ていたけど、この子本当にめちゃくちゃいい表情してたなー。

新婚ラッシュ

今年のヴェルディはなぜか新婚さんが続々と生まれました。
9月4日に森田晃樹選手が入籍を発表すると、1週間後の9月11日には加藤蓮選手も入籍を発表。さらにその翌日には染野唯月選手も入籍をします。

森田選手と加藤選手の入籍報告は、ユニフォーム姿の写真も相まってヴェルディサポーター以外にも話題になりました。

これ系のウエディングフォトって誰が最初なんでしょうかね?ヴェルディの場合は2022年に入籍を発表した井出遥也選手(現・ヴィッセル神戸)が先駆けだと思いますが。

9月24日の藤枝MYFC戦では森田選手、染野選手が立て続けに得点を決めたので「これで蓮君が決めたら新婚ビンゴだぜ!」とも思いましたが、惜しいシーンはあったものの得点はならずでした。

2点目までは新婚パワーを感じた
蓮君も惜しいシーンがあったのだが

来年は新婚3選手揃ってのゴール、そして皆で稲城に家を買ってくれることを期待したいところです。

メシアヒカル

7月21日にセレッソ大阪から期限付き移籍で加入した中原輝選手。その2日後に行われた第27節ベガルタ仙台戦では早速スタメン出場し、先制ゴールをはじめすべてのゴールに絡む大活躍。鮮烈的なデビューで一気にヴェルディサポーターのハートを鷲掴みにしました。

その後も出色の活躍を見せた中原選手。特に第39節ジェフユナイテッド千葉戦〜PO決勝清水エスパルス戦までの6試合では数々の決定的なプレーを見せます。11月5日の第41節栃木SC戦でチームの窮地を救ったフリーキックは、11月のJ2月間ベストゴールにも選出されるほどの美しさでした。

この活躍に対してエルゴラッソが「メシアヒカル」のニックネームを授けると、一気にサポーターにも浸透。文字通り救世主としてヴェルディをJ1に導いてくれました。

https://twitter.com/EG_spy/status/1721475260846149682

個人的には、数々のゴールもさることながら、プレーオフ準決勝の千葉戦で田中和樹選手を吹っ飛ばしていたシーンが非常に印象的でした。

グイッと身体を入れて
バシッと弾き飛ばす

これを書いている時点では来季の去就はまだわかっていません。保有元のセレッソ大阪に戻るという報道もあれば、サガン鳥栖が獲得するというニュースもありました。
メシアは次に誰を救いに行くのでしょうか。できることなら、来年以降も僕たちの救世主として在り続けてもらいたいものですが。

それにしても中原チャントは妙な中毒性がある。

ヴィド神様

「やられた」と思ったシュートでも防ぎ、ビルドアップの起点となり、ブチギレながら周りを鼓舞し、好セービングや味方が得点を決めた際には「フォーウ!!!」と全身で喜びを露わにするマテウス・ヴィドット選手。2023年もチームを救うプレーを見せる度に「ヴィド神」「マテ神」と称され、数多くのヴェルディサポーターからの信仰を集めました。

パッと思い出すだけでも、第14節V・ファーレン長崎戦でフアンマ選手のヘディングを片手ではじき出したプレー、第18節いわきFC戦でPKを止めたプレー、第20節ファジアーノ岡山戦でチアゴ・アウベス選手との1対1を顔面で防いだプレー、第39節ジェフユナイテッド千葉戦で反撃の狼煙を上げるPKストップ、同じく千葉とのプレーオフ準決勝で呉屋大翔選手との1対1を制したプレーなど、勝ち点に直結する数々のビッグセーブが思い浮かびます。宮原和也選手と共にシーズンMVPに値する存在だったでしょう。

そんなヴィド選手ですが、今年はフルタイム出場を果たし、ヴェルディでのリーグ戦通算出場試合数を133試合にまで伸ばしました。これまでヴェルディの外国人選手の出場試合数ランキング1位は、90年代に活躍したビスマルク選手の137試合です。ヴィド選手が契約更新すれば、この記録を更新することは確実です。

名実共にヴェルディの神となった暁には、よみうりランドにヴィド神様の銅像を建立しましょう。

今年はヴェルディの試合開催時に写真を撮るようになったのですが、相手ゴールに向かって攻める際にはほとんどヴィド選手だけを狙っていました。

ブチギレヴィド
しょんぼりヴィド
味方がチャンスを逃してギュッとなるヴィド
勝利後にはめちゃくちゃ爽やかにサムズアップ
通訳の岩打弦大さんとのイチャイチャも見所です
ヴィド神様のガッツポーズを見ろ
フォーウ!!!
プレーオフでPKを獲得した直後には情緒がぶっ壊れることも
昇格決定直後のボールパーソンたちとの歓喜具合は一生忘れないでしょう

ヴィド撮るのめっちゃ楽しい。

ありがとー!マジでありがとー!マジでー!

自動昇格に向けて一つも負けられない状況にあった第41節の栃木SC戦。ヴェルディは立ち上がりから栃木のタイトな守備と鋭いカウンターに苦しみます。ついには前半42分に深澤大輝選手が2枚目のイエローカードを受けて退場。試合の半分を10人で戦うことを強いられました。

許しを請うも、許容もなく慈悲もなく

その後、数的不利の中でも耐え抜き、中原輝選手のビューティフルフリーキックで薄氷を踏む勝利を得て自動昇格に首の皮一枚つなげましたが、この劇的勝利と同じくらい印象的だったのが、試合後のインタビューです。

涙を流して安堵しながら「終わったと思った人生」と語り、中原選手のインタビューに乱入して「ありがとー!マジでありがとー!マジでー!」と叫ぶする深澤選手の姿は笑いと涙を誘いました。
勝ったから言えることでもありますが、こうやって喜怒哀楽が見えるシーンは本当にいいですよね。

それにしても1人の青年の人生を救った中原輝、やはりメシアとしか言いようがない。

プレーオフでの一悶着

最終節の結果によって、ヴェルディは3位で昇格プレーオフに臨むことになります。最後のJ1昇格争いに参加チームのサポーターが盛り上がる中、ちょっとした諍いも起こりました。

準決勝のジェフユナイテッド千葉戦では、味の素スタジアムの屋根のガラスの不具合によってアウェイ側ゴール裏が分断されたこと、アウェイサポーターの席を絞っていたこと、試合前日のシート貼りの際にヴェルディのスタッフがいなかった(もともとスタッフが案内するようなアナウンスはしていなかったのですが…)ことなどにより、SNSを中心に一悶着が起こりました。

決勝戦の清水エスパルス戦でも、アウェイ側の席数についてや、アウェイ側のコレオを禁止していたことなどについて、ヴェルディ側を非難する声が一定数見られました。

いずれの試合も言いがかりも甚だしいものであったと思いますし、文章を「読めない」「読まない」「読んだ上で理解できない・しようとしない」「敢えて曲解する」人の多さには辟易しました。
ただ、逆の立場であればヴェルディ側にも制限が加えられたはずで、そうなるとヴェルディサポーター側にも一定数クレーマーのように振る舞ってしまった人も出ていたことでしょう。
そう考えると、「千葉サポーターが」「清水サポーターが」という話ではなく、「人間の集団には一定数しんどい人たちがいる」ということを改めて感じさせてくれた出来事でもありました。

城福監督のビラ配り

プレーオフに向けてクラブやサポーターが一丸となって盛り上げようとする中で、大きく話題となったのが城福浩監督自らがビラ配りに参加したことでした。

"当初は行くつもりはなかったけど、現場もフロントやれることをやるべきだと考えた末に行動した"(意訳)ということで、これを知ったヴェルディサポーターの士気は大いに高まりました。

どこまで計算しているのかはわかりませんが、城福監督はこうした人の心を打つ勘所を押さえている指揮官でもあります。2023シーズンは、そのことを強く感じた一年でもありました。

悲願の昇格とその代償

ここまでに紹介した様々な出来事を経て、2023年12月2日、ついにヴェルディはJ1昇格を成し遂げます。
当日の感想や思いについては以下に記しましたが、サッカーの残酷さと美しさを感じさせてくれた1日でした。

それから何日か経ち、よくも悪くも「昇格した」ことを知らしめられていきます。
最初にインパクトをもたらしたのは選手の入れ替えです。プレーオフ決勝から5日後の12月7日、2018年の加入以降、"やるべきことをやる"を体現するプレーでチームを支えてきた奈良輪雄太選手が引退を表明します。

コメントを読むと、現役続行の意思はありながらもクラブから契約満了を言い渡されたことが伺えました。

さらに同じ日、長らくヴェルディの顔役としてピッチ内外でチームを、そしてサポーターを支えてくれた"コイカジ"こと小池純輝選手、梶川諒太選手の契約満了が発表されます。

いずれも非常に人気のある選手だっただけにヴェルディサポーターたちは阿鼻叫喚の様子でしたが、それと同時に「ヴェルディがJ1に定着し、より上のレベルに到達するには受け入れなければならない」という空気も流れていたかと思います。
どうしてもJ1に一緒に行きたかった3人は、本当に僕たちをJ1に連れて行ってくれましたが、その代償として彼らと別れなければならないのはまさに身を切られる思いです。2024年は、この判断が間違いではなかったことを証明する1年にもなります。

悲しい別れとは正反対の方向で昇格を実感したこともあります。長年に渡って切磋琢磨してきたJ2クラブの主力選手を引き抜く行為を展開していったです。
まずは12月14日にジェフユナイテッド千葉から見木友哉選手を獲得します。

さらに12月22日には、いわきFCから永井颯太選手と河村匠選手、大宮アルディージャから袴田裕太郎選手を獲得。

これまでのヴェルディと言えば「期待の若手を引き抜かれるクラブ」の代名詞のようになっているところもありましたので、J1に昇格した途端こんなにもド畜生補強ができるようになるなんて思ってもいませんでした。
もちろん、引き抜かれる側の痛みは十二分にわかっているつもりなのですが、それと同時に(ヒキヌクノタノシイ‥‥オデ モットヒキヌキタイ‥)と、心の中のモンスターが後ろ暗い恍惚感を抱いてもいます。

補強以外にも昇格を実感させられることはあります。これまで売り切れることなどなかったファンクラブ会員の枠が発売から数時間で即完状態になったのです。

そもそもファンクラブに定員があったのも知らなかったので僕自身も買いそびれてしまいました。これに関して個人的にはクラブに対する不満はまったくありませんが、長年J2の牧歌的な空気に慣れ親しんできたことを改めて感じさせられました。嬉しい悲鳴ではありますが、今後はチケット周りや販売数に限りのあるグッズなどには注意が必要になってくるかもしれません。

終わりに

以上で個人的な2023年シーズンの振り返りは終わりです。
本当にいろんなことがありました。ホームゲームで勝てない時期の負の感情も未だに残っているので、(なんで今年昇格できたんだろうなあ……)という気持ちが心の隅にはあります。

それに、正直なところ、J1に対する恐怖心もあります。昇格したからと言っても決して潤沢な資金を持っているわけではないヴェルディにとって、これまで以上に強い相手と戦わなければならないJ1は楽しさよりも苦しさや悔しさの方が多いかもしれません。
「J1昇格やったぜ!俺たちの戦いはこれからだ!」で終われたらある意味ハッピーエンドなのですが、そういうわけにはいかないのが人生です。
それでも、2023年のヴェルディは何度も絶望的な場面に直面しながらも、少しずつ少しずつ成長する姿を見せてくれました。そのことを思い返すと恐怖心は薄れ、期待感が湧き上がりもします。
行きたくて行きたくて仕方なかった世界に連れて行ってくれる選手やスタッフの皆さんに改めて感謝しながら、2024年の開幕戦を指折り数えて待ちましょう。

兎にも角にも行くぜJ1!
フォーウ!!!

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