スクリーンショット_2019-05-26_14

メディアの“らしさ”はどう作る? ファンを惹きつける「サイボウズ式」に学ぶ、 愛されメディアの運用術。

先日「ライター・編集歴 2.5ヶ月目に読んでおきたい、 新R25から学ぶ「読まれる編集術」。」と題してnoteを書いたところ、新R25を運営されている方々にもご覧いただき、「参考になりました」とのお声をいただきました!

ツイッターでも リツイート や いいね をいただいたのですが、そのなかでこんなお声もいただきました。

めちゃ嬉しかったので、今回さっそく他メディアさんver.を作ってみました!

この記事では、日頃他社様のメディアを一人の読者として、また一人の編集者として拝見する中で発見した “独自の編集術・制作術” をご紹介しています。制作者の努力や心配り・気配りにリスペクトを込めて、書かせていただきます。

* 執筆者について *
経営者取材を1500以上行ってきた経営者プラットフォーム「ONLYSTORY」を運営する株式会社オンリーストーリーで編集業務に従事。企業価値を明文化・冊子化して経営課題の解決に役立てていただくサービス「OURSTORY」の編集長 / PdMを務める。当社に出会う前は、リヤカーを引いて旅をしていた経歴も…。


今回題材にさせていただくのは、2012年から「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトとして運営をされている「サイボウズ式」さん(以下、サイボウズ式と書かせていただきます)。

分析視点で「なぜ、サイボウズ式が読まれるのか?」と考えてみると、愛されるメディアを作り、運用するにあたって欠かすことができない運用術・コンテンツ制作術を発見しました!


①日頃言えないモヤモヤを捉えた企画

まず、サイボウズ式といえば読者とのつながりが濃く、ファンが多い印象があります。その盛り上がりは、サイボウズ式編集部と読者が集まって「サイボウズ第2編集部」なるものが結成されるほど。

なぜ、サイボウズ式はこれほどまでに愛されているのか。その訳を探ってみると、記事上、サイト上から幾つかの工夫と傾向が読み取れました!


まず、着目すべきはそれぞれの企画の傾向です。記事のタイトルを眺めながらそれぞれの記事のテーマや企画概要を見ていくと、2つの共通点を発見!

まず、1つ目が「みんな心のなかでは思ってるけど聞けない、言えないことに切り込んでいる」点です。

例えば、こちらの2つをご覧ください。

読者層の心の中を察し、「本当はみんなこういうこと思ってるけど言えなくて(聞けなくて)モヤモヤしてるんじゃない?」という視点で企画を立てていらっしゃるのではないかと思います。読者としては、「そうそう!それが気になってたの!どれどれ…?(クリック)」となるわけですね。

日頃から読者と深く関わり、理解しあい、コミュニケーションをとっているサイボウズ式。読者の心中を察する精度は、他メディアと並んだ時に頭一つ抜けた存在と言えるでしょう。

なぜなら、読者との関係性を構築できていると読者は心を開いてくれますし、そうするとコミュニケーションの節々にインサイト的なものが垣間見えるはず。もしかしたら、「今度こんな企画をやるんですが、どう思いますか?」なんていう事前調査もなさっているかも…?


②自社の体験×社員の言葉=オリジナル

サイボウズ式記事の企画の多くに見られた2つ目の共通点は、「自社独自の体験が溶けこんでいる」点です。

こちらも、3つの記事を例に見てみましょう。

この3つに共通するところは、「自社の体験をコンテンツ化していること」。株主総会の様子や制度廃止、働き方などについて、自社で起こった出来事をそれぞれコンテンツ化していますよね。サイボウズという会社を舞台に、様々なコンテンツが日々生まれていっている様子が伺えます。

とはいえ、もしもサイボウズと同じフェーズ、同じ業界で、同じくらいのコンテンツ制作リソースを持っている会社が他にあったら、自社の体験をコンテンツ化するだけでは独自性で差別化することはできなくなる。

そこで、合わせて着目すべきは、自社の体験を、サイボウズ視点で、 “社員が語っている” 点。サイボウズ式は、社長や副社長、部長、社員、インターン生までも巻き込んで、自社の体験を、サイボウズという会社の理念やスタンスをまとった自社の社員が、その人の言葉で伝えていくことで唯一無二のオリジナル性を構築しているように感じます。

また、このオリジナル性を軸に、統一された姿勢と視点で記事を制作しているため、制作される記事同士のシナジー性も高く、1記事の中で複数の過去記事が登場する場面がよく見られます。これによって、回遊率も高くなっているのではないかと思います。

※ 運営視点に立ってみると、「副社長、部長、インターン生まで、こんなに社内の人が時間を使って協力してくれるなんてすごいな。」と思います。きっと編集部のみなさんが様々な工夫をしながら、社内をうまく巻き込んでいるのだと思います。


③メディアとしての“らしさ”の統一

サイボウズ式が多くのファンの心を掴んでいる大きな要因は、まさにこれまでに挙げた独自「企画力」と「オリジナル性」だと感じています。

その上で、もう1つ最後に着目したいのが「サイボウズ式というメディアの“らしさ”」。“らしさ”というのは人に向けて使われることが多かった言葉ですが、近年メディアや会社に向けてもよく使われるようになりました。

人の“らしさ”は外見や言動、性格、考え方などの要素によって複合的に構成されていて、他人とのコミュニケーションの中でそれらを表現することで、相手の中にその人の“らしさ”が形成されます。それは、メディアも同じ。伝わらなければ、“らしさ”は作れません。


メディアの場合、“らしさ”を形成するために必要な要素は大きく2つ。1つ目が、色味やサイトデザイン、フォントなどによって直感的に伝わる外面の印象です。

2つ目が、企画の切り口や言葉選び、文章、メッセージなどの傾向によって伝わる内面の印象。

※参考文献
ダニエル・カーネマン氏の著書『ファスト&スロー』

サイボウズ式はこの2つの印象に気を配り、“らしさ”を形成しているように感じます。そのために、おそらく編集部では「サイボウズ式は誰のために、なんのために存在するのか?」というところをシンプルになるまで突き詰めてこられたのではないでしょうか。

そこが決まれば、あとはその土台となる指針に沿って印象を形成していく、もしくはその指針に沿って選択していったものが積み立てられて印象が形成されていきます。一方で、指針がないまま運営しているとコンテンツごとに印象が異なるものになるため、どれだけ時間とお金をかけてもなかなか“らしさ”として認知してもらえる印象が形成されません。

とはいえ、こうした指針は自社のカラーとの整合性や作り手自身の興味・関心等と向き合いながら、客観と主観を何度も行き来しながらできあがっていくため、1日、2日で仕上がるものではない。

その背景と積み上げてこられたであろうものを想像すると、サイボウズ式というメディアがこれほど愛されているのも納得です!


おまけ

最後に、個人的にサイボウズ式の好きな点を1つ挙げさせていただくと、文末に作り手の顔が見える自己紹介欄が設けられていることです。加えて、サイトのメンバー紹介欄にもコアメンバー含め、フリーランスのメンバーも顔写真と名前、経歴、SNSリンク等が公開されています。

「執筆=◯◯・撮影=◯◯」と書かれているのがもっとも多いパターンかと思いますが、ここまで綺麗な写真があって、経歴や自己紹介文まで見れるのは他にあまりないと思います。

ここから記事を読んだ他メディアの人とフリーランスメンバーとの間で「仕事を依頼してみよう」というコミュニケーションが生まれる可能性もありそうだし、個人と会社がゆるく繋がって働く在り方に惹かれる人もいそう。


まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。

今回は、まさに現代の愛されメディアの代名詞的存在「サイボウズ式」を取り上げ、愛されメディアの運用術を学びました。

①日頃言えないモヤモヤを捉えた企画
②自社の体験×社員の言葉=オリジナル
③メディアとしての“らしさ”の統一

これまでずっと言及してきたところですが、サイボウズ式というメディアには独自の切り口やスタイル、雰囲気があり、「らしさ」「ぽさ」があります。そして、それらはサイボウズという会社のスタンスやカラーとマッチしている。サイボウズという会社を知ってからサイボウズ式を見た人も、サイボウズ式を知ってからサイボウズという会社を知った人でも、受け取る印象にズレがないほど整合性の取れた設計が整えられていると感じます。

まさに、愛されるべくして愛されたメディア。


今後、商品・サービスを知ってもらう入り口としてのオウンドメディア運営や自社顧客のコミュニティ化を目指しておられる方がいらっしゃれば、ぜひサイボウズ式の取り組みを参考にしてみてはいかがでしょうか!


Back Issues 💻



この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?