マガジンのカバー画像

メディアの話。

189
メディアの話を、します。
運営しているクリエイター

記事一覧

メディアの話 オッペンハイマーと浮世離れとトムとジェリーと戦争の匂いと。

最初から最後まで

戦争の空気がゼロ。

全く匂わない。

戦争にまつわる映画を見たはずなのに。

戦争の匂いの不在。

それが見た後に気づいたこと。

研究室と、不倫セックスと、荒野の馬と、砂漠に突然できた住宅街と、

その先の実験場と、おっさんが集まってひたすら喋る密室と。

情報ゼロで見たら、戦争と関連する映画だと思わないかもしれない。

日本の戦時中映画、ドイツの戦時中映画を作ったら、戦争

もっとみる

メディアの話 マンガと漫画家の出身地と売り上げと「地図」と。

こちらのサイトに、漫画の歴代売り上げランキングが載っている。

で、売れっ子漫画家の出身地を調べてみた。

パッとみた時に、思いませんか?

そう、地方出身者が目立つ。ような気がする。

じゃあカウントしてみよう。
東京出身者が関わっている漫画が何作品あるか。
100位中10.5作品(原作・作画で分かれている場合は0.5、生まれが東京だが育ちが別の場合も0.5 でカウント)である。
東京都の人口は

もっとみる

メディアの話 テイラー.スイフトと違和感と。

テイラー・スイフトが妙に気にかかっていた。

日本における、テイラー・スイフトのニュースの作られ方が、なんとなく引っかかっていたのだ。

曲以上に、彼女自身そして彼女の物語の方が圧倒的に前に出る。

これは、洋楽がかからなくなった日本の音楽環境によるものなのか。

とも思ったのだ。

が、ネットフリックスの「ミス・アメリカーナ」を見て、むしろ、アメリカでこそ彼女の「物語」は過剰なまでに共有されてい

もっとみる
メディアの話。トイレがメディアになる時。

メディアの話。トイレがメディアになる時。

今年の1月2日。

パーフェクトデイズ、2回目見たら、辛抱たまらず、17トイレ、全部見学に。

そして、平山さんにも遭遇しました。

なんと、冒頭のトイレで。

渋谷の公共トイレは、渋谷の公園や駅などとセットに作られているのだけど、結果、渋谷の地形とトイレの位置との関係が実におもしろい。

渋谷区は、渋谷川の複雑な支流と、玉川上水三田上水の尾根の水の流れとが組み合わさった、小流域源流の織りなす山と

もっとみる
メディアの話。パーフェクトデイズとその他色々。

メディアの話。パーフェクトデイズとその他色々。

で、「パーフェクトデイズ」である。

あの映画は、全くもってパーフェクトでない男の話である。

だから面白い。

すでに3回みてしまった。

まず、冒頭のたった10分強で、主人公のキャラクターを「アクションだけ」で観客に教えてくれる。

「ダーティハリー」みたいだ。

主人公が寡黙なプロってところも含めて。

この世界における神様はスカイツリーだ。

物語は常にスカイツリーの視座から見渡せる東京の

もっとみる

メディアの話。なぜ麻布台ヒルズにはドローン発着場がないのか。

私たちはなぜ「交通の未来」を予測できないのか。

あるいは「交通の未来」を前提として、都市開発ができないのか。

ということにずっと興味がある。

情報系の変化に関する未来については、SFから未来予測までさんざんやられている。

でも、交通や物流の革新によって、どんな「未来の街」が具体的に生まれるか、ってことについては、案外予測ができない。

現在の巨大ビル開発。

あれは「投資」という「お金=情

もっとみる

メディアの話 ドラえもんとサザエさんの世界に「老人」がいない理由

「サザエさん」と「ドラえもん」の日常にないひと。それは「現代の老人」である。

「サザエさん」の老人は、60歳のいささか先生、54歳の波平と50歳の舟、である。

今年60歳の私は、もはや波平よりいささか先生に近い。サザエさんワールドでは、老人である。

核家族世帯の住宅街の話である「ドラえもん」には、そもそもおじいちゃんおばあちゃんはレギュラーで存在しない(たぶん)。

親は全員30代だ(おそら

もっとみる
メディアの話 魔女=狩猟採集民。「魔女の宅急便」のキキと人間の子供の進化生物学。

メディアの話 魔女=狩猟採集民。「魔女の宅急便」のキキと人間の子供の進化生物学。

『魔女の宅急便』をみてて初めて気づいた。

これは、女の子のスタンド・バイ・ミーだ。

大人になる直前の女の子が、遠くに冒険に出て、大人になろうとする。

主人公のキキは13歳だ。

旅立つまでに箒に乗る魔女の訓練を身につける。

彼女の遊び場は野原や森の上だ。相棒は猫のジジ。

動物のジジと自由に会話ができる。

13歳になると、一人前の魔女として旅立つ。

親元を離れ、別の遠くの街へ。

丁稚

もっとみる

メディアの話。人気曲というミームがコマーシャルからアニメに移ったわけ。

今のコマーシャルは替え歌と懐メロしかない。

1970年代から80年代にかけて、コマソンは歌手の登竜門であり、ヒットの源泉であった。ようつべに挙げられている多数のコマーシャル動画の数がそれを象徴している。

なぜそうなったか。

インターネットのせいである。

広告の方法論が変わった。

広告は、特定の顧客データベースに最短でアクセスすることが目的化した。

その時点でもうクリエイティブはいらない

もっとみる

メディアの話。飛行機とペットと。

たった1月前のニュースなのに、2月2週目にしてSNS上でもメディア上でもほとんど見かけなくなってしまった羽田における飛行機事故。

あの飛行機事故で、なぜかクローズアップされたのが飛行機に置き去りにされたペットの話だった。

かわいそうに。

と、同情する。

可哀想だと思うし、飼い主も辛いだろう。

当事者の感情に寄り添ってあげることはとっても重要だ。

ただし、それだけでいい。

その後の議論

もっとみる
メディアの話  私たちはなぜ未来の「どこにいるのか」と「どう移動するのか」を想像できないのか?

メディアの話 私たちはなぜ未来の「どこにいるのか」と「どう移動するのか」を想像できないのか?

先日大学の「未来」についてのワークショップにずっと出ていたんだけど、そのとき気づいた。

このワークショップでは2018年から19年のコロナ前に、みんなで考えた2040年の未来を考えた。

リモートワークやワーケーションや生成AIの普及なんかを予想していて、これが20年後どころか1年後に予想が的中して、「シン・インターネット」で村井純さんに取り上げられたりした。

が、今回当時予想した未来図を並べ

もっとみる

メディアの話。アニメと漫画と上京物語と。

「ファースト・スラムダンク」を昨年12月頭に見て、ネットで「呪術廻戦ゼロ」を見て、さらに「チェンソーマン」を見て、気づいたことがある。

20数年前に終わった「スラダン」の新作映画も、2010年代終わりに始まった「呪術廻戦」も「チェンソーマン」も、全く同じ構造を有していることに。

何か?

田舎から這い上がる話なのだ。

「鬼滅の刃」も、「田舎」から出てくる話だった。

「ハンターハンター」もそ

もっとみる

メディアの話 176 ドラえもんとマクルーハンとこち亀の両さんと

メディアとは、人類の身体の拡張である、とマーシャル・マクルーハンは言った。

これを言い換えると、人間の欲望の拡張が、メディアである、ってことになる。

では、人類のメディア的欲望とはなにか。

究極にはこれ。

時空を支配することである。

過去も未来も好きな時間に行くことができる。

あらゆる場所に一瞬に行くことができる。

つまり、ドラえもんである。

ドラえもんは、史上最高のSFであり、史

もっとみる