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フランスからマンガの専門学校について考える3

そういうわけで帰国しましたが、この講座を受け持ったのはボクにとっても勉強になりました。それも大変に。
ボクは日本の漫画の専門学校では通常ないような授業をやっている自信があります。

例えば「アナリシス」。チームに分かれて担当した作品を褒め、相手の作品の悪いところをあげていくという授業。本心とは関係なく議論のために作品を見ていく必要があります。そう、アメリカなんかのディベートの手法を取り入れた講座です。普段クラスメートに訊いても「ああ、いいんじゃない」と曖昧な返事を返したがるものですが、この授業の時は無理にでも悪いところをあげる。
難しいのは授業後、平常時にその時の発言を持ち出さない、逆に平常時の感情をもちこまないという約束です。発案してから実施できる学年を見つけるまで三年かかりました。

これをフランスではごく普通に授業中にやっちゃうんですよね。お国柄の違いってあるなあとビックリ。
それから授業の評価が非常に具合的で厳しい。日本の大学で授業アンケートをとって教員の評定にしてますけど、あんなお茶を濁すものではないです。本人(教員ですね)に向かってまっすぐぶつけてくる。いやぁ緊張しました。なにげなく感想をきいたつもりだったのに。

今回は評判も良く終われました。理由は以下の三つと思われます。
①材料を「コマの機能」にしぼったこと
②全授業内容を決め、レジュメを練り込んでおいたこと
③それも現場で柔軟に変更したこと

日々の授業運営でも同じだなあ、これは。と、改めて自戒。
中島先生が普段教えてられる授業内容の高さと、フランス独特の学生の突っ込み加減を考えると、5年後くらいにはかなりレベルの高い学校…日本の大学なんかと比べてもですよ…になる気がします。

ちなみに今回のボクの講義内容レジュメは以下のようなものです。学生と一緒に非常に完成度の高い授業にできたと自慢したいです。あ、しちゃった。

1 コマについての基礎知識(3日)
ⅰ戦後日本マンガのコマ割の仕方の変遷ざっくり

ⅱコマの意味
ⅲコマの連続
ⅳコマの出入り

2 コマに何を入れるか(基礎知識)
ⅴ 人の目+脳のいろいろな癖を知っておく
ⅵ 種々な遠近法を知る
ⅶ コマを連続させるしりとり作戦
ⅷ 講義内容をつかって課題を実制作

3 コマの中に何をいれる(バンデシネと比較しながら)(2日)
ⅸ 心情
ⅹ 体感時間
ⅺ 変形ごまについて

4 シーンとしての情報量コントロール(講義) (1日もしくは四分の三日)
ⅹⅲ  ある程度長さのある読み切りをつくる場合

5 印象深いシーンをつくる(2日もしくは2日+四分の一日)
ⅹⅳ 情報をシーン全体でコントロールしていく
ⅹⅴ 講義内容をつかって課題を実制作

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