金々先生栄花夢

フランスからマンガの専門学校について考える2

EIMAは三年制の学校ですが、遠くない先に四年制に移行したいらしいです。何故か。
漫画の修行期間として三年は短すぎるから、という理由だそうです。
この学校では二年まではペンの遣い方、漫画の歴史知識、それも含めて日本美術史などを勉強して、本格的に作品をこしらえて売り込むのは三年生になってから…という方針だそうです。
ボクはこれを聞いて何度も思い返して、そのたびに胸が詰まるような思いを感じるのです。大学の研究ならまだしも、漫画を日本美術の流れの一つとしてみる日本の漫画専門学校があるだろうか…と。
そこまでやるものだろうか…と。

ここにはフランスの教育スタイルの影響があるでしょう。学生から講義中にこう言う意見が出ました。
「日本人は漫画の最後を幸せにしたがる。読者の方を見過ぎじゃないか?」
と。
「文学を習ったときに自分の見解を出すのが大切と習った。漫画も同じではないか」

さ、ボクはどうやって答えたでしょうか。こういうふうでした。
「君たちは1968年のアルジェ動乱については習いましたか?
 習ってますね。
 日本人ではアルジェ動乱もマルチン・ルーサー・キングの貧者の行進も日本国内の安保動乱も習いません。それは政府の教育方針によるそうです。
 かつて1970年代は政治的な漫画というのは日本にもたくさんありました。そののち、経済成長と停滞を通して、日本の娯楽は政治的な見解を出さなくなったのはその通りです」
「フランスでは人の生きづらさを描いた漫画が人気です。『ベルセルク』とか『進撃の巨人』とか」
「それらの漫画が人の幸せについて語るか語らないかは終わってみないとわかりませんが、日本でも漫画が政治的であってもいいとボクは思います」
これが23,4の男の子との会話です。どんだけ手強いか!

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