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Red Hot Chili Peppers @Tokyo Dome

2023.02.19

John Frusciante再復帰後初のジャパンツアー。

個人的にはレッチリは全ての音楽を聴くに至った原点のようなバンドで、大切であることは間違い無いんですが、それでも「今、観るべきなのか?」と開演前はほんのり思っていました。
理由として、まずは去年出た2枚の新作が旧来のRHCP像を後追いしているだけで全然良いと感じられなかったこと。そして、それだったらもっと若いアーティストを推していったほうがシーン全体にとってもいいのでは、と思ったこと(正直、前日のFontaines D.C.東京公演のほうが遥かに行きたかった。こちらは育児の都合で行けず)。メンバーの年齢もそれなりだし、今回で観に行くのは最後にすべきかな…どうしようかな…と、ある意味「確認作業」に行くような気持ちで東京ドームに向かいました。

★のあたりが今回の席。

座席位置は1階3塁側でかなり横のほうでしたが、なんとスタンド一番前!ちょっとだけならフェンスに乗り出して観ることも出来る席。この割当ては、さすがにテンション上がります。

座ったときの目線。

どうせ結構押すだろうな…という会場全体の雰囲気をよそに、なんとまさかの17:30定刻に暗転。大音量のオープニングSEが鳴り出します。え?本当に出てくるの?え?え?と戸惑っていると、フリー、チャド、ジョンが本当に本当に登場。ハードなジャムで、ドームをライブの空気に一変させます。

1曲目は「Can't Stop」。「Around The World」でもよかったし、直前のシンガポール公演が「Fake as Fu@k」始まりだったのでそれも面白いかも?と思っていましたが、やはり定番曲はしっかり期待に応えてくれます。シンプルに嬉しい。泣けます。

伸び伸びとした「The Zephyr Song」のあと、新作群からの第一弾である「Here Ever After」へ。しかし最初からメンバー間のリズムが合っておらず、アンソニーは途中でつかえてしまう始末。今日、大丈夫?と一時不安になりますが、フロント3人でしっかり話をしてからの「Snow (Hey Oh)」と「Eddie」で完璧に持ち直します。アンソニーも元気にくるくる飛び回っていて元気そう。

特に「Eddie」はアウトロギターの凄まじさで元から人気が高い楽曲でしたが、この日も凄まじかった。高音域に持っていく流れは天をつんざく勢い。John Frusciante復帰!を強く実感した瞬間でした。一方で楽曲全体にはEddie Van Halen追悼のムードも漂っていて、ライブで聴くと更に沁みる、更に好きになる一曲です。

フリーの日本の朝飯やべえトークも挟みつつ、序盤にくるとは思わなかった「Suck My Kiss」と「Reach Out」。Suck〜はどっしりとしていて、今のバンドのキャリアに丁度いいプレイ。「Reach Out」もあまりやってきていない割にはしっかりした演奏だなあと思いました。が、新曲あるあるですがトイレ休憩タイムに使うと思しき方が多数アリーナを出ていってました。ちょっと勿体無いなあ。とか言いつつ、名曲の評がありつつ個人的に思い入れのない「Soul To Squeeze」は自分もトイレ休憩にしてしまいましたが(苦笑)。

再びフリーのトークタイム。曰く、遅い曲を研究しまくったからめちゃくちゃ遅い曲やるぜ、という明らかな前フリから「Nobody Weird Like Me」。もう高速スラップが始まった途端に爆笑です。最高最高。あとジョンのRHCPキャリアで最古の作品である『Mother's Milk』の曲がここに入ったことで、ジョンとRHCPの歴史を一晩でひと攫いできるセットリストになりました。感謝感謝。

続いてはアンソニーも含めたトライアングルからの「These Are The Ways」(ジョンがエフェクター踏み忘れ?で戻ったりしたため少し間が空いてた。この日はちょいちょいこういうシーンが有り。たぶん音作りこだわり過ぎてエフェクター増やし過ぎなんじゃないかと思う)。複数カメラを用いた映像はこの日ベストでしたが、なぜか終盤のギターがほとんど聴こえず。前出の「Here Ever After」に続き、この日は何故か『Unlimited Love』の曲が全然ダメでした。単に新しい曲に慣れてないだけ?とも思いましたが、『Return of the Dream Canteen』の曲はバッチリ仕上がっていたので本当に何故?という感じ。でもこういう、どこにどうなるか分からないバンドの感じが、RHCPのドラマチックさを高めているような気もします。

毎度お馴染みのアンソニーとフリーの会話トーク。2人にしか分からない話をしていることも多いのでここはちゃんと聞いていなかったのですが、後で聞いたらアンソニーが「観客がマスクしてて楽しんでるかなんてどうしたら分かるんだ?」とフリーに尋ねていたらしい。気になるのは分かるし、端的に口元を見てコミュニケートする欧米人と目元を見て感情を読む東洋人の違いが表れているだけではあるのですが、センシティブかもしれないことを率直に口にしちゃうアンソニーの天然っぷりが健在であることが確認できるシーンでした。人によってはうぎっと思った発言かもしれませんが、個人期には「本当変わらないね、アンソニー…」と思いました。この感覚は、2016年のフジロックで「Dream of a Samurai」をまともに歌えずマイク薙ぎ倒したのを見たとき以来。なんか懐かしい。

そしてやはり新しい曲なのに完璧に仕上がっていた「Tippa My Tongue」、この日唯一の『Californication』からの選曲だった「Californication」(大阪ではカリフォ曲が増えて枯れた感じが増すはず。そっちも観たかったなあ)を経て、ギターリフをちょろちょろ弾いていた「The Heavy Wing」かと思いきやゴロッと変えて「Carry Me Home」へ。この「Carry Me Home」がとても良かったです。重みのあるコーラスがライブ終盤の位置にすごく映える。まるで昔からこの位置が定番だったかのような感じ。比較的自由に鳴らしていると言われる『〜Dream Canteen』の曲がこうやって映えると、やっぱりRHCPは自由度が高まれば高まるほどより高く翔べるバンドなんだろうな、と思いました。

最終盤は早くもライブアンセムになっている「Black Summer」から「By The Way」で大いに沸いて一旦終演。アンコール1曲目はなんだろう?「Soul To Squeeze」は本編でカード切ったから、「I Could Have Lied」か、もしくはやっぱり…の"やっぱり"のほう、「Under The Bridge」!もうみんなお約束とばかりに携帯のライトをかざして雰囲気づくり、それに介さず淡々と演るバンドもまたクール。そしてこれも定番の「Give It Away」で大団円。時計を見るともう19:20、開演から1時間50分も経ってました。体感では1時間くらい。それくらい充実した1本のライブでした。

全体を通して、やはりジョン脱退前のRHCPがやっていたことを再度やろうとしている感じも確かに否めない。けれど、同じようなことであっても4人で前向きに面白い表現を模索していこうという熱量は確かにあったと感じました。ジョシュ期のRHCPにも表現の模索が今以上にあったと思いますが、それはバンドの外側から要素を持ってくるやり方で、それはRHCPというバンドにはうまく当てはまらなかったのかな、とも。

今の4人だからこその魔法がRHCPにはある。時にそれは酷だけれど、抗えない魅力が確かにある。そこに熱量が伴い続ける限りは、自分もこのバンドの行方とともに走り続けていこう。そう思いました。


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