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ナナニジ(22/7)にとって最高のリーダーだった(帆風)千春(ちはるん)

ナナブンノニジュウニ(22/7)を知らない人に一番紹介しやすいメンバーは誰でしょうか?声優に詳しい人なら活躍中のサリー?秋元康系アイドルが好きなら乃木坂の子からも可愛がられてるれいにゃん?アイドル声優らしくない変わった面白い子が好きならなごみん?

バンドリ、ミリオンライブ(アイマス)界隈の人なら、声優の愛美さんについてよくご存知なことでしょう。愛美の妹が、ナナニジのリーダーとして活動していた(帆風)千春(ちはるん)です。2021年2月にメンバーやファンが涙し、ナナニジを知るファンの誰もが惜しむ中、グループを卒業していきました。

千春の夢とその難航

筋金入りのオタクだった寺川千春(帆風はナナニジ時代の芸名)が、声優に憧れ、姉と同じ道を志したのは自然なことだったでしょう。ただ声優になりたい人はとても多く、おそらくスポーツ選手になるくらい厳しい道です。美しい声の持ち主で、グループで一番歌が上手いくらいの歌唱力もあり、アニメ声優としての演技も初期から一級品であったちはるんですが、当時オーディションではなかなか最終審査を勝ち抜くことはできずにいました。ブシロード(響)が誇る歌姫である姉・愛美と比べると物足りないという評価だったのでしょうか。ブシロードの木谷社長はよくも悪くも社員の家族を大切にする主義で知られていますが(三森すずこの叔父がブシロード社員というエピソードは有名)いくら愛美の妹とはいえ、何の実績もない千春を採用するわけにはいかなかったのでしょう。それでも千春は夢を諦めず、保育士として働きながら受けたのが声優アイドル・22/7(ナナブンノニジュウニ)のオーディションです。

千春に課せられた試練

2016年12月のオーディションをついに勝ち抜いたちはるん、一番年上の彼女は自然とリーダーシップをとることになりました。2018年の7月には正式にリーダーに就任しました。
これまで3人きょうだいの末っ子だったのに、お姉さんのところに行くためにはいろいろ癖の強い10人の「妹」たちの世話をしなければならないとは、物語のようによくできた試練です。

慕われるお姉さん

ちはるんは必ずしも先頭に立って引っ張っていくタイプではありませんが(先陣を切るのは主にサリー、得意分野ではみずはん、れいにゃん等の場合もあり)、優しく包容力があるお姉さんリーダーの存在は、個性派揃いのナナニジにとっては理想的であったといえるでしょう。『鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト』でアイドル活動に役立った保育士経験として「否定をしない」「寄り添う」「同じ目線に立つ」といった保育理念を挙げていました。
特に、なごみんは(活動中は実のお姉さんとは一緒にいられないので)ちはるんにベッタリでしたし、初期メンバーでおそらく3番目に年少のみずはんがちはるんに甘えてちょっと邪険に扱われているのも本当の姉妹みたいで美しかったです。

夢の実現と来たるべき別れ

グループとしての活動やアニメ「22/7」等で十分な活躍をしたちはるんにはついに愛美の事務所・響から所属してもいいよと声がかかったのだと思います。
下手な脚本家なら、お姉さんのところへ行くよりも、グループに残ることを選び11人(花川芽衣→河瀬詩)は幸せに暮らしましたというハッピーエンドを描くでしょう。でも現実はそうはなりませんでした。ちはるんは自分の夢を忘れてはいなかった。声優になりたいのなら、姉・愛美の事務所であるブシロード傘下の響に所属したいのは当然です(ナナニジの事務所のバズウェーブだってソニー・アニプレックス傘下ではと言う人もいますが、アニプレックスはそんな露骨に身内でキャストを回すわけではないし、そもそもソニーにはSMAもミュージックレインもある。大御所のスフィアや最強声優アイドルユニットTrySailのバーターという形ができるミューレはともかく、先輩の有名声優が1人もいないバズウェーブに力がないのは自明です)。
2020年12月の生放送での卒業発表の日、メンバーは皆一様に暗く、ナナニジファンの動揺も大きかった。私もナナニジにとって扇の要であると考えていたちはるんがいなくなることは、グループの崩壊に繋がるのではないかとさえ危惧しました。

辞めていく最高のリーダーとは

でもきっと妹たちも、いつまでも姉に頼っていてはいけなかったのだと思います。千春がナナニジを去ったことには2つの重要な意義がありました。1つはメンバーとグループを愛しながら、それでも自分と自分の未来を大事にするという範をリーダー自ら示したことです。その後の22/7は一つの全盛期を迎えそれぞれがそれぞれの道を進んで行くこととなります。もう1つは一元的リーダー制の廃止です。当時のナナニジの実質的な副リーダーは海乃るりと天城サリーであったと考えられますが、るりの卒業も遠くないことを考えると、次のリーダー候補はサリーでした。ただ努力家かつ天才ながらプレッシャーへの弱さも抱えるサリーに、千春はリーダーの責を負う必要はない、のびのびと生きて欲しいと告げたそうです。偉大なリーダーが去った後、国や会社といった組織が駄目になってしまうということは歴史上よくありますが、ちはるんはグループの民主化までやり遂げて去ったのだなと今では思います。

愛の人、ちはるん

22/7の1stアルバム『11という名の永遠の素数』の書き下ろし曲『ヒヤシンス』は、表向きは去っていった恋人への想いを歌った曲ですが、裏の意味があり、帆風千春と彼女が演じた佐藤麗華を歌った曲です(部分的には花川芽衣でもあるかもしれない)。歌詞のヒヤシンスの色が帆風千春と佐藤麗華のメンバーカラーの赤なのが決定的な証拠です。歌詞に「ヒヤシンス」が22回、「愛」が7回入った特別な曲。
(愛しているから無理はしない)
(愛は絶対枯れはしない)
(愛を絶対忘れはしない)
メンバーは(きっとファンも)ちはるんを愛していたし、ちはるんはメンバーやファンのことを愛していた。それ以上に何か望むべきことがあるでしょうか。

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