平積み写真

■『白い孤影 ヨコハマメリー』概要■

本書のテーマとなっている「ヨコハマメリー」とは、40年の長きにわたり横浜の街角に立っていた白塗りに純白のドレスという出で立ちの老婆
一説によると「アメリカに帰ってしまった進駐軍の将校を待ち続けているのだ」とのこと。
その実彼女は街娼であり「将校専門の高級娼婦なのだ」ともささやかれていました。
いわゆる街角のローカル有名人の一人です。

約10年前に亡くなりましたが、死後映画になり、昨年、今年とつづけてテレビで取り上げられるなど、近年も人々の関心を引き続けています。

取材を進めていくと、彼女が待っていた「進駐軍の将校」は人々の作り上げた想像の産物に過ぎないようで、彼女が奇妙な姿で立ち続けた理由は容易に明らかになりません

彼女はなぜ立ち続けたのか?

従来のイメージを覆す衝撃の新説!
20年に及ぶ地道な取材が辿り着いた珠玉の一冊。

この本のテーゼ、キーワード
・語り継ぐことではなく、語り直していくこと
・「ノンフィクションは嘘をつく」
・戦時中の女性の徴用の実際
・都市伝説の成立過程と伝説の変容
・衣服とメタモルフォーゼ
・アウトサイダーアーチスト
・外国人に対する書き割りのような平坦な認識
・「(イプセンの「人形の家」の)ノラは家を出てどうなったのか」

主に横浜を舞台にしていますが、横浜の人には「コレジャナイ感」があるかもしれません。
彼女の故郷に3度足を運んで事実を追求する一方、いまもつづく彼女を巡る現象とはなんなのか、について考えました。
普段から本を読む習慣を持つ、東京の方を念頭において書いています。

爽快感やカタルシスよりも「充実した読書体験」を求める方のご期待に添えるかと思います。
とは言え、別に難しい内容ではありませんし、分厚い訳でもありません。
ただ事前の予想と違う方向に流れていき、どこにたどり着くのか予断を許さない内容となっています。

彼女が街角に立ち続けた理由に関して著者が提示した回答は、賛否分かれるでしょう。
問題作です。


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