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【短編童話】失敗妖精とのんびり猫

あるところにリャオという一人ぼっちの妖精がいました。

リャオは失敗の妖精。

人間を失敗させてしまう妖精です。

リャオは他の妖精と違ってちからのコントロールができないので、リャオの近くにいるだけで人間は失敗してしまいます。

人間だけではなく動物や機械まで失敗をしてしまいます。

リャオがいればみんなみんな失敗してしまうのです。

リャオは、人間たちの役に立てない自分がいやで、誰にも必要とされないことを悲しんでいました。

人間を笑顔にしたり、失敗する妖精がうらやましくてうらやましくて、リャオはみんなからはなれて一人ぼっちでいました。

そんなある日、リャオはいつものように一人で人間の町を歩いていると、一匹の猫と出会いました。

「妖精さん、妖精さん、どうして泣いているんですか?」

人間には妖精が見えませんが、猫は見ることができます。

「わたしは失敗の妖精です。わたしがいると、みんな失敗してしいます。だからわたしは一人でいるんです」
「まぁ、それは大変! 」

猫は目を丸くしてしっぽを立てました。逃げていくのかと思ったら、リャオのことをペロペロとなめるではないですか。

「それでは妖精さんが一人ぼっちになってしまいます。ならばわたしと一緒にいませんか?」

リャオはそんなことを言われたことがないのでびっくりしてしまいました。

「でも、わたしといると猫さんは失敗してしまいます」
「いいんです、いいんです。私はこの通りひとりのんびり暮らしています。ちょっとの失敗ぐらい、なんてことありません」

リャオはそんなことを言われたことがなかったので、また泣いてしまいました。

「あらら、妖精さん、泣き虫ですね。よしよし、この猫があやしてあげましょう」

猫はぽすぽすとリャオの頭を撫でます。

実は彼女はすでに何匹もの子猫を産んだ子育てのプロなのでした。リャオを泣き止ませるのもお手の物です。

その日から、リャオは猫と一緒に暮らすことになりました。

すると、おかしなことが起きたのです。

「あら、道を間違えてしまいました」
「猫さんごめんなさい、きっとわたしのせいです」
「いいんです、いいんです」

背中の上のリャオは謝りますが、猫はどこ吹く風。
ひらりと華麗にからだをひるがえしてしばらく歩くと、道路を割って咲いた綺麗な花を見つけました。

「わぁ素敵」
「リャオ、見てください。これはあなたのお陰です。こんなに綺麗なものを見つけることができました」

猫は失敗をものともしません。それどころか、失敗の先に必ずとっても素敵な出来事を見つけるのです。

リャオは自分の運ぶ失敗が平気な生き物なんて、初めて見たのでした。

「失敗をした方が、私のようなのんびり猫は楽しいのです」

猫は口癖のように言います。
そんな彼女のことをリャオはとても尊敬していました。


ですが、そんな穏やかな日々は突然終わってしまいました。

妖精たちが次々にリャオたちの元へやってきて、こう言いました。

「リャオ、来てください。あなたが居ないせいで人間の町が大変なことになっています」
「どういうことですか? 人間はわたしがいないほうが幸せのはずです」

妖精たちは次々に人間たちのことを話します。

人間たちはなぜか努力することを忘れてしまい、みんなダラダラとだらけてしまったり、ケンカばかりしているそうなのです。

人間たちはすっかり笑顔になることを忘れてしまいました。
それは、どんな妖精のちからを使っても変えることができません。

これはきっとリャオがいないせいだ。
妖精たちはそう思ってリャオを迎えにきたのです。

すると、猫は申し訳なさそうに頭を下げました。

「ごめんなさい、わたしがリャオをひとりじめしてしまったせいですね」
「猫さん、どうしてそんなことを言うんですか」

リャオはわけがわかりません。

「リャオ、あなたは本当は失敗の妖精なんかじゃないのです」

猫は続けます。

「失敗を乗り越えて工夫をすれば、必ず成功があります。成功がないとみんなダメになってしまうのです。リャオ、あなたは本当は成功の妖精なのです」
「成功の妖精ですか?」

成功の妖精と聞き、妖精たちはざわめきます。

「成功の妖精? なんだかかっこいいねー」
「リャオってすごいんだねー」

妖精たちは無邪気なので次々とリャオを称えました。
みんな、一人ぼっちのリャオのことを心配していたのです。

「それじゃぁリャオ、みんなのところに帰ろうよ」
「それはいやです。猫さんとお別れなんてできません」

大好きな猫です。リャオの失敗をもろともしないどころか、必ず嬉しい出来事に変えてしまう、すてきな猫と離れるなんて絶対嫌なのでした。

「わたしはあなたのおかげで沢山すてきなものをもらいました。ありがとう、リャオ」

猫はぽすぽすとリャオの頭を撫でます。

「リャオ、私はあなたのお陰で充分幸せになれました。もう成功なんて要りません。ほら、お行きなさい」

猫はにゃーーんと悲しげに鳴き声をあげながら、リャオの背中を押したのでした。

「リャオ、あなたが沢山の人を成功に導いてあげてください」

リャオはとてもとても優しい気持ちになりました。
猫はリャオに沢山の大切なことを教えてくれたのです。

こうしてリャオは妖精たちと一緒に人間の町へと戻っていきましたとさ。

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失敗をしてしまったとき。
恥ずかしくてたまらないとき。
泣いてしまったとき。
きっと辛いでしょう。苦しいでしょう。

でも、大丈夫。

リャオはもう知っています。失敗の先にしか成功がないことを。

成功の妖精リャオは、今日もあなたの失敗を優しく見守っています。

「がんばって、これは成功の種だよ」

と。


おまゆさんの声を聴き書かせていただきました。

おまゆさんに読んでいただく為に書いた書き下ろし童話です。


失敗妖精のリャオはお恥ずかしながら以前から自分をモデルにしたキャラクターとして構想があったのですが、その先の展開の先が暗闇のままでした。

猫のモデルはおまゆさんです。おまゆさんの優しい声や独自のペースのすてきなnoteに惹かれ、先の光が見えた形です。

おまゆさんに感謝の気持ちを込めて、こちらをおまゆさんへの #お手紙note とさせていただきます。


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