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【観劇】結局世界は「許し」と「肯定」でできてるんだよね

※公演は既に終了しています。


「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」

木曜、コンプソンズ#5「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」2日目を観てきました。

(画像)「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」フライヤー

場所は三度目になる下北沢OFFOFFシアター。下北サンデーズにも登場した、小劇場すごろくの最初の一歩のあの劇場です。

コンプソンズといえば私のnoteでも紹介した若者五人組による演劇ユニットです。
前回noteでは「見つかったらヤバイ劇団」として紹介させて頂いたのですが、今回はちゃんと感想が書けます!!! ちゃんと感想が書ける!!! 嬉しい!!!

今ワイドショーを賑わせている小〇圭とか出てこない。出てきた上で別のコムロと人違いされてしまったり殺されてしまったりはしないんです!! 
そう、お察しの通り前回公演では上記のような展開がありました

そういえば、今回公演は私が勝手に「コンプソンズがお芝居をする上で必ず入れければいけないもの」だと思っていた宗教法人ネタがなかったんです。

いつも入れているものを書かないというのは書き手にとってはドえらい決心が必要なものなんですよ。すごい、金子さん、凄い。……でも、多分誰かに怒られたんだと思う(憶測)

そんな、危険すぎたコンプソンズをコンプラを最大限配慮しながらも、私の演者さんへの愛が怖かった前回記事はこちらです(※紹介した公演は終了しています)

(改めて見たら自分の愛の気持ち悪さにヒくと同時に、謎の熱量に涙ぐんでしまいました……)

大盛況だった前回公演「平成三十年のシェイクスピア」よりも少し小さな劇場で行われました。
だけど、下北沢。あの下北沢です。「出世」感が凄い。流石コンプソンズ。どんどんスターへの道を進んでいってるように思えます。

きっと5年もすればしゃべくり007に呼ばれるんじゃないでしょうか。そんな予感すら感じさせてくれる五人組です。

木曜の公演ですが、Twitterでは勢い余って初日に行ったと大嘘をこきました。ごめんなさい。正しくは2日目です。

生きるって辛いよね

まずはTwitterですごくいい言葉を見つけたのでこちらを貼っておきます。

生きるって辛い。
だってどんなヤなやつですら、極めて悪人なんてそうそういないから。
そんな憎めなさが苦しみを生む。
蝕むような苦しみから逃れるのはきっと、許すことと逃げることしかないんだ。

これ、めっちゃいい言葉だと思いません?
誰が書いたかっていうと矢御あやせっていう小説家……つまり私です。
何か(多分Twitterの受け売り)に影響を受けたとは思いますが、私が書いたので引用元を明記しなくて大丈夫なやつです

でも、こうして書くと普通の言葉ですね。すんません。

こちらが「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」の感想の総括です。

今作で感じたのは「生きづらさ」「エモさ」
どんなに楽しそうにしていても、騒がしくしても、肩を縮めて歩くようなそんな現代日本そのものが、あの劇場には表現されていたように感じます。

今回、主人公は見る人によって変わると思います。
私の中での主人公は、元・四人の”ガールズ”バンドメンバー。といっても一度もバンドなどせずに、そのうちの二人が一人の”男の子=カンちゃん(演:大宮二郎さん)”を取り合って色々気まずいままバラバラになってしまった……という子達です。

その、バンドメンバーでたった一人の男の子は数年後、女性の格好をしてゲイバーのママとして店頭に立つようになります。
そう、女の子二人が取り合っていたカンちゃんは本当はゲイだったのです。

マサミという女の子

私の今回の”一押しキャラ”はそのバンドメンバーの中で明るく皆を元気に引っ張っていったマサミ(演:星野花菜里さん)でした。とにかく元気。元気でちょっと寒いギャグを連発しちゃうような子です。

ちなみにカンちゃん争奪戦には参加せず、カンちゃんを取り合った女子2人に対して「ロストバージンしたらみんなに言うね!」と明るくマイペースに過ごしています。

マサミは元気で「う〇こしてくる」とか言っちゃったり、連発するギャグに下ネタが多かったりと、一見破天荒そうですが、倫理観がしっかりとあり、記憶喪失の客A=メメント(演:金子鈴幸さん)が「身障」という言葉を使った際に「私この人嫌い」と嫌悪感を露わにします。マサミ、めっちゃくっちゃかわいくていい子なんです!!!!

こういった「芸能人や特別なわかりやすさは持ってないけどどうしようもなかわいい女の子」はとても新しいジャンルな気がしていて、現代ならではの表現なんじゃないかと最近勝手に感じてます。

この物語の中で、マサミだけが嘘をつかずに生きているように見えます。(メメント・のぶたさんは物語を作る人間なので必然的に嘘をついていることになります)
そんなマサミは、高校時代、えげつないいじめに遭っていたのです。

結局、マサミは記憶喪失のメメントと付き合うことになるのですが、この二人が最高にだめだめだけどキュートだったんです。

そんなマサミは一貫して悲しいという感情を見せていなかったのですが、ゲイであるカンちゃんに気のある振りをし、騙してよからぬこと(カンパニー松尾さんの「テレクラキャノンボール」というAVをオマージュした映像作品を作ること)を企んでいた松本によって、「ブス!!!」と言われて泣いてしまいます。

一貫していて、少しおバカだけど強くてかわいくてかっよさすら感じるマサミは、その言葉で泣いてしまうのです。ブスという言葉の罪は重い。

ここで勝手に感情移入して辛くなってしまったのですが、そこですかさずメメントが彼女に寄り添って慰めるのです。
のちに彼は駅前劇場(公演が行われたOFFOFF劇場と同じフロアにあるOFFOFFより大きい劇場)で公演を控えていたが、おじゃんになって気づいたら記憶をなくした金子さん=おそらくあったかもしれない未来の金子鈴幸さん本人役 であることが発覚します。
(この人、物語の核心とはあまり関係なく勝手に記憶喪失になった人でした。)

本人役でそのカッコイイやつずるいだろーーーー!!!!!!

と思いながらもとても優しい気持ちになりました。個人的ベストシーンです。ありがとう、メメント。よかったね、マサミ。幸せにね。と勝手に感情移入して勝手に涙ぐみました。このシーンだけで一時間拍手できるぐらい好きです。

そして、別の人物・ストーカーのプリン(演:鈴木啓祐さん)からも「ブスという言葉は嫌いです」というセリフが入ります。

私が知っている創作物は、「ブス」という言葉を使ったら使いっぱなしだったように思います。特に日テレのバラエティとか。

「ブス」の後に「そういう言葉を嫌いです」って言える表現って、まだ新しい気がするのです。っていうか、その表現ってまだ表現じゃなくて「配慮」なんですよね。でも、今回うまく表現として機能してるんです。

「あぁ、いいなぁ。これはこういうお芝居なんだ」とこの舞台の上で苦しんでいる人たちは”本当は優しいんだ”と肌で感じました。

表現においてポリコレを意識するなんていうのは物語の舵を狂わせるものだと思っているのですが、こういう風にうまく使って綺麗にスパイスにしていくところに、金子さんと私の圧倒的な力量差を感じます。

正直私は比べられるほどの土俵に立ててないし、悔しいとすら思えない。
この若き天才に拍手をするしかない。もっと大きい劇場で観たい!!!!

心震えたラストシーン

こちらのお芝居のお話を語るのに欠かせないのはラストシーンの存在です。

一人の男の子を取り合ったバンドメンバーの二人。一人=ユウコ(演;宝保里実さん)はカンちゃんと付き合うことができたのですが、結局、カンちゃんは彼女を「自分がゲイかどうか」確かめるために利用してしまったのです。

カンちゃんがカラオケ店で片乳を揉んだ隠し撮りがチェーンメールとなって学校中を駆け巡り、そのいざこざの中で、もう一人の女の子=ヒカリ(演:つかささん・善長まりもさん・ダブルキャスト)は交通事故で両親が亡くなってしまいます。
結局、カンちゃんはヒカリに付き添うことになり、以来、女の子の恋愛はうまく行かなくなってしまいます。

ヒカリは物語スタート時から失踪していなくなってしまい、回想という形でしか登場しないのですが、カンちゃんと観客は「彼女が人を殺したかもしれない」と勘違いさせられてしまいます。


ですが、実は彼女は人を殺してなどおらず(死んだ相手は腹上死でした)、色々あって「しがらみから逃げる」ことにしたのです。ヒカリはその間農家の嫁になり、赤ちゃんを妊娠します。

そんな女の子二人がラストシーンで再会し――色んなしがらみがあったと思います。一度なんともいえない間をおいて――「ひさしぶり~~~~~」と笑い合うことによってお芝居はおしまい。

私はこのお話を「優しい話」だと思いました。

このお話に出て来る人たちは一概に「いい人」だなんて言えるような人たちじゃないけど、みんなみんな、極悪人ではないのです。

必死に肩を縮めて生きながら、だれかのふりをして生きてる人たちで、それこそ若者のリアルなんです。みんなが根底にそれぞれの何かやりきれなかったり不安だったり、辛い思い出を持っていて、それによってうまく行かなくなっている。
それを解放するのが金子さんの言った初期衝動……かどうかはわかりませんが、初期衝動に身を任せて演劇をする登場人物たちはなんだかとても楽しそうでした。

表現をすると、何かかから解放されるというのは、私が身をもって体験してることなので、バカにせずに言います。初期衝動はとっても大切。

そしてもう一度、ここで冒頭に書いた文章を再度引用。

生きるって辛い。
だってどんなヤなやつですら、極めて悪人なんてそうそういないから。
そんな憎めなさが苦しみを生む。
蝕むような苦しみから逃れるのはきっと、許すことと逃げることしかないんだ。


私の文章じゃ面白さは1%も伝えられませんですが、その間とんでもないセリフの数々が飛び交ったのでした。実名がバンバン出ます。有村架純とか、吉岡里帆とか。。。


今回は台本も買ったのでその大好きなシーンの一つを引用して終わりにしようと思います。
このセリフがぴんと来たら次回7月の公演にぜひ足を運んでみてください!!!(セリフのチョイスがおかしかったらすみません。あと実名は出ていないシーンにしました)

****

高校時代の回想。カラオケ店でカンちゃんに片乳を揉まれている写真がチェーンメールで学校中に出回ってパニックになっているユウコに、ヒカリがかけた言葉のシーンです。
※途中中略があります。気になる人は劇場に足を運ばれた際に台本を買ってみてください!

ヒカリ「もう・・・いいんじゃねもう。片乳なんだし両乳じゃないだけもうっけたって思えば」
(中略)
ユウコ「片乳なら何? 何がいいわけ?」
ヒカリ「両乳を世界中に晒されたわけじゃないからいいでしょ」
ユウコ「片乳だけならどんなメリットがあるの!?」
ヒカリ「だから、左右のバランスとか……」

(引用元)コンプソンズ「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」複製台本



このセリフで女の子同士のぎすぎすを表現している金子さん凄すぎるなぁと思いました。
(後で星野さんにお伺いしたら、絶妙な女の子たちのリアル感は女性出演者さんたちで頑張られたそうで。本当にすごかったのです。すごすぎました。リアルのさじ加減が絶妙で本当に大好きでした。)

コンプソンズはこれからもますます目が離せません! できるならば一年中お芝居を見ていたいくらい大好きなので、皆さんもぜひとも次回公演・7月の下北沢で彼らの雄姿をご覧あれ!

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コンプソンズとも交流のある劇団「地蔵中毒」関口オーディンまさおさんについて書きました。


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