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「死にたい」を救ったのは、小さなマウスピースだった――気分障害と睡眠時無呼吸症候群のハナシ

家のベランダから飛び降りるか、「死にたい」とツイートするか。

四月も半ばの真夜中、私は突然にその二択に迫られた。

私は完全に壊れてしまった。

そんな私を救ったのは、医学の力――睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療だった。

私は医療関係者ではないが、同じ症状に苦しむ人のため、筆を執ることにした。


※こちらの記事は実体験から医療機関へのご相談を勧める記事です。

「自分もそうかな?」と思われた方はどうか、ご自分で解決せずに医療機関へご相談ください。

記事によるトラブルには責任を負いかねます。


私が壊れた日

夜中にも関わらず、声にならない叫びを上げ、泣き叫び、自分の存在の全てが無意味であることに絶望しきってしまった。

自分を痛めつけるか、責めて叫ぶか。

私が選んだのは「ツイート」だった。

死にたい、死にたい、死にたい、死にたい、死にたい…………

沢山の人が私を軽蔑しただろう。

これによって潰えた取引もあるかもしれない。

それ以上に沢山の人を心配させた。

後から聞けば、声をかけようとして言葉を選べなかった人は一人ではない。


本当は死にたくなんてなかった。

ただでさえ死は怖く、いつか来るそれが耐えがたい程だった。

どちらかというと「死ななくてはならない」に近かった。

私が今までに迷惑をかけた沢山の人が「死んでほしい」と言っているように感じた。

死んだら、沢山の人が幸せになる。

死ななくては、死にたくないけど、死なないと沢山の人がこれからも迷惑してしまう。


そうして、私はバラバラになってしまった。


なぜ私は壊れたのか


原因は、明白だった。

「無理のしすぎ」だろう。

無理がたたり、自分ではどうしようもない悲しい事件が起き、事件が事件を呼び、私は病んだ。

それがnoteを書く「前」のことだ。

病んだ心を奮起して、5時間も稼働しない体で必死に文章を綴っていた。

そこに辛いライフイベントが重なった。

とっくにボロボロだった。

なにも、私一人が辛いわけではないが、一人では抱えきれないほどの「辛さ」の許容範囲はとうに越え、冒頭の状態に至った。

――だけではなかったと、後にわかることになる。

とはいえ、遅かれ早かれ私は崩壊していただろう。

人が壊れる理由は一つではない。


散らばったピースを探して

それからの私はピースを無くしたパズルのようだった。

まずは、書くことを禁止した。

「二週間休めばよくなる。早く書かないと」と思っていた。

書く以外に、お金を稼ぐ方法が見つからない。

冷静に考えれば、ずっと調子が悪かった。

おそらく、五年近くだ。

最初は一ヵ月休めば治ると思っていた。

「死にたい」と思わないために一日十時間近くゲームをしていた。

なるべく楽しそうな動画を流した。

ずっと、動画を流さないと眠れなくなっていた。

「いつ良くなるんだろう」が口癖だった。

Twitterではフォロワーさんの優しい言葉すら辛かった。

それすら申し訳なかった。

だけど、フォロワーさんがDMで、私が楽しそうに笑う写真を送って下さった時、「なんだ、ブスじゃないじゃん」と思って少し心が安心した。

毎週金曜か土曜、「週の半分までもつ料理」を作るようになった。

ある日、別のフォロワーさんと一緒に近隣の港町・大洗に出かけ、ほんの少し楽になった。

休養を経て失くしていったパズルのピースは集めていった。

それでも、一向に良くならない。

睡眠薬を飲んでいる。カウンセリングを受けている。薬も飲み始めた。

なのに、「いつ良くなるんだろう」の不安が止まらない。

ピースは沢山集まったのに。

こんなに沢山休んだのに。

実際のところ、本当に私のパズルには「足りないもの」があったのだ。

そして、集まったけどバラバラだったピースを繋げたのは、意外にも医学の力だった。


私を救ったマウスピース

私が「死にたい」と思わなくなったのは、上記の休養期間のお陰だけではなかった。

実は、あるものに救われ、割と急激に元気になった。

これでようやく本題である。


「あるもの」の正体。

それは、小さなマウスピースだった。

歯の形に合わせて作った、私専用の器具である。

私は睡眠時無呼吸症候群だ。


だが、気管の弱い私は咳がちで苦しくなる日があるため、マウスピースを毎日つけることはできない。

そして単純に寝る前に一過程挟むのは単純に面倒だった。

更に、一日マウスピースをつけなくても翌朝しんどいだけで死にはしない。

そしていつしか、マウスピースをつけずに就眠するようになってしまった。


だが、ある日、理由は忘れたが気まぐれでマウスピースを付け始めた。

無意識のうちに息苦しくなったのかもしれない。

久しぶりにつけたマウスピースは、歯の形が変わったせいで痛かった。

それでも無理やり着けて寝た。

すると、翌朝。何かが違った。

なにも、無理やりはめたマウスピースによる歯の痛みだけではない。

何が変わったかはよくわからなかったが、「変わった」と思いながら一日ゲームをした。

次の日も装着して寝た。

翌朝、気分が明るくなった。

今までは絶対に考えられなかった「やりたいこと」が幾つか浮かんだ。

過去のことを考えるより、未来の事に目が行くようになった。

精神的な効果を実感したのは、たったの二日目のことだった。

それから数日マウスピースを装着。

何日か気管支炎で休み、また装着し、二週間ほどが経った。

その間に、「今日、明日、将来やりたい事」が次から次へと浮かんだ。

気持ちが沈んでぜんぜんやる気になれなかった裁縫の練習をまた始めた。

外に出るのが楽しくなった。

そして今、2ヶ月もの間出番の無かったPCの埃を払い、あれほど書けなかった原稿を書いている。

私はマウスピースによって救われた。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)って何? 症状は?

名前の通り、就眠中に呼吸が止まってしまう病気だ。

名前は割と有名だと思うが、「そんなのもあるんだぁ」的に捉えている人も多いかもしれない。

症状の一部を紹介すると

・日中の眠気
・朝起きた時にだるい、頭痛がする
・いびき、いびきが止まる

などがある。

症状はいびきや眠気だけでなく、意外なものもあるのだ。それは――


マイナス思考は性格だけじゃなかった!? 驚きの症状

なんと、鬱病(うつ病)や双極性障害(躁うつ病)にも睡眠時無呼吸症候群が関係していると言われている。

実際、私は主治医に「最近マウスピースを付けたら、なぜか心も調子がいい」と話した。

すると、

「気分障害の患者さんには睡眠時無呼吸症候群の治療も勧めています」と教えてくれた。マジか。


このような記事もある。

(引用元) https://medicalnote.jp/contents/160414-065-DX

無呼吸低呼吸による虚血(血流が減少し、臓器に必要な酸素量が減少する状態)の結果、海馬などを含む灰白質や白質の減少につながり、その結果、記憶、気分、心血管の障害に関連しているとの研究報告があります。実際に、睡眠時無呼吸症候群ではうつ病を合併している頻度が多く、滋賀県内でうつ病を発症している人を対象にした調査では約半数が睡眠時無呼吸症候群を併せ持っていました。


要するに、酸素が足りないと、体や脳の働きが鈍ってしまうらしい。

そう、元気になるためには休養だけでは足りなかったのだ

元気になるために問題が残っていたのは、脳の働きだった。

さぼりたい訳でも、メンヘラというわけでも、いつまでも治らない重篤な病気というわけでもない。

ただ脳に酸素が足りず、うまく動いていなかったのだ。

これを知った時、心底安心したのと、「このままマウスピースを付けなかったら……」とゾっとしたのを覚えている。


こんな症状があったら睡眠時無呼吸症候群かも


症状の特徴は、上で挙げたものと重なるが

心臓画像クリニック飯田橋「睡眠時無呼吸症候群(SAS)  4.どんな症状?」

によると

・毎晩、大きなイビキをかく
・日中に強い眠気がある
・目が覚めたとき口が渇いている
・一日中疲労感がとれない
・集中力が続かない

(引用元) http://www.cviclinic.com/column/?p=234

その中でも、これらのイビキには要注意だという。

・仰向けに寝ると大きくなるイビキ
・急に大きくなったり小さくなったり強弱があるイビキ
・朝までイビキをかき続ける
・最近イビキの音が変わり大きくなった

(引用元) http://www.cviclinic.com/column/?p=234


周りの人から「イビキがうるさい」と言われたら要注意であることは間違いないだろう。

そのほかにも

寝ている間
・何度も目が覚め、お手洗いに起きる。
・寝汗をかく
起床時
・口が渇く
・頭がズキズキ痛い
・熟睡感がない
・すっきり起きられない
・身体が重い
起きているとき
・強い睡魔に襲われる
・だるさ、倦怠感がある
・集中力が続かない
・疲労感がある

(引用元) http://www.cviclinic.com/column/?p=234


こんな特徴があったら更に怪しい!

更に睡眠時無呼吸症候群には「こんな人がなりやすい」という傾向がある。

心臓画像クリニック飯田橋「睡眠時無呼吸症候群(SAS)5.こんな人が要注意!」によると

①見た目の特徴
・首が短い
・首が太い、まわりに脂肪がついている
・下あごが小さい、小顔
・下あごが後方に引っ込んでいる
・歯並びが悪い
・舌や舌の付け根が大きい

(引用元) http://www.cviclinic.com/column/?p=238

私はこれに結構当てはまっている。

太ってなくても、一般的な症状に合わせてこれらに当てはまると疑いが出るらしい。

事実、私も肥満(診察当時は今より痩せていた)というよりも首の太さと顎が小さいことを担当医に指摘された。

②生活習慣の特徴
・タバコがやめられない
・ほぼ毎日お酒を飲む
・暴飲暴食することがあり、太り気味
・高血圧、糖尿病、高脂血症などにかかったことがある

(引用元)http://www.cviclinic.com/column/?p=238


※「もしかして」と思った人は、睡眠時無呼吸なおそう.comさんでセルフチェックもできるので、ぜひとも受けてみてください!


病院に行きたいけど何科を受診すればいいの?

私の場合は総合心療内科からの紹介で精神科に行ったが、

睡眠時無呼吸なおそう.comにはこう書いてある。

睡眠時無呼吸症候群は様々な診療科で診られています。
「睡眠外来」などはもちろん、内科(呼吸器・循環器)や耳鼻咽喉科などでも睡眠時無呼吸症候群に対応している場合があります。
もし睡眠時無呼吸症候群の検査・治療に対応している医療機関がお近くにない場合は、かかりつけ医にご相談ください。

(引用元) https://659naoso.com/faq-03

様々な診療科で相談できるようなので、対応している医療機関があれば足を運んでみるのがオススメだ。

私も地域の中規模病院の総合診療内科からだったので、紹介してくれる場合もあるはずだ。

……あの時紹介してくれた先生、本当にありがとうございます……!


睡眠時無呼吸症候群はどう治療するの?

いざ病院! と思っても一体どんな治療をするかわからないと不安かもしれない。

そのため、治療の一例を超簡単に紹介する。

・CPAP治療
  …重度の療法。口や鼻などに機械をつないで呼吸の手助けをしてもらう
・マウスピース
  …軽度の療法。歯に器具を装着して、呼吸をしやすくする
・ナステント
  …軽度の療法。鼻にチューブを挿入し、呼吸をしやすくする
・外科手術
  …手術をして呼吸をしやすくする

などの方法がある。

今回はインターネットをソースにしているため、最先端の医療ではまた違った治療法が提示されるかもしれない。

また、無呼吸の度合いや数値によって治療法が変わるので、必ず医師の相談を受けてほしい。

合った治療ではないと、逆効果の場合もあるし、専門器具なので装着を間違えると危険だ。

「生きててよかった」

最近、私は元気になってきた。

あくまで「元気になってきた」だけだ。

「元気になった」ではない。

きっと、無くしたパズルのピースがまだ見つかっていないんだろう。

気にしている体重の話をされると、とたんに落ち込んでしまう。

今は化粧をして外に出れない。すっぴんで過ごしている。

マウスピースが担ってくれたのは、あくまで「パズルのピースをつなげること」程度だった。

なので、休養がなければここまで回復できなかったと思う。

だが、もし今「死ねなかったことを後悔しているか」と聞かれたら

「生きていて良かった」

と笑顔で答えたろう。

本当にあの時死んでしまわなくて、また、自傷して大けがをしていなくて良かったと心から思う。

休養とマウスピースのお陰でこんなに元気になることができたのだから、感謝してもしたりない。

皆さんも、「もしかして……」と思ったら身近な睡眠時無呼吸症候群の方か、主治医に相談してみるといいと思う。

そして今、「死にたい」と思っている人。

こういう可能性もあるので、一度お医者さんに相談を試みてほしい。

あくまでこれは、「睡眠時無呼吸症候群って放っておくととっても怖いからお医者さんに行こう!」と受診を勧めるための記事です

「通販で器具を買ったけど良くならなない!」などが起こらないようにしてください。残念ながら苦情は受け付けられません……。

どうか、皆さんも健康な睡眠と「げんきな心」で楽しい生活を送ってください。


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参考URL

睡眠時無呼吸なおそう.com
https://659naoso.com/


閉塞性睡眠時無呼吸治療への新たな提案-ナステントという選択肢


うつ病と睡眠時無呼吸症候群とのかかわり


千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学‐睡眠時無呼吸症候群


心臓画像クリニック飯田橋「コラム心臓と脳-睡眠時無呼吸症候群」



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