見出し画像

異世界転生するならここへ行きたい

※「赤髪の白雪姫」に関してただただ好きなところを語っています
ネタバレもあるかもです。

タイトル:赤髪の白雪姫
作者:あきづき空太
出版社:白泉社(LaLa)


久しぶりに、「赤髪の白雪姫」を1巻から読み返した。
1巻を読みながら、買った当時を思い出した。
今はもう閉店してしまったけど、実家の最寄駅の本屋で新刊のコーナーにあった1巻を表紙買いした記憶がとても鮮明にある。学生の頃のこと。

そこから色んな漫画を読んできたけど、少女漫画の中ではいっとう好きな作品になってる。そもそも好きな漫画に優劣をつけるのはとても難しくてできないんだけど。
10年以上好きが変わらない作品というは凄いことだと思う。

どこが好きかをあげ出すとキリがないけど、まずはキャラクター。
主人公の言葉選びと、生き方に魅力が詰まっていて理想の女の子だなぁと思いながら自分ではこうはいかないなとも思わされる。私は漫画を読む時、主人公が好きになれるかどうかが結構重要でそこがクリアされないと途中で読むのをやめてしまったりするんだけど。白雪はとにかく嫌味のない少女漫画の主人公でとても好き。
恋愛ものの主人公にありがちな、観察眼がやたらあるのに自分への好意には無頓着、とかじゃなくて、序盤からしっかりゼンと関係を確認しているのも好き。
たくさんキャラクターが出てくるけど、その場その場じゃなくて、作品の外でもしっかり生きている感じがいい。あとから出てきたり、繋がっていたりする。主人公だけじゃなくてそれぞれにどんな関係性を築いているのかが垣間見えたりして、そういうところも緻密だなと思う。
そして作品の中での最推し。オビ。めっっっちゃ好き。ビジュアルも役どころも性格もセリフも全部好き。
この、なんか白雪に惹かれてるんだけど、ゼンのことも人として好きで、その二人のそばにいることが好きで、自分の思いは…みたいな。無理してることはないんだろうけど、読者としては健気すぎるしカッコ良すぎるだろ…っ!!!!!!ってなる。
作者さんもオビ好きだと思うんだよ。ここぞの見せ場絶対あるし。
海の鉤爪の時のオビマジで好きだったし、オリンマリスの時といい、かっこよさが止まることを知らない。テレビアニメで声優が岡本信彦さんだった時は解釈一致すぎて天を仰いだ。(テレビアニメも最高だった)

それからなんといっても衣装!!!!!この作品の唯一無二の世界観を支えているのは衣装だと思う。「服が可愛い作品は良作」という個人的な統計があります。
この作品の衣装はとにかく細かい。そして可愛い。単行本にたまに衣装の設定画が載っていたりするんだけど。後ろ襟とか袖とか、裾の刺繍とかめちゃくちゃ細部までこだわりがあるのが伺えてそれだけでも作者さんのセンスがえぐいことがわかる。
街の背景とか、立ち寄る宿の絵も小物とかまでしっかり可愛い。もしカラー版が出たら改めて全巻かいたいくらい好き。色んな国の民族衣装の要素を少しずつ詰め込んでオリジナルな世界観の衣装にしているのが本当に素敵。最高。

もちろん話の構成も好き。最初イザナ殿下からゼンと白雪の関係を何も知らないものが見たらどう捉えるか、とか突きつけられてたのも、そこから白雪が自分の力で人脈やキャリアを広げていく感じもとてもいい。それから拠点が王都から関所や、支城に移っていくのも世界観の広がりが感じられて好き。移動に時間がかかるとか、それでも会いに行くとか。動けないもどかしさとか。物理的な距離があるとより感じられていいよね。時間の経過を髪の長さとかキャラクターの身長とかで表すのも粋でいい。もし私にこれだけの構成力と発想力があったら全て見て欲しい!!!と思ってしまうけど。実際に漫画に落とし込んでいること以上にたくさんのことを考えて決めていて、その中で矛盾がないように洗練して漫画を描いているんだろうな、と勝手に想像する。
ファンタジー漫画のファンタジー感って意外と維持するのが難しいと思っていて。メタ的な発言だったり、現実の要素がちらりとでもみえると萎えるところが絶対出てくるし、そういう違和感って読んでて絶対に気がつくものだけど。この作品にはそういうのが全然なくて。言葉の言い回しとか、作中に出てくる草木の名前から何から徹底的に創り上げているところが、この作品への没入感をより一層強くしているように思う。全体を通して繊細で優しい印象をうけるのは作者さんの人柄も滲み出ているようでそんなところも好き。ちなみに作者さんの作品は単行本化しているものは全て読んだけど一貫して繊細さ儚さ優しさを感じた。

単行本の刊行が間が空いてるなと思ったら、どうやら本誌は不定期連載らしい。この夏池袋で原画展をやっていたのを、新巻の帯で見て知って。行こうと思えば行けたのに結局行かなかったことをすごくすごく後悔している。
ネットの情報を見る限り、体調不良というわけではないようだけど、これだけ細部までこだわった漫画を描くとなると時間がかかっても仕方ないと思う。どうかあきづき先生には健やかにお過ごしいただくとともに、満足いく形で作品を描き切ってもらえればと思う。

そしてこっからがタイトル回収というか私の妄想。昨今異世界転生ものが一ジャンルを確立している。ファンタジーが大好きなのでたくさんその手の作品も読んだけど。読んでるとやっぱり自分だったらどこに転生したいか考えるよね。
久々に一から読み返したら、ふと、私はこの世界で生きたいなぁと思った。
主要キャラになりかわるとかそういう夢小説思考もなくはないけどそれはこの作品では一旦置いとくとして。普通にモブも平和に暮らせそうだと思わない?治世が安定していそうだし。イザナさんがいる限り戦争になる前にうまいことしそうだし。全体的に治安良さげ。特に王都。学問街も寒そうだけどなんだかんだ住みやすそう。白雪が薬剤師だから植物がフィーチャーされるけど、動物とかはどうなんだろう。馬とポポくらいしか出てきてないと思うけど独特な動物もいるのかな。給料事情も生々しいからか描かれてないけど、この世界ならなんとか自分の持ちうる知識で生きていけそうな気がする。好きなことを研究するのでもいい。学問街で鉱物とか天体の勉強したい。動物の世話したりとかで生活するのもいいなぁ。それで時々、白雪の噂を聞いてひっそり幸せのお裾分けをもらうんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?