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源泉100%かけ流しの大露天風呂を独り占め【信越北陸一人旅⑮】

ロープウェイから降りた。地上に戻って来た感がすごいが、赤倉温泉街の標高は約800mあるらしく、自分が普段生活している場所と比べるとまだまだ山の上にいるようだ。

次に向かったのは赤倉温泉街にある日帰り温泉「滝の湯」だ。朝に燕温泉に入ったばかりだがここでこの日2回目の温泉となる。滝の湯は、赤倉温泉の中心街から歩いて行ける場所にあるが、駐車場も完備されていた。駐車場に車を停めて車を降りると、大きな石が何個も並べられた石段の上に「赤倉野天風呂 滝の湯」と書かれた渋い看板がお出迎え。看板が木でできているのも、文字のフォントもなんだか渋かった。

赤倉温泉 滝の湯

こちらの滝の湯は赤倉温泉の源泉を100%掛け流しで提供している。そのため季節や気温でお湯の温度が変わるらしい。この赤倉温泉の源泉というのは、妙高山の北地獄谷という場所から湧出しており、その温度は50度を超えるらしい。その熱々の源泉が、数km離れた温泉街まで運ばれる過程で自然と人が入りやすい温度に下がるんだとか。水で埋めることがないので源泉そのままの効能をふんだんに感じられる、というのが赤倉温泉のお湯の魅力らしい。この情報は施設に入ってから脱衣所に行くまでの壁に書かれていた情報だ。

ちなみに脱衣所に向かう途中、温泉アイドルの「温泉むすめ」のボードも発見した。温泉むすめとは、日本中の温泉を擬人化したような二次元アイドルのことで、各温泉街でそれぞれ異なる温泉むすめが町をPRしている、というプロジェクトだ。赤倉温泉の温泉むすめは温泉の名前にちなんでいるからか赤いロングヘアーがとても印象的なお姉様だった。かわいい。

赤倉温泉の温泉むすめ、赤倉茅咲さま

温泉むすめの横を通過し脱衣所に入ると、他の客の服が一切見当たらない。僕はここが今めちゃくちゃ空いていることが分かった。ラッキーである。すぐさま服を脱ぎ、露天風呂に出た。この施設には内風呂はなく、脱衣所から出た途端野晒しになった広い露天風呂がお出迎えだ。朝に入った燕温泉の5倍くらいは広い気がする。数km離れた場所からやって来た源泉100%かけ流しのお湯が、浴槽に用意された滝から落ちていきこれだけ広い浴槽を満たしていることを考えるとかなり贅沢だなぁと思った。そのお湯を見て、燕温泉よりもお湯の透明度が高いことにも気がついた。

さて、この日のお湯の湯加減はどんなものなのだろう、と置いてある桶で掛け湯をする。おお、結構熱い。外の気温の影響でもう少しぬるめになっているのかと想像していたが掛け湯をした時点でそこそこ熱いことが分かった。何回か掛け湯をして身体を慣らし、ゆっくりとお湯に入っていく。浴槽が広い上に入浴客が自分一人しかいないため浴槽のどこで身を落ち着けようか少し迷った。ちょうどよく岩場によりかかれそうな場所を見つけてそこで肩まで浸かった。ああ、家の風呂よりちょっと熱いくらいの適温だ。すごく気持ちいい。燕温泉に入った時は周りの木々が良い具合に日陰を作っていたけど、この滝の湯の露天風呂は屋根になるようなものがないため浴槽に日光が直当たりしている。それもこの温泉の温度を高めに維持している要因なのだろうか。温泉に入浴しながら日光浴もしているような感覚だ。この温泉を独り占めしているという事実も自分の中にちょっとした征服感のようなものを芽生えさせ、悦に浸った。


さらにこの露天風呂には浴槽がもう一つある。それまで入っていた大きな浴槽は滝の湯という名前で、浴槽に用意された滝から源泉を落とすことで湯温を下げている。一方もう一つの浴槽は小湯船という名前。こちらは名前のとおり浴槽がかなり小さい。朝に入った燕温泉よりも全然小さい。そんな小さな浴槽のお湯はあっつあつだった。少し掛け湯をするだけでかなり熱い。他に誰もいないので掛け湯した時に「あつっ!」と言ってしまった。だがこれまで何度も熱い温泉に入って来た自分ならきっと入れるはず、という自信だけを頼りにゆっくりとお湯の中に身体を入れた。ああ熱い。だが昨日入った草津温泉や渋温泉の公共浴場ほどではない。あっちは内風呂だったからな。今は露天風呂だけあって熱いといえどまだ優しい。肩まで浸かって少し慣れたらとても快感だった。ちょうど良い熱気持ちよさだ。あまり我慢せずに入ることができる。僕がその熱いお湯に浸かっているタイミングで、おじさんが一人露天風呂にやって来た。僕の一人の入浴時間は、終わりを告げた。


一人の時間が終わりを迎えたこともあって僕は早々に身体を拭いて脱衣所に戻った。熱いお湯に浸かったので身体はポッカポカ。汗が止まらない。たまに露天風呂に出たり脱衣所の扇風機の風に当たったりしながら身体を冷ました。向こうで一人で入浴しているおじさんもこの後何かしらの優越感に浸るに違いない。僕は心の中でおじさんにごゆっくり、と言って服を着て脱衣所を出た。


施設を出て駐車場に戻ってくると、僕の車の隣に車が停まっており、その車の周りで50代くらいのおじさん三人組が楽しそうにしゃべっていた。そのテンションのまま彼らは温泉に向かって歩いて行った。僕が脱衣所を出る時に見たおじさんの静かな時間は、終わったかもしれないと思った。


車に乗った。次の目的地は決まっている。これから僕はこの地域ではとても有名な、豚汁定食がウリのお店で昼ごはんを食べるつもりだ。事前に調べた情報によると、行列ができる人気店らしい。この時大体10時半を回った辺り。あんまり並ばずに食べられたらいいな。僕の車は豚汁を目掛けて走り出した。

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