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自分もいつか怪人になってしまうかもしれないと思うと夜も眠れない

路地裏のつけ麺屋のカウンターで、僕の隣に座ったおっさんがつけ麺をすすっていた。

それだけならなんて事はない。問題は、そのすする音がとんでもない大音量だった事だ。

王貞治の娘、王理恵さんが婚約相手のお医者さんとの結婚が破談になった際の理由が

「そばをすする音がうるさい」

で少し話題になったが、もしあのお医者さんもこのおっさんくらいの大音量だとしたら同情できないな、と思った。

おっさんはスマホで何かを見ながら、肘をついて犬喰いで、くちゃくちゃと食べる。

その姿が本当に気持ち悪過ぎて、食欲が失せた。

運ばれてきたつけ麺を食べる為、イヤホンで『囲碁将棋の情熱スリーポイント』を爆音で流してなんとかおっさんの騒音が聞こえないように努めた。(やってみろよ)




街には奇怪な行動をとるおっさんがたまにいる。

コンビニで店員さんを怒鳴りつけているおっさん。

駅で一人、奇声を発してるおっさん。

電車で痴漢するおっさん、大声で電話するおっさん。

スーパーで「ポテサラくらい家で作れ」と言うおっさん

駅で女性にタックルするおっさん

くしゃみする時にマスクを下げるおっさん、、




怖い。

僕はとても怖い。

奴らの存在自体は怖くない。

あんなもん鼻叩いたら終いや。

僕が怖いのは、自分があの怪人達と同じ"おっさん"というカテゴリー内にいる事だ。

人は必ず歳をとる。おっさんになる。ジジイになる。ちゃんと歳を重ねる人が大半だが、加齢の過程で何かが壊れてしまって、"怪人"になる人が何割かいる。

自分もいつかそうなるかもしれない。その可能性がゼロでは無いのがたまらなく怖い。

非怪人化の誓いとして、そして誰かに「あなたは大丈夫」と言われたくてこの記事を書いている。

この前電車の中でぷりっとおならをしてしまった。昔より肛門括約筋が衰えているのかもしれない。恥ずかしい。

これが今は筋力だけだが、その内に羞恥心さえも衰えてしまい、「ぷりっ」から「ぶりぶり!!」になったら終了の合図なのかもしれない。

何かが壊れて突然怪人化するのか、それとも徐々に人間から怪人へとグラデーションで変わっていくのか、月夜の晩に全身から毛が生えて正気を失ってしまうのか、その生態は掴めない。

二、三体怪人をとっ捕まえて、なんでそうなってしまったのか聞いてみたいが、恐らく無理だ。

怪人は話が出来ない。「AかBか?」と言う問いに「D'!」と答える。

この世で最も恐ろしいのは話のできないジジイだ。その最上級がプーチンだ。




僕がもし正気を失って怪人になってしまったら、どうかひと思いに殺してほしい。

正気だった頃はたまに人を笑わせていた事もある。それに免じてなるべく苦しまない様に殺してほしい。

墓標はいらないから、路地裏に埋めて、花を一輪たむけてほしい。


コーヒーが飲みたいです。