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fulfill水科葵の形而境界のモノローグ

著者は以前、みずしーに対して形而境界のモノローグは2人で歌う曲であるし、precious stonesのように1人で歌うのではなく、みずねねで歌って欲しいと思っていると伝えたことがある。その時の返答は「ライブで観て欲しい」だった。

そんな私に、先日行われた、GEMS COMPANY 2nd ワンマンLive 「プレシャスストーン」で行われたfulfill水科葵による形而境界のモノローグのパフォーマンスについて語らせてほしい。

fulfillそして形而境界のモノローグ

そもそも、fulfillそして形而境界のモノローグを深くご存じでない方のために改めて説明をする。fulfillとはGEMS COMPANYグループ内の、水科葵と卒業メンバーの桃丸ねくとによるデュオユニットであった。

形而境界のモノローグはMONACAの瀬尾祥太郎(せおぱ)が2人が歌うために書き下ろした楽曲である。曲調はアップテンポなテクノロックで2人で歌うのにも難しい。歌詞は理想と現実の狭間で葛藤しながら未来に進んでいく内容となっている。


precious stones版形而境界のモノローグ

メジャーアルバムprecious stonesはfulfillのメンバーであった桃丸ねくとの卒業後の2020年秋に発売となったため、同アルバムに収録された形而境界のモノローグは水科葵がソロで歌うfulfill水科葵バージョンとなっている。

このバージョンでは、もともと桃丸ねくとが歌っていたパートと水科葵自身が歌っていたパートで声色を変えて歌い分けている。特に桃丸ねくとパートで桃丸ねくとに寄せた歌い方をしていて、fulfillを一人で再現していると感じる方が多い。

この歌い分けという手法はレコーディング作品では可能だが、果たしてライブでできるのだろうかという思いもあり、冒頭で述べたようにみずねねでの歌唱について言及するに至ったのである。

プレシャスストーン版形而境界のモノローグ

さて、そのような経緯の元で開催されたプレシャスストーンにおいて披露された形而境界のモノローグだったが、precious stones版のほどの明らかな歌い分けではないがどこかに桃丸ねくとを感じる歌いだしで始まった。

また、MVでは水科葵と桃丸ねくとが交互に行っていた「DIVE」という歌詞に合わせて崩れ落ちる振り付けでは、すべての「DIVE」で水科葵が崩れ落ちるという一人二役ともいえる動きを見せていた。

そして、後半に入り盛り上がりを見せたところで事件が起きた。

「たとえ現実に邪魔れても構わない」の部分をアレンジし「構わないだろ!」とシャウトしたのだ。

そこで気が付かされる。理想と現実の狭間で葛藤しながら進んでいくというこの曲の主題は、まさにfulfillが立たされている状況であると。

前述のとおり、fulfillのメンバーであった桃丸ねくとは卒業している。難聴を伴う病気のためだ。fulfillは現実に邪魔されてしまったのだ。

もちろん、この曲は現状をもとに作られたわけではない。曲のテーマが普遍的なものだったともいえるが、現状が後から曲の内容に追いついてしまったのだ。

水科葵のシャウトはこの事実を観客に衝撃をもって叩きつける魂の叫びであった。

だからこそ、水科葵は一人で歌うことにこだわり、自らを「fulfill水科葵」と呼んで形而境界のモノローグと向き合ったのだと、そう思わせる叫びであった。

形而境界のモノローグはこうして次元を一つ上げた作品へと昇華された。そこには、水科葵の強い思いがあったことは間違いない。

最後に

そんなfulfill水科葵の形而境界のモノローグはアーカイブとして視聴可能だ(執筆時点)。9日の昼公演で目撃できるのでぜひ視聴して欲しい。


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