見出し画像

#014 ゴキブリが気持ち悪い、という思考停止

やさかもです。

タイトルのせいでこの記事をクリックしてもらえない気がしています。

僕が選んだ研究室

僕は35歳の時、仕事を辞めて大学院生になった。大学院というのは、授業を受けてレポートやテストをこなす以外に、研究をして、論文を書き、それが学内の審査で合格することで修了となる。博士課程ともなると、何かの専門雑誌に投稿(掲載)されることが条件となることが多い。

研究テーマと研究指導者を決めることが、入学して最初にやらなくてはいけないことだ。そして、研究指導者(教授・准教授)とは、向こう2年間(博士課程なら3~7年)のお付き合いとなる。学生の研究テーマは基本的に、指導の研究室(教室)が扱っているテーマの中で決める。

医学系、感染症関係の専攻だったので例えばこんな具合。

・ウイルスの教室 → HIV、インフルエンザ、デング熱、狂犬病、ノロ

・寄生虫の教室 → 住血吸虫症、アフリカ睡眠病、アメーバ赤痢

・細菌の教室 → コレラ(下痢症の代表格)、サルモネラ、髄膜炎


医者でも看護師でもない僕が選んだ教室、それは、

病害動物分野

どどーん。読んで字のごとく、病気媒介するような動物に関する研究をするところだ。哺乳類よりも、どちらかと言えば蚊などの昆虫を扱う研究が多い。蚊を侮るなかれ。蚊は世界で2番目に、多くの人間を殺している動物だ。マラリア、デング熱など、蚊が媒介する危険な感染症は多い。

※日本には基本的にマラリアの原虫やデングウィルスがいないので、蚊に刺されてもこれらの病気に罹る可能性は低い。ただし、外国人が日本に持ち込む可能性はあって、代々木公園でデング熱がアウトブレイクしたニュース(2014年)を覚えている人も多いだろう。

ちなみに、最も多く人間を殺している動物、それは人間である(戦争・紛争・殺人でね)。

ゴキブリで思考停止しない人

病害動物分野では先生によって専門が様々。蚊、ダニ、ノミ、中にはバッタ、そしてゴキブリの専門家もいらっしゃる。

ゴキブリの専門家は、学内でゴキブリがでると嬉々として素手で捕まえ、すぐさまお腹を見る。「あーこれは▼△■○★ゴキブリの雌だわ。別に珍しくないよ。」とか平気で言い放ち、ポイっとその辺に返す(笑)。ちなみに女性研究者である。

北海道で育った僕は、18歳までゴキブリを見たことがなかった。ゴキブリは強烈だ。気持ち悪い以外の何者でもない。叩いて殺すことすらキツい。見つけ次第、箒でアイスホッケーのように部屋の外にお引き取りいただくようにしている。

だが思うのだ。上述のゴキブリ専門家がもともとゴキブリを素手で触れたかどうかは別として、そこに情熱を注いでいるという「選択」にこそ見習うべき点があると。人が嫌がること、手間だと思っている事の中に、世の中のニーズがあるからだ。だから、ゴッキーに対して「キモっ!!」と感じ、反射的にアイスホッケーの準備にとりかかる僕は、もしかして思考停止をしているのかもしれない。(もちろん、これからも彼らを素手で触る予定はない。)

闘うべき場所

僕は今のところ、子育てをしたことがないけれど、世界を広げる教育ってこういう事なんだと思う。海外を「イッテQ」で知るのも悪くないけれど、実は別世界ってその辺に転がっていて、普段見ないようにしているんだよね。

前回の投稿でも書いたけれど、僕の研究指導者からのキャリア指導。

みんなが上がろうとしない土俵で闘いなさい。

いつもキャリアを考える上で念頭に置いている。あまりよそ様と闘いたくないからだ(笑)。

余談だが、僕の研究室はいつも優しい雰囲気が流れていた。おそらく、医師がいないからだと思う。僕の指導者はもともと魚の研究者で、若いころは北方領土や中国などでギリギリの活動をしていたらしい。30代後半で、アメリカの大学にて博士号と取得され、現在は蚊の専門家として世界中を飛び回っておられる。

ちなみに研究室には獣医さんはいなくて、ほぼ理学部出身の先生たちだ。理学部ってキャリアの幅がとても広いのだと知る。

おまけ:バッタの研究者

病害動物?何それ面白そう!と思ったあなたには(いないと思うが)、次の本をお勧めする。モーレツに面白いので是非。サバクトビバッタというバッタの研究者だ。農作物を荒らすことで、国の農業に大打撃を与え、結果として飢餓を引き起こし、人々を殺してしまうというバッタだ。

「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎 著、 光文社新書


14日目 おわり。