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FAUST - The Faust Tapes

1973年に発表された3作目のアルバム。アヴァンポップ、アヴァンプログレのあらゆる要素を詰め込んだ1枚。とめどない即興とテープ編集によって細かく区切られた各トラックが間断なく続く。エクスペリメンタルな姿勢は新鮮さを保っていて聞くたびに新しい発見を覚える。

J’ai mal aux dents(フランス語で「歯が痛い」という意味)は、本作中最も長尺な1曲だが、冒頭は2分弱、2小節のポストパンク的なアプローチでタイトルを歌い続けるミニマルな展開の後、ジャムセッションを経て、再びミニマルな演奏に入るがここではサックスソロが素晴らしい。徐々にボーカルが入り、リズムトラックが後退し、ミニマルとインプロの間を行き来する。実験的でありながらポップな要素が通底している素晴らしいアプローチだと思う。

Dr. Schwitters (Intro)は、ジャムセッションの一部を切り取ったような編集で30秒に満たない短いトラックだが、ワンコードの中で煌びやかなオルガン、ギターの性急なインプロ、電子音、ローファイアプローチのドラムによる華やかで印象的な演奏を垣間見る。

Chere Chambreは、アコースティックギターの淡く浮遊感を伴ったフレイーフォーク的なアルペジオがとても美しい。ポエトリーリーディング的なつぶやきは最後に「私たちは過去を認める必要があるのか」と締めくくるがロードムービーのシーンを切り取ったような朗読が続く。つぶやき自体がカットアップを用いた作品のようでもある。

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