[介護ライブレポート]薬篇 「飲み忘れ」と「一包化」

[介護ライブレポート]薬篇 「飲み忘れ」と「一包化」


これまで、我が家の「在宅ひとり親問題」について、実際にどのように取り組んできたのかをご報告してまいりました。
多くの方にお読みいただき、本当にありがとうございました。

実は、私は調剤薬局に勤める「薬剤師」です。
職業柄、いろいろな方からお薬のご相談をいただきます。
処方せんをお持ちいただいた患者さんはもちろん、自分の家族、親戚、友人と多くの方からご相談いただき、私自身も勉強をさせていただいております。
今回は、日頃のご相談の中から、高齢者の方の薬に関する話題を紹介します。
もしも、ご両親が遠方にお住まいで、病院にかかられている場合にはご参考になればと思います。


[飲み忘れの対応]
ご高齢の患者さんからのご相談の中でよくいただく質問のひとつに「薬を飲み忘れたときの対応」があります。

実はこの質問は、なかなか難問のひとつです。
というのも、飲まれている薬によって答えが違ってくるからです。

飲み方が、1日1回の場合と1日3回の場合では、答えは異なります。
1日1回の薬でも、種類によって飲み忘れの対応が違うケースもあります。

また、その薬の飲み忘れたのに気付いたのがいつかでも対応が違ってくるのです。
たとえば、患者さんが朝1回だけ薬を飲んでいたとします。
その薬を飲み忘れたことを、いつもの服用時間の1時間後に気づいた場合と12時間後に気づいた場合では対応が違ってくるのです。

だから、薬の飲み忘れに気づいたときに「かかりつけの医療機関に連絡し、対応を確認する」のが正解になります。

飲み忘れの回数が多くなったと感じたときには、かかりつけの医師や薬剤師に相談するのがよいと思います。
あなたに最適な解決方法を考えてくださると思います。

たとえば、「一包化」です。
飲み忘れの代表的な対策である「一包化」をご紹介します。


[一包化]
一包化とは、「朝食後」などの服用するタイミングが同じお薬を1回分づつパックにすることです。
例えば、朝食後に5種類の薬を1錠づつ飲んでいたとします。その場合、5種類の薬を1 つのパックにまとめて入れます。
朝ごはんが終わったら、そのパックを開けて中の薬を飲めば終わりです。

袋には、患者さんの希望に応じて、名前や、飲むタイミング、日付などの印字をすることができます。
通常は「朝食後」や「就寝前」などの薬をのむタイミングを印字しますが、他に希望がある場合には相談してみてください。
介護施設に入所されている場合には、患者さまの「お名前」を希望されることが多いです。

=印字例=
・用法:「朝食後」「就寝前」など
・服用日:「1月1日」
・氏名もしくは施設名:患者さんお名前や「○○病院循環器科」など
・色:一包化の上部に色の線を入れる
・薬の種類:「便秘薬」「痛み止め」など


一包化してもらうためには医師の指示が必要となります。診察時に医師に相談するか薬剤師に相談して医師に確認をとってもらいましょう。もし、医師の指示が得られない場合でも、実費負担になりますが、ほとんどの薬局で一包化することは可能です。
複数の医療機関でもらっているお薬も相談すれば、合わせて一包化することができます。その場合は、日数調整が必要となります。

なお、一包化するとその分だけ薬代が高くなります。日数などによって金額は変わりますので、薬局であらかじめ確認しておくのがよいと思います。

一包化の注意事項
お薬のなかには、一包化できない薬もあります。
たとえば、吸湿性が高い薬です。このような性質をもつ薬は、PTPのシートからだすことができないのです。
ご自身が服用されているお薬が一包化できるかできないかは、薬剤師の専門的判断が必要となりますので、相談するようにしましょう。

一包化のメリット
1)飲みやすい
リウマチなどの病気で手の動きが不自由な方、薬が小さくてシートからうまく取り出すことができない場合などでお困りの場合は、一包化は大変に役立ちます。
一包化されたお薬は1回飲む量が一つの袋にまとまっており、PTPシートから一つ一つ取り出す手間がないからです。

2)飲み間違いを減らせる
1回分ずつ袋に入っているので、飲み間違い(服用するタイミング、服用の数量)を防ぐことができます。
用法(「朝食後」などの飲むタイミング)も袋に印字されており、確認できます。
さらに、服用するタイミングによって色をつけたり、日付を印字してもらうことも可能です。
ご家族や介護職員の方がお薬を管理する場合も、薬の管理がしやすくなります。

介護施設を利用している場合で、薬の管理を施設の方に依頼している場合にもメリットは大きいです。というのも、施設の方がお薬を管理する場合、薬の袋に名前が印字されているからです。他のヒトのお薬と取り間違えるというミスを防ぐことができますよね。そのため、施設の方からは一包化を依頼されるケースが多いです。


一包化のデメリット
一包化は便利な面が多いのですが、デメリットもあります。

①どんな薬かがわからなくなる
1回分の薬がまとまって入っているので、どのお薬が何の効果を持っているのかはわかりづらくなります。ただし、調剤薬局でもらう薬の説明書には、どのような効果の薬かが確認できます。

②お薬の変更・追加には調整が必要
薬の一部が変更になったときや別の薬が追加・中止になった場合には、一包化を作り直さなければなりません。このような変更があったときには、残っているお薬をすべて薬局にもっていき、変更になったお薬の部分を調整して、再度一包化してもらうようにしましょう。

③薬局で一包化を用意するのに時間がかかる
基本的に、一包化は薬の変更がないかを処方せんで確かめてから用意をすることが多いため、通常の薬よりも出来上がるまで時間がかかってしまいます。
薬局に処方せんを渡して受付を済ませ、時間を置いてから薬局に取りに行くと時間を有効に使えます
また、処方せんのFAXなどのシステムを上手く活用するのもいいと思います。


[お薬カレンダー、お薬ケース]
一包化と併せて活用すると、さらに薬の管理がしやすいアイテムがあります。
それが「お薬カレンダー」「お薬ケース」です。
壁かけタイプと箱のタイプがあり、曜日別に飲むタイミング(朝・昼・夕・寝る前)ごとにお薬をセットできるようになっています。

一包化されたお薬をセットしておけば、その時に飲むお薬が一目で分かり、飲み忘れもチェックしやすい便利なグッズです。
調剤薬局では、お薬カレンダーやお薬ケースの販売をしているところもありますので、ご相談されてはいかがでしょうか。


以上、「薬の飲み忘れ」と「一包化」についてご紹介しました。
この記事が、皆さまのご両親の親孝行に役立ちますように。


以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?