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ごはんについて書くための習作59

仕事で大阪の矢田(「やた」と読むということを別の仕事仲間に聞いた)に来ている(「いる」と書いている今は、帰りの新幹線の中なので正しくは「いた」)。二日にわたってウェブサイト用の取材と撮影の立ち会い。デザイナーの私は撮影も取材もしないので、ただぼんやりと横に立って二日過ごした。
仕事は学校のウェブサイトのリニューアル。二日目(今日)の昼、ライターの後藤さんが調べてくれた学校からほど近い寿司屋に行った。昼の寿司屋の話を一旦、すっ飛ばして書くと、仕事終わりの夕方、日が伸びてきて仕事を終えた午後五時半でもまだ明るかったのでまさに夕方、同じ寿司屋に後藤さんと行った。リピート/1day。さて、昼夜どちらの寿司について書くべきか。

夜にしよう。その寿司屋は住宅街の十字路の角にあって、すりガラスの引き戸が入り口。薄暗くなって、中からもれる光と影でお客さんが一人ということがわかった。カウンターしかない。10席ないくらいだったか。昼に食べた寿司の味と、その住宅街にある佇まいに浮かれる二人。引き戸を開ける手に迷いはない。

昼は女将さんと大将(寿司屋で「大将」なんて呼んだことはない)でやっていたが、夜は大将のみらしい。二階から女将さんのらしい咳が聞こえる。
普段の寿司屋と違って、ここは小皿に出せるような醤油がない。刷毛が浸かった壺に醤油が入っていて、刷毛で寿司に塗る。いい寿司屋が煮切りを塗って出すようなもののセルフ版。昼間はそれが分からず、マグロの握りをそのまま二人で食べてしまった。
一日二回も来れば勝手知ったるもの。カウンターの右の壁に掛かっているメニュー以外のモノもある。昼に来ていたことはもちろん覚えられていて、握りではなく刺身を出してもらった。店に向かう道中、「まずは刺身でもらうのがいいね」と話していたので勝手知られていた感がある。昼に瓶ビールを呑んでいたので、とりあえずビールを済ましていた我々は冷酒。
このままではグルメレポートの端くれみたいになってしまう。ただ、鰻の寿司が蒲焼の下にちょこんとシャリがあるというくらい(シャリは小さくないのに)鰻がでかいということだけ書いておきたい。

夜予定がある後藤さんは刺身と冷酒と鰻の寿司などをやって先に帰った。昼も鰻で夜も鰻で締めていった。「鰻重」と称して。空いた隣の席には近所のおばさんが座った。シェアしていた刺身を食べ終えた私を見て、大将が白子ポン酢を出してくれて、隣のおばさんもそれにのった。「白子はいいですよね」とわずかに言葉を交わす。

白子はいいですよね。

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