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ごはんについて書くための習作66

先週までの予報と違って、時々日差しもあるような天気。釣りの予定をキャンセルしてしまった月曜日。午前中、YouTubeを見ながら簡単な仕事をする。11時30分。ゆっくり読書がしたかったので、少し早めに家を出ることにした。うちのアパートは内装こそ綺麗になっているが外観は築年数を体現していて、ポストも同じ。汚れたポストに白い封筒がねじ込まれている。見ると公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)の入会申込みが承認されたという通知書のよう。ねじ込まれたままでは、と玄関に戻る。
この入会には推薦者が必要で、署名してくれた友人にLINE。高校受験の合格発表で自分の受験番号を見つけたとき、親に連絡しただろうか。覚えていない。道には雨の跡もない。日差しもある。入会を祝って、城近くのカフェのテラス席でビールでも飲もうと向かったが、前日までの天気予報を受けてか、席がない。パラソルを刺す穴だけが点々と残る。仕方なく蕎麦屋へ向かう。

調理場に近いカウンターに座る。顔見知りの店員が二人。一人だと伝えると「(子供は)保育園ね」と言われ、そうですと返事をした。うちは保育園ではなく幼稚園だったと後から気付くが、訂正しても仕方ない。メニューを開く。「ご飯ものの注文止めてくれ」店員同士が話すのが聞こえたが、店内は二組くらい。売り切れるにも早い。試すように天ぷらと蕎麦と小鉢に白ごはんが付くセットを注文してみたが、やはりご飯がないという。分かってはいた。めかぶ蕎麦と蕎麦豆腐、瓶ビールを注文。
蕎麦粉を練って作られた豆腐とビールがくる。祝杯。四角い豆腐には山葵が乗っている。団体が入店。11人だという。予約時に注文済みだったようで、彼らの分でご飯が終わってしまう、ということだったのだろう。蕎麦豆腐の四角さを崩さないよう、直方体を切り出すようなかたいでつまむ。やや横長だった豆腐が立方体になる。
最近は仕事が落ち着いているのでなるべく読書をしている。今日の本は『銭湯』 福田節郎。ひとつの文が長く、二つの段落で見開きが埋まるほど。状況を俯瞰したような表現も合わせて好み。15ページほどそう読んで思った。文章に気が取られ、蕎麦豆腐の角を斜めにつまんでしまう。角が欠けた。ファイルを示すアイコンのような角の取れ具合。取り繕おうと斜めになった部分に箸を入れるが、上手くいかず、豆腐が転ぶ。

団体の料理が運ばれきって、私のめかぶ蕎麦が運ばれてきた。ビールはまだ半分以上残っている。めかぶを残して、つまみとしようと蕎麦を中心に食べようとしたが、失敗。よく混ぜてしまった蕎麦とめかぶが絡みあい、良いバランスで口に運ばれ続けた。転んだままの蕎麦豆腐を起こすが、つゆを吸ったのか、柔らかくなって倒れやすくなり、諦める。予約は11人だったが、10人しか来ていないよう。店員同士が話しているのが聞こえる。ちらりと団体の方に目をやるが待ってる様子はない。私の白ご飯が取れた可能性と、人数変更を伝えられていない店にかわって少し腹を立てる。転び続けた蕎麦豆腐はすっかり丸くなった。

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