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デザイナーは正確さをもって、間引く

こんにちは。間引いた芽は別のプランターに植える、もしくは水栽培する、ウェブデザイナーの横田です。正確さ間引き。一見、相反するような言葉ですが、私たちデザイナーの現場に限らず、この二つの間をいったりきたりすることが大切な場面も多い、という話です。

正確さ

さて、私。主にはデザインを担当するものの、案件によっては簡単なフロントエンド(HTML / CSS / JS)や、CMSの構築など、実装と呼ばれる部分も守備範囲だったりします。この実装、制作物をブラウザなどの機械に対して渡すものなので、かなり正確さが求められる印象です。機械がよしなに受け取ってくれればよいのですが、まだそうではないので、早く釣りに行くためにはタスクランナーなどを使って作業効率を高めるほかありません。

間引くこと

間引かれたくないですね、釣りに行っている間に席がなくなっていたとか。さて、昔からよく言われていて、もはやそのせいで脳がそう認識してるんじゃないか2019ですが、人の脳は物事や表現の間(間引かれた部分)を補完する、という話があります。アニメーションで落ちているフレームや漫画のコマを補完している、というヤツです。1から10まで言わずとも、1と10だけで間を想像できたり、1から5までで10を想像する、そんな脳が多いらしいと。逆に緻密な作品や丁寧な説明を目の当たりにすると頭があがりませんが、そう感じられる・想像できる範囲では間引く方が心地よい場合がある、そう私は考えています。

正確さを求めつつ、間引かれることを許容できるからこそ、情熱と冷静、ノリとツッコミ、齟齬と説明責任のあいだを楽しむことができるのですね。

間引かれた実装

先日、公開したイベントのウェブサイトでデザインと実装をしているのですが、程よく間引かれた実装ができたと思っているので具体例として紹介します。音が出ます。
https://www.rittor-music.co.jp/rittorbase/touchthatsound/

音がでましたね?スクロールのスピードと方向に合わせて。出なかった人はInternet Explorerというブラウザか、古の時代のマシンをご利用しています。(サイトで使用している音声は、イベントのタイトル「Touch that Sound!」を出演者でもあるHello, Wendy!の大野さんに読んでもらいました。そして、3/24まで開催中です。)

↑音楽のイベントなので素直に音を扱いたい。
↑ただ音声を置くのではなく、閲覧の動作(スクロール)に連動させたい。
↑音楽ではないので、ターンテーブルのように再生・逆再生させたい。

と思ってデザインを進めていました。ウェブサイトで音声ファイルが扱えることは知っていましたし、再生速度は変えられるだろう、という予測はあったのですが、簡単には「音声ファイルの逆再生(マイナスの再生速度設定)ができない」という壁にソッコーで体当たり。ただ、同じようなことをしようとしている人はインターネット上に1,000,000人くらいいるので、できないことはないですね。いました。

技術的なことは省略しますが、JavaScriptとWeb Audio APIとインターネットの力によって逆再生された音声を生成できた私は、スクロールの方向に合わせて音声をコントロールできたのですが、1進んだら1再生する、1戻ったら1逆再生するという正確な実装では、あまりよくなかった。正確にスクロールと連動させた最初の実装では、正しさはあるものの、人の声ということもあり、やや気持ち悪さや聞き取りにくさがありました。

間引くことで正しく伝える

うーむ。そして、正確な実装版は(わたしの技術が未熟なために)音を鳴らす処理がややパソコンたちへの負荷高めだったこともあり、負荷を下げるため、試しに再生スピードを調整するタイミングを間引いたんですね。
そしたら、どうでしょう。(初期バージョンが聴けない時点でどうもこうもないですが)聞き取りやすくなったんですね。そして、わずかにスクロールとずれて音声がコントロールされる感じがむしろ遊びがあってイベントの特性を正しく伝えられていて良いなと。

なるほど、実装にも間引きが有効な場面があるのかと。

……わかりにくいですね、さらに少し噛み砕きましょう。

2019年2月15-16日@真鶴岬の地磯の場合

日時:2019年2月15-16日
場所:真鶴半島 番場浦海岸
潮:中潮
参加者:横田、和田

2月15日金曜日、深夜23時。弊社の釣り部長と真鶴の港で落ち合います。本当は横浜からタチウオをルアーで釣る船に乗ろうと思ったのですが、不運にも休み。しかたないのでアジ、イカ、青物、根魚を求めて真鶴にやってきたのです。我が家からは車で30分ほど。

金曜日の深夜23時から翌朝10時まで、仕事のリリース前でも私は避けるスケジュールを釣りでは行えるんですね。とはいえ、11時間ずっと集中していることは釣りでも難しいです。そのためには、集中力や作業を間引くことが必要になってきます。

差分に目を凝らすことで正確に間引く

疲れたから手を止める、それではせっかくのチャンスを逃します。じゃあ何をきっかけに間引くべきか。それは環境の差分に敏感である必要があります。

海も仕事も状況や刻々と変わります。それは表層に現れる潮目であったり、潮位(潮の満ち引き)であったり、ルアーとラインを通して感じる潮の流れの変化であったり。目と手を凝らすと多様な変化を感じることができます。

魚は変化を好みます。この変化に合わせて集中力を間引いたり、あるいは手を止めて体を休めたりすることで、魚のノリに自分たちも合わせていくことで、よりよい結果を得ることができます。

また、ルアーを投げ続けていたところを一旦休める、と言うこと自体が魚にとっての変化にもなる場合があります。アオリイカなどは短期記憶・長期記憶が可能という実験があり、短期記憶としては10〜30分ほどは一度見たものや体験を記憶しているそうです。これはわたしの感覚ですが、仕事などの表現においても、隙間なく投げ続けられているようなモノよりも、ほどよく隙のある方が心を動かされることが多い・自分の中に取り入れやすい、気がします。

魚や人に届けようとする場合には、自身の作業だけを過信せず、環境や文脈へも敏感になることが大切なのです。

まあ、釣れなかったんですけどね

あの手この手、場所を変え、それでもうんともすんとも言わず、釣れませんでした。ただ、今回行った磯はあの村越正海さんも通っている場所で、彼のTwitterをみると同じ場所に立っていたようなので、よい収穫になりました。

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