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ごはんについて書くための習作57

駅を降りると予報どおりの強風。海辺で椅子を出してパンを食べるのは難しいと判断して、駅前商店街のパン屋を素通りした。数ヶ月ぶりにシェアオフィスに向かっている。10時過ぎまで自宅で仕事をしていたので、駅に着いたのは11時前、すぐ昼になる。
前職で何年も前に作った他部署(在籍時の私からみて)のウェブサイトのメンテナンスを頼まれ、手元に元データのないソースコードを触っていたら12時を過ぎていた。こういう「作業の中の作業」というべき仕事は人がいる環境がいい。

やはり強風。5mはありそう。近くのカツカレー屋に向かうが休み。「カツ」繋がりで、前にも文章に起こした鳥かつの定食屋に向かう。手前のビルが大規模な改修をおこなっていて見えなかったが、営業中の赤いのぼり。ボリュームと味の濃さを思い出し、体力と腹の空き具合を確かめる。入店。

誰もいない。カウンターには手のつけられていない厚揚げ。

しばらくして奥のキッチンから声が聞こえて、店のおばちゃんが出てきた。特に声を掛けられたわけではないが、私を覚えていそうな雰囲気があったので、私も何度目かですよという雰囲気を「こんにちは」に、込めた。
この文章を書いている時点の私だったら「とりわさ丼」にしているが、久しぶりにきた勢いのまま「とり南蛮」を注文。

待っているとカウンターの奥のトイレからお爺さんが出てきて、厚揚げの前に座った。席を仕切る透明な板でよく見えていなかったが、手元にはレモンサワーもあるようだった。背丈は元々低そうだが丸まった腰のせいで、何もしなくてもレモンサワーのグラスに口が届きそうだ。容姿、注文ともにコンパクトだ。

私のコンパクトではない料理を受け取る。メインのとり南蛮は鶏が平たく揚げられ、2センチ幅に切られている。カツの量に対して多すぎるタルタルソース。半分くらい食べ終えたところで見ても、どうしても多い。他の付け合わせも多い。ポテトサラダ、酢豚、鯖の塩焼き、卵焼き、春菊の胡麻和えなど。
どうしようかともう一度、トレーを俯瞰する。ポテトサラダの横にあったカニカマに気を取られていたが、よくよく見ると、大量に添えられている千切りキャベツにはドレッシングがかかっていない。こんなにも濃い味を推奨しているというのに。なるほど、タルタルソースをキャベツに合わせて食べることを推奨しているのだ。
相性は完璧だった。タルタルとキャベツ、タルタルとキャベツと鶏、どちらも旨い。キャベツでご飯の消費も抑えられ、他のおかずをご飯と食べることができた。

ひとしきり食べ終え、味噌汁を飲む。具のワカメのかたさが、今朝食べた味噌汁のワカメの硬さとまったく同じことに気づき、妙に冷静な気分になる。会計を済まそうと、立ち上がった時、テーブルの調味料が置かれたところにオレンジ色のドレッシングがあることにも気付いた。

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