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ごはんについて書くための習作56

キッチン「ンゴ」だと思ったまま店の前まで来た。キッチン「ゴン」だった。京都に来ている。大阪で仕事がある。大阪で仕事があるときは京都に宿をとって、レンタカーで移動することがルーティンになってきた。大阪には夕方着けばよいので、少し早めに移動して京都で昼食をとることにしていた。

…と、これは先月末の話で、ここまで(僅か112文字)を帰りの東海道新幹線で書いたところで乗り物酔いし、ノートパソコンを閉じてしまったままだった。2週間が経ってしまった今日、キッチンゴンでのメモが残るiPhoneをみながら続きを書いてみている。

ちなみにメモはこうだ。

ンゴだと思いながら。
ソースで汚れた皿が2つ。
ゴンランチか。
メニューをあまり見返しているとゴンに不慣れな人だと思われないか。
机を拭く奥さんが下がったタイミングでそっとメニューの前後を入れ替える。

ソースで両皿汚れているのはcかb。何故か右下から反時計回りでabcスープは明らかに飲むサイズがいい
後ろの子供に聞こえないように
かたいかたい
クリームソーダ

iPhone13Proのメモより

かたいかたいクリームソーダ。キッチンゴンは、一緒に仕事をしている会社のオフィスが京都にあって、そこのデザイナーにお薦めされた。この文章ではデザイナーの彼を仮にゴンと呼ぶことするが、以降出てくることはない。私が入店する前にベビーカーを押した同い年くらいの夫婦が先に入店しようとしていた。急かしてはいけないとドアから離れ、少し後で夫婦に気付かれないよう待つ。店の人の子供連れに対する対応も嫌な感じはなかったので、関東の人間が一人で入っても大丈夫だと思った。カウンターに通される。男性客の間に2席空いている。食べ終わりそうな人の隣を選んで座る。
メニューは一冊ではなく、ラミネートされた何枚かのメニューが置かれているタイプ。事前にウェブサイトで予習してきた「ピネライス」を探す。「ピネライス」はチャーハンに豚カツとカレーが乗っているものらしい。店の人が水を運んでくるタイミングまでにメニューを決め、水を受け取る代わりに注文をする。ライス、といってもチャーハンの量は一番少ない220gにした。CoCo壱番屋のカレーが300gだったことを思い出す。

隣の男性が帰った。横目で彼の皿を見るとソースで汚れた皿が2つ。「ピネライス」を2皿というわけもなく、何を食べたらそうなるのか。反対側に目をやる。1席空けた右隣の男性が食べ終わろうとしている方にも2皿ある。常連はピネライスの単品ではないことだけ分かった。メニューをあまり見返しているとゴンに不慣れな人だと思われないか。帰った隣の食器を片付け、机を拭く奥さんが下がったタイミングでそっとメニューの前後を入れ替える。
「ゴンランチ」か。「ピネライス」に加えて、ハンバーグやエビフライなどがセットになっている。口が休まらない気がする。

「ゴンランチ」に比べて(食べていないので比べられないが)、私の「ピネライス」の220gはすんなりと食べることができた。メニューには書いてないが、店の入口に貼られていた「プリン」を思い出す。ランチタイムは値引きとも書いていた。念の為、カウンターから見えるところに「プリン」の文字がないか探すが見当たらない。恐る恐る店の人にプリンの有無を確認。あるという。
私の後ろのテーブル席には別の子連れ。子供は4歳くらいだろうか。きっと彼はプリンの存在に気付いていないはず。私がプリンを注文したことで駄駄をこねても親は面倒だと思い、小さな声で店の人に伝えたが、はっきりとした声で注文を確認されてしまった。

私がかたいかたいプリンを食べ終えて席を立った時、彼はクリームソーダを飲んでいた。

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