てんやがご馳走じゃなくなった

私の大好きだったチェーン店の話をしたい。

ファミレスではサイゼが好きだったが、
いわゆるファーストフードで考えると
私が好きなのは断然「てんや」だった。

小さい頃、体操教室に通っていた。
父はカルチャースクールの
支配人をしていたので
割引がきくとかで、私はわざわざ
蒲田かなんかのスクールに通っていた。
体操は本当に才能がなく、倒立すらもできずに
毎週泣かされていた記憶しかない。

でも、帰りに父と一緒に蒲田の商店街で
てんやの天丼を食べるのが楽しみだった。
「天ぷら=ご馳走」という思考の私にとって
てんやはすごく贅沢な食べ物に思えた。

出て来るのが水じゃなくて麦茶なのも
子供心にポイント高かった。
通ぶって「タレ多めで!」と
てんやのカウンターで言う小学生、
よく考えると異常に恥ずかしい。

ノーマルの天丼は確か
きすとイカとエビが入ってるんだけど、
魚が苦手な父がきすをくれるので、
私は嫌いなカボチャとトレードしていた。
私は基本、好きなものは
最後にとっておく派なので
私が残していた大きいエビの天ぷらを
父が「残すのか」と勘違いして
食べてしまったときは
泣いて喧嘩になった。

ある日親戚の子供が遊びにきたとき
何かの用事でみんなで蒲田に行った。
「私よく帰りにてんやで天丼食べて帰るの」と自慢げに言った時に
「え、なんでてんやなんか行くの?」と
おばさんが笑ったのを見て
なんかしゅんとしてしまった。
ちょうどその頃体操教室をやめたのもあり、それ以来てんやからは
足が遠のいてしまった。

これまでもてんや自体は
見かけたことがあるんだけど、
なんとなく行っていなくて、今日
引っ越した家の近くにあるのを見つけて
めっちゃ久々にてんやに入った。

出てきたのが水じゃなくて
麦茶だったのを見て
すごい昔が懐かしくなって、
実はちょっと憧れていた上天丼を
「タレ多めで」と言って頼んだ。

出てきた上天丼は、
メニュー写真盛りすぎだろ!ってくらい
エビが小さくて、ご飯全然見えてて、
あんなにエビが大きいって思ってたのに、
それを見て、ちょっと安心して
めっちゃ泣けてしまった。
タレのかかったご飯は
遅くに行ったのもあってなんか硬いし
だいぶしょっぱかった。
一番食べられたのは
ずっと嫌いだと思っていた
カボチャの天ぷらだった。

てんやがご馳走じゃなくなった。
私も大人になった。


#大人になったものだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?