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《Deep Red Sugar Saxophonist》第3話

 これは、中学時代に書いたお話です。
 昔使っていたパソコンから、そのままデータを移しました。
 訂正なし、原文ママです。
 途中まで公開しますので、どうか生あたたかい目で見守ってやってください。

(前回のお話はこちらから↓)


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 南走部通り。別名「サウスランパート」とも言われている通りだった。周りをレンガ造りの建物に囲まれ、滅多に人が通らない道だった。近くの高校の吹奏楽部員たちは、ここの一部 を「第二部室」として使っている。どの地図にも載っていない通りなので、「地図にない通り」とも言われていた。
 靖人は狭い道に入った。速度を落とさず、靖人は走った。
 道が少し広くなった。靖人は止まって息を整える。家から南走部通りまではかなりの道のりがある。靖人は、とても苦しかった。
 自分の荒い息に混じって、誰かの呻き声が聞こえる。反射的に、靖人は壁に隠れていた。
 長く、美しい髪。上が白、下が黒の服装。服の白い紐が揺れている。そして、わずかな月の光で、靖人が見たもの。

 澄んだ茶色の瞳。
 間違いない。綾子だ。

 靖人は、綾子の右腕を見て血の気が引いた。
 ・・・綾子の右腕は、赤く染まっていた。
 綾子は右腕を左手で押さえて座り込んでいた。血は止まらない。
 苦しそうだった。そして、とても痛そうだった。靖人は綾子に近づこうとする。
 銃声が響いた。靖人は足を止める。
 綾子が立ち上がった。逃げようとしていた。しかし、綾子の前には銃を構えた男が立っていた。
「!」
 靖人は息を呑んだ。綾子の前で銃を構えていた男は、靖人たち佼成吹奏楽団の常任指揮者だった。
 しばらく沈黙が続く。
 綾子が最初に口を開く。遠くからで、なんと言っているのか靖人には聞こえなかった。靖人は、壁の影に隠れてしばらく見ていた。
 すると、綾子は男とは逆の方向へ逃げ出した。靖人は二人の見えない所で綾子を追う。
 先回りをしていた靖人は、また壁の影に隠れた。

 一発の銃声。綾子の呻き声。
 靖人は壁に隠れながら見たのは、左足を撃たれ、地面に倒れこむ綾子だった。
 綾子に近づこうとしたが、できなかった。すでに男が、倒れた綾子の近くに来ていた。
 男が何かを喋る。しかし、靖人には聞こえてこなかった。靖人は、自分の心臓の、普段より激しい鼓動しか聞こえなかった。耳鳴りがする。
 僕の・・・悪い予感が当たったのか・・・・・・!
 靖人は頭を抱え込む。
 その時、何かが空気を裂く音が聞こえた。・・・ナイフだった。綾子は、持っているナイフを男に投げつけたのだ。綾子は再び逃げ出した。
 靖人の近くを、綾子が通り過ぎようとした、その時。
 
 一発の銃弾が、綾子の胸を貫いた。

「・・・!」
 男は綾子に背を向け、歩いていく。
 血まみれになった綾子は、地面に倒れて動かない。
「綾子!」
 靖人は叫んでいた。綾子の近くに行き、体を抱きかかえる。まだ、温かかった。いたるところからの出血がひどい。口からも、血を流していた。
「おい!しっかりしろ!!」
 靖人は血まみれになった綾子を揺さ振る。綾子は目を開けない。靖人の服や手に、血が付く。靖人も血まみれになった。出血は止まらない。綾子の体は、少しずつ冷たくなっていく。
「綾子・・・!」
 涙声になっていた。涙が頬を伝って綾子の体に落ちていく。綾子の血と、靖人の涙が混じっていった。
「お願いだ・・・目を開けてくれ・・・!」


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