#001 2014年度金賞「桜ライン311」

私がグッドデザイン賞事務局をやっていた時代に見た受賞対象の中でも、最も「これはすごい!」と思ったのが、この桜ライン311です。

そもそも桜ライン311って?

東日本大震災において発生した津波によって甚大な被害を被った陸前高田市、多くの方がお亡くなりになりました。いつの日かもう一度、同じ災害が発生した時に被害をどうにかして少なくできないか?ということを考え、始まった非営利活動です。やろうとしていること自体はとてもシンプルです。

津波が到達したラインに桜を植樹して、桜のラインを作ろう

というものです。とはいえ全長170km、桜の本数にして17,000本なので道のりは長くもあります(2019年4月段階で1,577本を植樹)。
桜の植樹状況については、こちらから確認することができます。

石柱や石碑の反省を踏まえ

これは報道においてもいくつか見かけましたが、津波被害を軽減すべく「到達点を後世に伝えよう」とする取り組みはこれまでにも存在しました。それが石柱や石碑です。ところが、時が経てばその存在は風化してしまうものです。東日本大震災の時も、石柱や石碑の存在を知らずして被害にあわれた方も多かったみたいです。その反省を踏まえ、考えられたのが桜ライン311です。

桜ライン311は何がすごいのか?

桜ライン311のすごさは、その現象的合理性です。津波到達点に沿って桜が植えられるということは、桜のラインはぐねぐね曲がったラインを描きます。そして、桜がたくさん植えられるということは、お花見シーズンには多くの方が桜を見にくることでしょう。そうすると、きっとこんな会話が生まれるはずです。

A「桜がたくさん咲いていてキレイだね。ところで、なんでこんなぐねぐね曲がったラインで桜が植えてあるの?」
B「それは、東日本大震災っていうのがあった時に津波が到達したラインに沿って植えてあるからなんだよ」
A「へぇ〜、こんなところまで到達するんだ〜」
B「そ、だからもし、津波が来るぞ!ってなった時は、桜のラインより向こう側に向かって逃げればいいんだよ」
A「なるほど〜」

どうでしょう?花見ができて、その中に津波に関する学習が「自然と」盛り込まれ、さらには「どちらに逃げればよいか?」が分かる。一石二鳥どころか一石三鳥です。「そこに起こる現象」を先読みしたデザインといえます。

個人的には色んなお手本になるデザインだと思いますし、桜ライン311のデザインが世の中から忘れ去られないよう、いろんな人に伝えていけたらいいなと思う次第なのです。

(ヘッダー画像はグッドデザイン賞受賞対象のページより引用)

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蘆澤 雄亮

元・グッドデザイン賞の事務局員、現・大学教員です。

グッドデザイン賞を受賞した「よきものたち」

グッドデザイン賞を受賞したものたちの中には「これはみんなにも知っておいて欲しい」というものもたくさんあります。そんな「これは知っておいて欲しい」というものについて解説してみたいと思います。
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