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広島第一劇場にお別れを告げる踊り子さんたちのご挨拶

おつかれさまですhonda.です

おつかれさまです、hondaです。わたくしが広島に戻って以来、地元のストリップ劇場としてたくさん遊ばせてもらっていた広島第一劇場が閉館(2021.5.20)して1年が過ぎました。跡地にはホテルが開業し、壁面には「大劇場跡地」として往時の姿を記したプレートが設置されています。ありがたいことです。
この機会に、第一劇場や踊り子さんやこれまでの劇場生活に関するあれこれを書いて残しておこうと思います。

第1回は広島第一劇場の閉館告知にまつわるお話です。

たしか2021年の4月2日くらいですかね。劇場から翌月の5月20日をもって閉館との告知がありました。2017年4月の営業再開から4年と5週、何度も営業延長を繰り返して、サッカーで言えば長い長いアディショナルタイムを走り続けてきましたが、とうとうこの時が来てしまったか…という気持ちでした。

その週から、楽日の4回目トリのオープンショーのあと、通常ならすべてのプログラムが終わってお客さんがもう帰るだけのところで、踊り子さんたちがステージに出てきて、記念撮影などするようになりました。社長も引っ張り出されて一緒に写真に収まり、そのうち踊り子さんが残っているお客さんたちにお別れのご挨拶をされるようになったりして、だんだんと恒例化していきました。正式なイベントではないので告知などはありませんでしたが、お客さん同士でそのことを教えたり教えられたりして、最後までたくさんのお客さんが場内に残るようになりました。

そのうち手許に覚え書きがある4結(4月21〜30日)と5頭(5月1〜10日)の出演者の皆さんのご挨拶を紹介したいと思います。その場でとったメモとわたくしの衰えた記憶力をたよりに、外に出てからスマホにだだだーーっと入力しておいたものなので、抜けや間違いもあるかと思います。あらかじめお断りとお詫びを申し上げておきます。
あと、挨拶じゃないものもあるんですが、その時の正直な感想なので掲載します。すいません。

2021年4月結楽日(4月30日)のご挨拶

●香山蘭(かやま・らん)嬢
今、踊り子10年目で、1年目から乗らせてもらってるんですが、お客さんが少ない頃から広島の方にはずっと応援してもらってて、とても感謝してます。…………さっきいっぱい泣いたから涙もう出ないよー(笑)

4公演目のポラタイムのこと。たくさんのお客さんと涙のお別れがあった。

●橋下まこ(はしもと・まこ)嬢
最初に来たときは隣の看板が出たときで、これが最後かと思ったけど、それから5回も乗ることができました。プライベートでも遊びに来たいくらい広島が好きになりました。でもわたしは阪神ファンなので、その時は皆さんとは敵味方かもしれませんね。

2020年3月頭初乗り。ちょうど劇場隣の駐車場に劇場・駐車場を含む土地にホテルが建てられるという建築看板が出た。

●大見はるか(おおみ・はるか)嬢
3年で13回というハイペースでした。ここでたくさんのお客さんに出会えました。わたしが使ってる“◯◯◯◯me”というオープン曲なんですけど、わたしは対人恐怖症気味で、お客さんを全然あおれなくて、もうこの曲が苦手になってしまって、一度やめたんですが、広島では最初からみんながノってくれて、ジャンプしてくれて、この曲を好きになることができました。好きになることができました。好き…
うあああぁぁぁぁぁーーーー(以下号泣)

●星崎琴音(ほしざき・ことね)嬢
最初に乗ったのはコロナ前でお客さんがすごくいっぱい入ってて正直ヤバイところなんじゃないかと(笑)そのあとコロナでお客さんが少ないときもみんなが楽しくしてくれて、ちっとも寂しくなかったです。乗るのが楽しみな劇場でした。残りの期間も身体に気をつけて劇場を楽しんでください。

2019年12月結初乗り

2021年5月頭楽日(5月10日)のご挨拶

●浅葱アゲハ(あさぎ・あげは)嬢
広島第一劇場は、特別な劇場に感じました。
色んな人の気持ちがより大きく膨れ上がる場所の様に感じました。そういう劇場は広島だけではないのですが、広島はそういう機会が多くある劇場だった風に感じます。
初乗りの時から広島のお客様や社長、従業員さん達にも大変よくしていただきました。公演中に牡蠣に当たってしまったりだとか、乗りたかった週(広島)の前に身体を壊してしまって乗れなかったりだとか、大変な事もなんだか多い一方、鮎原さんのラストだったり、大好きなお姐さん達と一緒に練習したりとかけがえの無い時間を多く過ごせたのも広島でした。劇場が無いと来れない場所でもあったと思います。広島と出会えて幸せでした。広島でみなさんと過ごせた時間を大切に思っています。

鮎原かおり嬢  なお、浅葱さんからは改めてご寄稿いただきました。

●ALLIY(アリー)嬢
アリーさんの4回目はステイホームの演目だった。仕事が終わって部屋に帰って、ジャージ履いてTシャツに着替えて、つけま取って、カバンの中から大好きな緑のスクリューボトルのレモンとライムのチューハイを見つけてぎゅーってして、キイロイトリをしばきながらダラダラしてたかと思うと、急に泣きそうになって、それを誤魔化すように何回もぐびぐびやって、あの長い足と筋肉質な背中と丸いヒップを見せつけながらかっこよくポーズをバンバン決めて、泣き笑いでややブサイクになりながらも花道に戻ったアリーさんは最高にきれいで最高に素敵だった。
……なので終演後のご挨拶ではもう泣いてなかったし、ワイもお話の中身をまったく覚えてない。

●小春(こはる)嬢
初めて乗せてもらってから3年くらい。それまでは演し物をつくるのもダンスもあまり分かってなくて、得意じゃなくて、ベットもあまり好きじゃなかった。ストリップってどういうものなの?なにが面白いの?って。
ここでいろいろな所属のお姐さんと会って、自覚が出てきたと言うか、ストリップって自由なんだ!
だから広島が大好きです。
これからもあそこに書いてあるようにストリップをよろしく…あれ? 感動的なことが書いてあったのに…(笑)変わってる!(爆笑)
そんな感じで

舞台下手袖の次週予告ポスターのこと。閉館を控えて、これからもストリップをよろしく等のフレーズが書かれていたが、終演時刻を過ぎた頃に貼り替えられていた。

●高崎美佳(たかさき・みか)嬢
高崎美佳です。
今週は広島の歌姫だけど、いつもはロック座の歌姫で、いつも広島に乗るたびに社長に次は着物で演歌を歌ってくれって言われて、毎回、はーい練習しておきますって(笑) もうなくなっちゃうから約束守れないな…
初めて出演したときは劇場存続の署名活動のときで、(その後)なんとか延長が決まった感じだったから、その1回だけになるのかなと思ってたんだけど、結局いちばんたくさん乗せてもらった劇場になって、今ではいちばん好きな劇場です。これから他の劇場にたくさん乗ってしまうかもしれないけど、ここがいちばん好きです。
…いつか踊り子を辞めるときに今週のことを思い出すんじゃないかな。ありがとうございました。

●水元ゆうな(みずもと・ゆうな)嬢
初めてが2年くらい前で、もう9回になりました。この劇場はわたしの考え方を変えてくれた劇場で、みんなで楽しむとか、みんなで作り上げるとか、みんなで協力することを教えてくれました。
………もう何回もやめようと思うんだけど、広島に乗るとまた続けようと思う。いつも乗るたびにお客さんたちがお帰りって言ってくれて、それがすごく嬉しくて、それまでもうやめるーーってなってても広島来て楽日にはスッキリ!みたいな(笑)
だから、そういう感謝の気持ちをこめてメッセージを書いてもらいました。建物はなくなっても皆さんの言葉の中に第一劇場が残るんじゃないかなと思います。
公演はあと10日あまりあります。明日からの踊り子さんたちもこの劇場について想う気持ちがあるはず。最後まで盛り上がってください。

この週、水元さんは広島にお別れを告げる演目をやっていて、衣装の白い特攻服にポラタイム毎にお客さんからメッセージを集めていた。特攻服は楽日に社長に寄贈された。

ご挨拶に思うこと

こんな感じです。読み返してみると、閉館発表の直後で盛り上がってしまった部分があるにしても、踊り子さん方の劇場愛に驚かされます。同時に、大きなストレスに晒されながら踊っていることにも気づかされます。

ストリップは演者との距離が物理的にも心理的にも近くて、それが大きな魅力ですが、踊り子さんの側もお客さんのあれこれから影響を受けていて、それは客が想像する以上に大きいものです。

だから、各種の課金やファン活動や応援行為とは別に、誰でも出来て、誰もがやったほうがいい大切なことがあると思います。平たく言えば、楽しく観劇すること、一緒に楽しむことですかね。…仏頂面して値踏みするような目で見るんじゃなく、こっちは客なんだからとお説教をするのではなく、説教厨にならないように…(入場料金にストレス発散の精神的サンドバック役代は含まれてない)
まぁ、そういったことですかね。踊り子さんは決して独りで踊ってるわけじゃないですから。

第一劇場がことさら理想の劇場だった、理想のお客さんぞろいだったと言うつもりはありませんが、前掲のようなご挨拶が聞けたのは、踊り子さんにとっても、お客さんにとっても、劇場にとっても意味があったんじゃないでしょうか。

多分、そういう関係はどこの劇場にもあって、そのつもりさえあれば大きくもできるし、新しく築くこともできるのだと思います。踊り子さんに寄り添い、その背中を押すことで、踊り子さんがより良いステージをして、お客さん自身もステージからより多くのものを得る。そういった幸せなサイクルを増やしていけるといいですよね。

おわりに

踊り子さんのご挨拶の公開にあたっては可能な範囲で許可をいただきました。その過程で、連絡の仲介の労をとっていただいたり、思いがけず原稿を頂戴することもありました。いずれも大変助かりました。篤くお礼申し上げます。また、一部、ご連絡を控えさせていただいた方については、この場を借りて深くお詫び申し上げます。

劇場跡地ホテルの壁面に設置されたプレートの一部。全体は現地でご覧ください。

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