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主観的なライター

好きなサイトがライターを募集していたので、
筆力に不安はあるものの、その方面に明るいから…と、

勢いで応募してみた。

何が幸いしたのか、応募多数だった選考を通過し、テストライティングとして記事を任される。

…もう、死ぬかと思った。

当たり前の話だけれども、文章にはいろいろある。

私が先日まで会社でやっていたことは、お詫び文章の作成やハードクレームの交渉の文章作成、並びにそのスキルを伝授する研修。

基本的な日本語力はあるつもりだったけれど、それだけではどうにもならない。

企業の誠意が表され、社会的にも問題ないように書くクローズドな文章(クレーム対応)から、
多くの人に呼びかけながら感じがよく、かつ引きのある、そして、何らかの意図がセンスよく表現されている文章(取材記事)って、応用できるところがほぼ無い。

書く時点で、ほぼ無いことには気がついていなかったのだけれども、
新しい世界への挑戦なので、念のため本を購入してみた。

この本はほんと、素晴らしい。
基礎的なトレーニングの型としてすぐに使えるし、実践的なアドバイスや提案もふんだん。
もっと早くに出会いたかった本。

読後、意気揚々と書きたいことを洗い出し、構成を決め、書き始める。

なんとなく、記事としてまとまった”それ”は、情報がある程度詰まっただけの面白みの無い文章たち。単なる情報の羅列…。

クレーム対応の”悪い癖”が出てしまっている感じ。
クレームでは、感情の昂りに配慮しながら、事実を冷静に伝えて納得してもらう必要があるため、極力削ぎ落として簡潔な文章にする。
そんなのが記事では裏目に出ている。

その上、自分が良いと感じた目線、主観的な主張が強くて、分かりづらい。

ああ、ダメだ…と筆力の無さを嘆くも、落ち込んでもいられないので、
パートナーの目線も借りて、なんとか書き直し、恐る恐る提出。

その道のプロ、編集長から矢のような校正依頼が届く。
ご指摘は、お金を払いたいくらいの有り難い内容で、胸が熱くなる。

もう、この機会をいただけただけで、本望です、という気持ち。

そうこうして、無事に記事はUPされ、取材先にも感謝され、
いやいやほんとに感謝したいのはこちらの方ですよ、と取材先や編集長に勝手に恩を感じた。

そんな体験から、最近街に溢れる文章がやたらと気になる。

普通に無印良品ってすごいな、と何回も小さく感動したり。

キャッチの上手さ(「ワイン、おかわり下さい。」)に、思わず買ってしまった高級ポテチは、パートナーと日本酒で楽しんだ。

そして、読み物として置いてあったフリーペーパーには、心底驚いた。

農家さんへの取材記事だったのだけれど、まるで直接会って話を聞いたかのように、熱い思いがグイグイ伝わってくる。

薄いペラペラの紙だけど、何回も読み返したくなり、農家さんや書き手たちと対話しているような臨場感がある。

写真がいいとか、デザインとか構成がいいとか、というかそれらの全てがいいんだろうけど、とにかくすごいな、と思った。

そして、気になるその文章は、
誰が書いているんだろう、と、探してみると、

ただ、”取材班”とだけ記載があった。

こんなすごい仕事をしておいて、表には出ない。

いや、もう偉人だわ。

そんな職人技に出会って、なんだか楽になった。

私の書けるもの、書きたいものは、主観的になってしまったりもするんだけれど、

素晴らしい文章力訓練の本と共に、これからちょっとずつ磨いていけばいいんだわ。

いつも応援ありがとうございます♡