夢を変えるな、世界を変えろ。

いよいよ今日から4年に1度のサッカーの祭典。FIFA女子ワールドカップ2019がフランスで開幕する。2大会ぶりの優勝奪還を目指すなでしこジャパンをはじめアメリカやドイツなどの女子サッカーの強豪国が世界一をかけた丸一か月間の熱い戦いを繰り広げる。

そして、この女子ワールドカップ開幕に先立ってアメリカのスポーツメーカー、ナイキ社が作成したコマーシャルが話題になっている。まずはご覧いただこう。

このコマーシャルはワールドカップのある試合のエスコートキッズの女の子を主人公として展開していく。スター選手たちの熱いひとつひとつのプレーに世界中が興奮に包まれ、そして男子サッカーにもひけを取らない人気を勝ち得る未来がナイキからのメッセージとしてこのコマーシャルに込められている。

そして、海外サッカーに詳しい方ならお気づきだろうか。このコマーシャルの途中に女性監督が試合中のFCバルセロナ所属のミッドフィルダー、フェリペ・コウチーニョに指示を出し、見事得点を演出するというシーンがあることに。

つまり、ナイキがこのコマーシャルに込めているメッセージは女子サッカーの人気拡大だけでなく、女性の男子フットボール界への進出という未来の提言でもあるのだ。

非常識、無意味。そう感じる人もひょっとしたら中にはいるだろう。「男と男の戦いの場に女は場違いで、居るべきではない。」という考えの人はまだまだ多い。「女性では屈強な男たちから指揮官としての信頼を得ることは出来ない」と考える人も多いだろう。

事実、現在なでしこリーグの1部と2部に在籍する20チームのうち、女性監督が率いているチームは4分の1の5チームしかない。女子サッカーの現場でも圧倒的に男性が監督という立場であることが多いのである。では、その逆で男性のトップチームを率いている女性監督は実際にいるのだろうか。

その答えは「イエス」だ。

その女性の名前はミラグロス・マルティネス・ドミンゲス。スペイン人の元女子サッカー選手だ。

彼女が率いているチーム。それは実は日本にある。J3の一つ下のカテゴリーであるJFL(日本サッカーリーグ)に所属する鈴鹿アンリミテッドFCだ。

「真新しいことに挑戦して注目を集める」というクラブの戦略としての女性監督の起用というきっかけはあったにせよ、少年団サッカーチームではないクラブチームの男子サッカーのトップチームの監督を女性が務めるというのは画期的なことである。開幕から9試合を消化した6月2日現在、鈴鹿は16チーム中13位につけている。シビアな勝負の世界には性別は関係ない。性別だけでなく言葉の壁も乗り越えなくてはならないまさに「茨の道」だが、女性監督として未踏の領域をスタッフ、選手たちの力を借りながら突き進むミラグロス監督がサッカーにおける女性監督の可能性や未来を示してくれることを願ってやまない。

勘違いをしないで欲しいのは、女性監督をもっと増やせという主張をしたいわけではない。ただ、類いまれなるサッカー理論や戦術、屈強な男たち相手でもはっきり主張し納得させるだけの人心掌握術など、一流のサッカー監督としてのパーソナリティを備えた人材が「女性だから」という理由だけで男子トップチームの監督の道が無いのはおかしい。そう思うのだ。

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