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自然光を読むためにーー硬い光と柔らかい光

こんにちは、氏家(@yasu42 )です。4月も半ばを過ぎ、陽気もすっかり春めいてきましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

春といえば光のきれいな季節。太陽が照らす菜の花、月に浮かび上がる桜、そんな美しいものに目を楽しませることも多いと思います。

そして、光といえば写真には切っても切り離せないーーどころか不可欠のもの。その場にある光をどのように「読み」、どのように表現するかが写真の出来映えを決めるというのは、皆様実感しているのではないでしょうか。

一口に光と言っても色々あります。LEDライト、ストロボ光、電球光、枚挙に暇ががありません。しかし、光の代表といえばなんといっても自然光でしょう。写真撮影は自然光に始まり自然光に終わるといっても過言ではありません。

というわけで、「自然光を読むために」と題して自然光の挙動・性質とその読み方について不定期に語ってみようかと思います。

本日のテーマは「硬い光と柔らかい光」について。どうぞよろしくお付き合い下さい。

■硬い光と柔らかい光ーー解説編

「ここの光はちょっと硬い」
「光が柔らかくて綺麗だ」

そんなフレーズを聞いたことはないでしょうか。写真撮影、ことに人物撮影においてはしばしば使われる表現ですね。

しかし「硬い」「柔らかい」が何を意味しているかは意外なほど曖昧です。なんとなく理解してはいても、「『硬い』ってどういう意味?」と聞かれて即答するのはなかなか難しいでしょう。
本noteでは、出来るだけざっくりと、「硬い」「柔らかい」光について説明させていただきます。

早速ですが、次の図をご覧ください。

左は太陽、右は電球です。どちらもそれ自体が光源ーー光を発するものなのは言うまでもないことでしょう。
太陽が発するのは自然の光。
電球が発するのは人工の光。
その違いはあれど、いずれも「全方位に向けて光を発する物体」であることに変わりはありません。いわば、太陽というものは超巨大な電球だとご理解ください。(正確には逆なのですがそこはご承知おきください)。

さてここで、電球を光源として人物撮影をしてみましょう。撮影する相手をここではAさんとします。

あなたは部屋でAさんを綺麗に撮りたい。しかし部屋はどうにも暗く、このままではAさんを写すことすら難しい。頼りになるのは手元の電球だけ。では、むきだしの電球をAさんに近付けて撮影したらどうなるか?

はい、おわかりですね。いやな影が強く出て、みっともない絵になってしまいます。
なぜかといえば答えは簡単、光の当たるところと当たらないところがはっきりしているからです。

例えばそう、顔の右半分はぎらぎらと明るく、左半分はいやな影で真っ暗。そんなことになったら目も当てられません。ついでに言えば、Aさんは眩しくて仕方がないでしょう。

・光の当たる範囲が狭い
・そのせいでいやな影が出てしまう
・まぶしい

電球を直接近付けると、こうなるわけです。

では、なぜこうなるのか?
これまた答えは簡単で、光は原則として直進するからです。光は空間を真っ直ぐ進み、そのまま狭い範囲に当たります。だから妙な影が出るし、まぶしいし、光の当たる所と当たらない所がはっきりとしてしまうのですね。

そして、このような光こそ「硬い」光なのです。硬い光=悪、というわけではありませんが、扱いづらいのはおわかりいただけるでしょう。

では、「柔らかい」光とはどのようなものか?
論より証拠、ここで実例を見てみましょう。

モデルはリボルテックダンボーにお願いします。

・直接光を当てた場合
・磨りガラスを通して光を当てた場合

この二つを比較するとします。
まずは前者からご覧ください。

これは磨りガラスを通していない直射光を当てた場合です
ダンボーの顔の右側にご注目ください。光の当たる範囲が狭く、影が強く出ているのがわかると思います。肉眼では綺麗でも、写真を撮るとなるとこうなってしまうのですね。
写真を撮る方ならば、「見た感じは綺麗でも撮ってみたら全然駄目」というパターンは何度も経験しているのではないでしょうか。あれです。

次に、磨りガラスを通した場合を見てみましょう。場所、時間、光の具合、レンズの絞りは一切変えていません。

明るさは大きく落ちるものの(なのでシャッタースピードは遅くしています)、ダンボー全体を包むこむような光となっています。もちろん右側面は暗いままですが、それでも直射光に比べると影の鋭さが明らかに和らいでいます。
全体的にまろやかになっていることはおわかりいただけるでしょう。
明るい所と暗い所の差がきつすぎることもなく、見やすい印象を受けると思います。

もう一例を見てみるとします。今度は画像を横に並べました。

比べてみてどうでしょうか。
ぱっとみただけでも、右の方がコントラストが低く、影が出ておらず、明暗差が和らいでいるのがわかると思います。

もうおわかりでしょう。
磨りガラスを通した場合の光こそが「柔らかい」光です
同じ時間、同じ場所、同じ自然光だというのに、磨りガラスを通すだけで、「硬い」光が「柔らかい」光となるのです。

ではなぜ、磨りガラスを通すと光が「柔らかく」なるのか?

電球の例を思い出して下さい。むきだしの電球から出た光は直進し、ぶつかった先で鋭い影を作ります。しかし、電球を白い布で覆えばその限りではない。電球から出た光は布の中に入り込み、てんでばらばらの方向に進み、また布から出ていき、広い範囲を照らし出します。

この時の光は直進光から拡散光となっています。
そして、拡散光こそが「柔らかい」光の正体なのです。

電球の例えを続けましょう。拡散光=「柔らかい」光をAさんに近付けてみます。
各方向に広がった光は、Aさんをまんべんなく照らすことでしょう。「硬い」光の時のようにいやな影が出ることもなく、電球からの光はまろやかかつ滑らかにAさんを明るくしてくれます。

つまり拡散光=柔らかい光には

・光の当たる範囲が広い
・いやな影が出にくく綺麗に撮れる
・目に優しい

このような特徴が有ります。

自然光の場合も事情は同じ。
さんさんと降り注ぐ太陽光はそのままでは直射光=「硬い」光です。
雲や、霧や、水や、窓というものが太陽光を拡散することで、「硬い」光は「柔らかい」光になるのです。

曇り空がわかりやすいですね。太陽からの光は雲を通過することで拡散に拡散を重ねます。結果、降ってくるのは明暗差がはっきりしない柔らかい光。だからこそ、曇りの日にはコントラストの弱い、優しい絵が撮りやすいわけですね。

まとめます。

・直射光が「硬い光」、拡散光が「柔らかい光」
・光の当たる範囲は「硬い光だと狭く」「柔らかい光だと広い」
・光を当てた時の影は「硬い光だと鋭く」「柔らかい光だとなめらか」
・コントラストは「硬い光だと強く」「柔らかい光だと弱い」

このように理解しておけば、おおむね間違いはありません。

硬い光。
対極たる柔らかい光。
その性質は正反対です。どちらの光が望ましいかは、撮る写真によって違ってきます。一般的には「柔らかい」光の方が何かと扱いやすいでしょうが、それも時と場合によりましょう。例えば、鋭く、スタイリッシュな絵が欲しければ「硬い」光の方が似合いますね。

しかし、まずは、目の前の光が「硬い」のか「柔らかい」のか。それを意識して読みとるようにしましょう。全てはそこから、と言ってもいい。そのうえではじめて、光を「読み」、より上手くコントロールすることが出来るようになるのです。

本日はこのあたりで。
それでは、また。

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