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知られざるレンズを訪ねて(4)——「夢の残滓、1954年の高速望遠レンズ」Leitz Hektor 125mm/f2.5


Sony α7RV × Leitz Hektor 125mm/f2.5


こんにちは、氏家(@yasu42 )です。
不定期連載のオールドレンズ作例企画「知られざるレンズを訪ねて」も第四回を迎えました。
前回までのアーカイブはこちらからどうぞ。

今回取り上げるのは、みんな大好きハイスピード望遠レンズ。
Leitz Hektor 125mm/f2.5(for Visoflex)です。

「知られざる」というのには知名度があり、さりとてメジャーとは到底言えない一本ですね。
事実、ネットでの作例は決して多くない。
マップカメラの2013年の記事くらいでしょうか。

細かいスペックは後で書きますが、焦点距離125mm、開放f2.5と、いわゆる高速望遠レンズに分類されます。
この焦点距離、今だと135mm/f1.8〜2.8が主流ですが先駆けと言っていいでしょう。

Hektorの名を冠するだけあり、その描写はかなり独特。
さっそく見ていきましょう。
なお、以下はすべてボディはα7RV、開放で撮影。
マウントアダプターはレイクォール製となります。

空の色の浅さがオールドレンズを感じます。
望遠ということを差し引いても、妙に平面的に思えますね。

光と影の描き分けが魅力的です。
Hektorはどの焦点距離でも影が美しいですが、例に漏れません。

ボケは盛大に暴れます。
125mm/f2.5という、時代を考えるとかなり無理をしたスペックの影響もあるでしょう。
特に丸ボケはぐずぐずになりやすく、好みの分かれるところかもしれません。

一転、屋内での描写は素晴らしい!
光が強いと普通に「負ける」ことがあるので、曇りや雨、屋内でも真価を発揮するレンズでしょう。

解像性能は決して悪くない。
特にピントが合った部分は6100万画素にも負けていません。
ハイライトにうっすらフレアがのっている点にもご注目ください。

しっとりした雰囲気を狙うには最高ですね。
パープルフリンジが盛大に出るので、そこはご注意を。

【機材スペック】

スペックは以下の通り

生産年:1954年〜1965年
製造本数:4,400本(3,308本とも)
マウント:Visoflex
口径比:1:2.5
最小絞り:f/22
最短撮影距離:1.2m
絞り羽根:20枚
フィルター径:記載なし。ただし58mmフィルターが適合(薄型推奨)

注目すべきは1950年代で125mm/f2.5というスペックでしょう。

1950年代、となればコーティング技術も光学技術も発展途上です。
3群4枚の比較的シンプルな構成とはいえ、かなり無理をしている設計なのは間違いありません。

作例でおわかりとは思いますが、描写も癖が強い。

・輪郭はフレアでふわっとなる
・にじむ
・収差も盛大に残っている

そんなレンズです。

望遠レンズならニコンのPlena135mmが話題ですが、まさに正反対。
なにせ丸ボケがこれですからね。

ぐずぐずという他にない。
ポートレートで玉ボケをいれた場合、被写体よりもボケに目がいってしまう。
そんなレンズです。

反面、環境が許せば先鋭な絵を結ぶことも珍しくありません。

「単に写らない」レンズではないわけです。
むしろ、現行レンズにはない柔らかさが顕著にでて、望ましい絵となることも多くありました。

ビゾフレックス用であり、Mマウントで使うにせよマウントアダプターで使うにせよ工夫が必要な本レンズ。

使いこなす難易度は高めですが、替えのきかないハイスピード望遠レンズなのは間違いありません。

ライカレンズにしては比較的見つけやすいので、一度試してみてはいかがでしょうか。

では、本日はこのあたりで。

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